第二話 チェックイン
その夜、一足早くパーティホームに戻ってきた俺はさっさと用事を済ませる。
「さて、この辺でいいかな?」
俺は溜め込んできた素材をまとめて出す。
俺のソロ活動の時の素材も置いていってあげることにした。
結果的に庭が原型をとどめていないけど…。
レッドドラゴンの鱗やヒュドラの大牙なんかは俺のソロ活動のやつだね。
これでいい装備でも揃えてくれるといいんだけど。
そして俺は自分の部屋の荷物をまとめる。
まとめると言っても亜空間魔法にしまうだけなので時間は掛からない。
家具や小物は自分で買った物なので全て持っていく。
俺の亜空間魔法の許容量は公表してないが普通の荷物持ちの二十倍は軽くあるので全然余裕で入りきる。
これを機に王立の中等学院にでも入ろうかな。
そんなことを考えながら、荷造りを終え宿屋街へ向かう。
宿屋街はパーティホームからそこまで遠くはないが結構傾斜が多いのであまり往復する気にはならない。
まぁ、もう戻ることはないんだけれど。
そんなこんなで安宿に着く。
「こんばんはー。 一人なんですけど空いてますかー?」
「いらっしゃいませ! 空いてますよ! 個室と大部屋どっちがいいですか?」
俺と年齢がさほど変わらない可愛らしい女の子が元気に受付をしてくれる。
「じゃあ個室にします。 料金は先払いですか?」
「後払いで大丈夫ですよ! 踏み倒したら承知しませんけど!」
可愛いのにしっかりした子だ、良いことだ。
「わかりました。 肝に銘じておきます」
チェックインを済ませ俺は部屋に向かう。 すると冒険者らしき二人組が話している内容が耳に入ってくる。
「今この街で人攫いが増えてるんだってよ。 結構な数の冒険者に召集がかかってるらしい」
物騒な話だ、まぁ自衛は出来るからいいんだけど…。
「まじかよ。 俺達も準備しておかないとな…」
ちょっと先行きが不安になってしまう。 どんな人が狙われているのだろうか。
俺にも召集がかかるかもしれないので、寝る前に一応装備のチェックをしておこう。
そうして装備の点検をしていると愛用していた剣に小さなヒビが入っていることに気が付く。
「あっちゃー、これは買い替えだなぁ…。 あんまりお金に余裕ないのになぁ」
なんて独り言ちる。
明日には武器屋か鍛冶屋に行って新しい武器を購入することを決め今日はゆっくりと休むことにした。
コンコンと部屋がノックされる。
「はい!」
「あ、お風呂の利用はあと一時間程度で終わってしまうので良ければ済ませてきてはいかがでしょうか?」
安宿なのにお風呂が付いているらしい。 良心的だ。
「わかりました! お風呂に入って今日はゆっくり休むことにします」
今日はゆっくりとお風呂に入り休むことにしよう、些細なことなど忘れてしまっていいだろう。
「はい! またなにかありましたら受付に居るのでいつでも仰ってください」
良い子だなぁ。 どこかの魔法使いや聖女とは大違いだ。
「ありがとうございます」
そうして俺は疲れを取るために風呂に行く。
淡いハーブの香りの石鹸を使い身体を洗う。
「ふぃー。さっぱりするなぁ。」
俺は翌日の準備をし、剣を枕元に置き、少し固いベッドに横たわる。