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残念ながら、母の娘はそこの美少女ではなく私です!!!コミカライズ中!  作者: 家具付
外伝2 新婚珍道中!!

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19 あまりにも強すぎるひと

受付の時間が終わったら、リーゼさん達の仕事は終わりだそうで、驚いた事にいきなり手伝いに回った私にも、それなりの報酬がその場で支払われたのだ。


「いいんですか?」


「いいに決まっているでしょう。あなたあんなに動き回っていたんだから」


「私達を全員集めても、あなたより男の人を言い負かしてないわよ」


「人相の怖い人にも、あなた躊躇なく必要事項を書かせる事が出来ていたから、本当に驚いちゃったわよ。あなたまだ乙女って称しても問題のない歳でしょ? まあ、結婚して旦那さんがいる人を、乙女とはいわないけれどね」


「うーん、私実は、学校を卒業する前から、ギルドで受付をしていたんです」


「まあ! あなたお金に苦労した人生だったのね」


一緒に働いていた人達が、驚いた顔で私を見ている。確かに、平民の学校を卒業する前から、どこかで働く子供はそんなに多くないのだ。

いるのは、学校のお金にも苦労するほど、貧乏な子供だったり、あまり深く聞いちゃいけない事情を持っている子供だったりする。

そういう事だから、皆私がお金に苦労した生活だったのだと、思った様子だ。


「私も知らなかったわ、あなたはてっきり、卒業してからどこかの職業斡旋所で、ギルドの受付を紹介された子なんだとばっかり」


一緒に仕事をしていたリーゼさんも驚いている。まあ、彼女もそんなに長い間受付嬢として働いていないから、私のギルドでの勤務年数なんて、知らなかっただろう。

誰かにはっきりと話す事って、あまりしないでこれまでの人生やってきていたし。


「私……子供の頃にたった一人の家族である、お母さんが行方不明になっちゃって。それから、大家さんの居候として生きてきてたんです」


「そうだったの……あなたいつでも元気だったから、そんな苦労していたなんて思わなかったわ」


「リーゼさんとは、働いている時間があんまり、被らなかったじゃないですか。リーゼさんは、夕方から夜の時間帯に入っている事が多くて、私は朝一番から夕方で」


「そうね……思い起こしてみればそうだわ」


ちなみに、ギルドで夕方から夜に働く人は、働いた後にギルドの二階にある仮眠室で朝まで休んで、夜という危険度の高い時間が終わってから、帰宅する人がほとんどだ。

ギルドの方も、普通の時は危険度が跳ね上がる夜に、あえてギルドの受付というきつい仕事をする人を、帰したりはしない。もっと人通りが多くて、人目も多くて、何かあったらギルドの関係者にも連絡が入りやすかったり、守りやすかったりする朝に、帰す方針なのだ。

それはどこのギルドでも言える事だって、私は黄金の牡牛亭のギルドマスターから聞かされている。

中には仮眠室が自宅よ、と豪語する人もいるくらいに、仮眠室で休む受付の人はありふれたものなのだ。

皆で交代に洗濯とかをしているっていうしね。


「さて、私達もはやく試合会場に入りましょ」


「今から入って、いい場所ってあるんですか?」


「そんなの、受付をやってくれたありがたい人専用の場所があるに決まってんだろうが。この街でこの武術大会が始まった頃からそう明記されている」


私達がそんな事をいいながら、観客席の方に行こうとした時に、後ろから声がかかって、振り返るとおじいさんがにやりと笑って、そういった。


「この神聖な大会のために、一生懸命に働いてくれた人が、試合を見られないなんてそんな、バカな話があるわけがないだろう。だが、時間を急がないと、試合は始まってしまうな」


