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残念ながら、母の娘はそこの美少女ではなく私です!!!コミカライズ中!  作者: 家具付
外伝3 父の娘は私でした

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4 うしなわれるまえ

乾いた風が髪の毛を遊ばせて、目を開くとそこはまったく見た事のない町だった。

どこかに町の名前でも書かれていないものだろうか、と視線を巡らせると、ここは町の門の前だったようで、町の名前なのか、それとも通称なのか、そう言ったものが書かれていた。

”夕空の町”

それを見た時に、本当に過去に来てしまったのだと、痛感した。私はこの町が滅んだあとしか知らないから、こんな看板を見る事など一生ないはずだったからだ。

いや、町を再興させればあり得たかもしれないけれど、時間はかかったに違いない。

そんな事を思いながら立ち上がると、やけに視線が低く感じて、周囲の通り過ぎていく人たちを見ると、馬鹿みたいに背が高い。

いいや、これは、たぶん。


「縮んだ」


私が縮んだのだろう。なるほど竈の神様の発言は正しくて、何が起きても保証できないってことは間違いのない事だったんだろう。

まさか子供に戻るなんて事があるとは……神様のする事って何が起きてもおかしくないってわけか。

それでも、目的が変わるわけでもないから、私は顔をあげて、一度だけしか行った事のない、旦那の家であり、神の寵児の暮らしている家を目指す事にした。



「お嬢ちゃん、家族はどこだい」


「……」


「こんな小さな子の親兄弟が近くにいないなんておかしいな、本当にどこから来たんだい」


「この町で、こんな真っ赤な髪の毛の子がいたら、目立って目立って、有名になるんだけどな」


おせっかいが大量にいる。私ですらそんな事を思う位に、私に声をかけてくる人達が多い。

その誰もが、家族がどこにいるのか、そして迷子じゃないのか、といった事を聞いてくるのだ。

青の国では考えられないおせっかいな人たちの多さである。

旦那が言っていた通りに、この砂漠では家族とか、一族郎党とかを大事にする考えがあるから、誰かの子供とか、誰かの孫とか、そう言った情報は共有されがちなのかもしれない。

知らないおじさんとかおばさんとかが、実は友達の一族の保護者だった、なんて事もあるのだろうか。ないと言い切れないくらいに、皆して私の事を気にしている。

周囲の似たような年齢の子供を探すと、友達と大賑わいで遊んでいたり、日陰でおしゃべりしながら何かの習い事をしていたりしていて、楽しそうだった。


「この町で浮浪児ってのも珍しい」


「本当に、お嬢ちゃんはどこからきて、どこを目指しているんだい」


「わ、私は……」


何て言ったら一番手っ取り早いだろう。そう思って考えて、答えはすぐに出てきた。


「神様のいとし子っていうの? 水神様に大事にされている人に、お願いがあってきたの」


「……? もしかしてお嬢ちゃんは、いとし子様の働いている神殿に、何かの御参りがあってきたのかい」


やぶれかぶれの答えを聞いた人達が、顔を見合せた後に、何か合点した調子になった。

私の言葉は、ありふれたものの一つだった様子だ。


「ああ、今年もそんな時期が来たんだね」


「納得納得。このあたりの村から、いとし子様に、自分の村まで雨を届け欲しい、とお参りをしに来る子は、雨期の時期になると本当に多いからね」


「そうか、今年は出足が早いのか。渇きの酷い所は、そんなに多くないと聞いているけれども」


「でも、山岳の方で雨が足りないって言っている集落があったはず。あっちの知り合いが、雨が降らなくて野草が育たなくて、放し飼いの山羊のお乳の味が落ちたって言っていたよ」


すごい……こっちが出たところ勝負で言った言葉で、誰もが勝手に納得している。

情報網が密だから、こんな事が起きるのかもしれない。青の国では思いもしないやり取りだった。


「じゃあ、お嬢ちゃんはこっちの大通りをまっすぐ進んで、町の中央の聖なる泉が見えてきたら、南の方の道を目指すんだよ。オアシスから流れてくる水路をたどれば、神殿につくからね」


「途中で、お参りのためのお賽銭でお土産を買っちゃだめだよ」


「お参りが終ってからなら、大丈夫だろうからね」


「きっとしっかりしている子だから、村の人達がお参りに行くようにって選んだのかもしれないな」


「いとし子様は、年下の子供に特にやさしいからね」


とにかく、この事から私のお父さんである人がどうやら、神殿でお仕事をしているって事が分かった。

なら、そこに突撃して、訴えてみるのはやってみる価値があるかもしれない。

やらないよりはずっといい事のはずだ。やらないで後悔するよりも、やって後悔した方がまだ心残りが少なくて済む。

もしもいなかったら……本当に、旦那の実家に突撃するのだ。いい訳は歩きながら考えよう。

親切な人たちに頭を下げた後に、私は言われた通りの道を進んでいった。

歩きながら目に入る町は、とても賑やかで、活気にあふれていて、何よりとても清潔だった。

青の国の庶民の生活圏で、こんなにきれいに掃除された道はほぼ存在しない。

それくらい綺麗にされていて、そんな道を子供とか青年とかが走ったり騒いだり、女の子が笑いあっていたり、小物を売るために声をかけたりしている。

平和な……とても平和で、にぎやかで、たくさんの人が人生を一生懸命に過ごしている町だった。

この町は、お父さんとお母さんの脱走で、滅んだのだ。

そう思うと、息が苦しくなりそうだったけれど、ぐっとこらえて、私は道を進んでいき、一生懸命にあたりを探して、神殿に到着した。

神殿では、お祈りを捧げる人達がたくさんいて、これも青の国の神殿とかと大違いだ。

青の国の神殿はもっと閑散としている。お祈りをしに来る人の数ももっとずっと少ない。

そんな事を考えながら、私は出入り口の門番の人に、いとし子様に会いたいのだ、と伝えた。


「いとし子様に、お話があって、遠い所から来たの」


「ああ、そんな時期になったか。こんな小さな子が来たんだ、いとし子様もお話を聞いてくれるだろう」


「最近のいとし子様は、ふさぎ込んでいて、誰とも会わないのだけれど、きっと君なら話を聞いてくれるに違いない」


……きっとこの時点で、お父さんは自由のない身の上を嘆いているのか、苛立っているのかしているんだろう。お父さんの年齢って幾つなんだろう。


「あの、いとし子様はおいくつなんですか?」


「ああ、今年で十六だよ。そろそろ恋でもするんじゃないかって、神官様達が話していたね」


「神様が一番愛しているのに、いとし子様は恋をしていいの?」


「もちろんだとも! 水神様は愛の神。いとし子様が誰かを愛して、愛されるっていうのはおめでたい事なんだよ。いとし子様が結婚する時は、この町では、王様の結婚式よりお祝いをするんだ」


「結婚もしていいの?」


「ああ! いとし子様は水神様の神殿がある国ならどこにだって遊びに行っていいのだし、恋をするのだって自由だし、結婚は町の誰もがお祝いするんだよ」


「……」


聞いていて信じられない事ばかりだった。お母さん、お父さんは、全然縛られていないし、家畜同然の扱いでもない。

というか、すごく町の人から愛されていて、自由を満喫できる身の上じゃないか。

そんな事を思って、信じられなさ過ぎて固まっている間に、門番の人の一人が、奥に話しに行ってくれた。


「いとし子様は、お昼の御祈りが終ったところだとの事だ。神官様が案内してくれるそうだから、会いに行っておいで。いとし子様は、子供の御参りを大人の御参りよりも優先してくれる人だからね」


「はい、ありがとうございます」


私は頷いて、奥から現れたのだろう神官様に導かれるままに、いとし子様……お父さんのいる場所に、向ったのだった。

神殿は風通しのいい建物だけれども、日陰をちゃんと計算して作られているのか、砂漠の焼けるような日差しの熱さを、感じられない造りだった。

そしてところどころに貴重なのだろう水が流れていて、この場所がひときわ神聖で、特別な場所なのだと暗に示している。砂漠の水とか、大量に使えるのは特別極まりない場所だけだ。

旦那の暮らしていた城の、東屋のある小さな泉とかがそれにあげられただろう。

そんな事を思い出しながら進むと、一つの部屋の前に神官様が立ち止まる。

そして声をかけた。


「いとし子様、今年もお参りの子供が訪ねてきましたよ」


「……入ってください」


数拍の沈黙の後に、部屋の中から声が聞こえて来て、私は初めてお父さんの声というものを聞いた。

思っていたよりも、ずっと、子供っぽい声だった。まあ十六だから、声が安定していないだけかもしれないが。

いったいどんな人なのだろう。顔も見た事のない人を、緊張しながら扉を開けて見つけようとして……私は血のつながりっていうものを実感した。



「おや、ずいぶんと僕にそっくりなお嬢さんだ」


扉の向こうで、お祈りが終わったらしく立ち上がってこちらを見たその人は、






男にした私と言っても過言ではないくらいに、十六の私とそっくりな男性だった。

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