「やだー! 急ぎましょ!」


そう言い合いながら、私達はおじいさんに教えてもらって、受付をした人達が入れる、特等席にむかったのだった。





武術大会では、使用される武器その他に規定があって、皆真剣は使わない。鉄の武器さえ認められていなくて、神聖な儀式だった頃からそうであるみたいだった。

まあ、……真剣だったら、一瞬で死ぬ人出てきそうだもの。死傷者を減らす為に、そういった配慮がされただろう。

そして、相手を殺したら即失格。致命傷も失格。頭部を狙っても失格。失格の規定がたくさんあるのは、受付の時に参加者に説明したから、知っている。

そんな色々な規定があるからこそ、盛り上がりもすごいのかもしれない。

皆武器のすごさに頼らないで、自分の技量で戦うからだ。

武器がすごければ、勝敗がすぐに決する事もありがちだろう。

でも、皆会場で支給されるものを使うのだ。いっそうその人の強さ、みたいなものが見えてきて、興奮するのかもしれなかった。


剣がぶつかり合う。

槍が一閃される。

斧が振り回される。

戦闘杖が、打ち抜こうとする。

打撃武器が、投擲武器が、宙を舞う。

こんなに、たくさんの色んな種類の武器を使う人達が、一堂に会して争う所なんて、人生で一度も見た事がない。

聞いた事のない戦い方をする人がいる。

見た事のない武器を振り抜く人がいる。

思いも寄らない勝利を収める人がいる。

……これは、皆、待ち望むのも納得の、見応えしかない大会だ。

その中でも、特に人目を引く人がいた。

…………何を隠そう、私の旦那である。

いや、私の欲目でもなんでもなくて、旦那、ものすごい強い。

剣をふるう事さえほとんどない状態で、相手をあしらって、この線からでたら負けっていう所まで、追いつめてしまうのだ。

剣を振るっているところを見ないくらいだ。

流れるように体を動かして、相手がいつの間にか、線を飛び出してしまうように戦うのだ。

実力が高くなければ出来ない事で、事実として、一緒に受付の人の専用席で見ている人達が、小さく


「あんな強い人がいるって聞いてた?」


「あれだけの技量なら、どこかで名をあげてそうなのに」


「こんな人、噂にも上った事ないわよ」


と言い合っていて、ちょっと自慢したくなる。私の旦那めちゃくちゃ強いでしょって。

でも、自慢するよりも、旦那の動きを目に焼き付けておきたくて、私は席から前のめりになりながら、試合を見ていたのだった。


こういう、時間を忘れて見入ってしまうものは、本当にあっという間に終わってしまう。気が付けばもう決勝戦で、旦那と、相手だけになってしまった。

この頃には、どちらが優勝するかで、賭事が起きている気配がする。こういった大会と賭博は切っても切れない縁があるって聞いた事がある。


「どっちが勝つと思う?」


「あの大斧使い」


「私は大剣使い」


大斧使いは、旦那と戦う相手である。

旦那は、使い道あるの? と言いたくなる、この試合の中でほとんど使用されていない大剣をもって参加している。

人々の会話に、私も入った。


「私大剣使いが絶対優勝すると思う」


「エーダ自信たっぷりね。その根拠は?」


「私の旦那が、私が見てるのに格好悪いオチになんてしないもの」


「……!! エーダの話にあった、大きくて強面で強い旦那さんって、あの人!?」


「色付きの眼鏡をしているから、いまいち目つきはわからないけど、雰囲気は確かにそんな感じね。でも、砂漠基準だと相当色男よ、彼」


「エーダ、優勝したらすぐに旦那の所に行って、自分の旦那だって示さないと、一目惚れしちゃった人達が大挙して押し寄せるわよ! 砂漠の女性は結構ぐいぐい行くんだからね!」


「そもそもあなたは、彼と結婚するまでに、嫉妬の嵐とかで嫌がらせなかったんですか」


「私はわからないんだけど、どうも旦那の顔が怖すぎて、皆正面から見たら血の気が引くみたいで、敵がいない」


「そ、そんな怖い顔なんだ……」


私が、今までの事からわかっている事を言うと、皆そんなに……という反応だった。

そして、いよいよ決勝戦で、大斧使いと旦那が向き合って……合図とともに、最後の試合が始まった。





「どっちも今まで加減してたのね……」


「というか……エーダの旦那さんがこの大会に出ちゃいけない位の格上だって見せつけられている試合だった……」


「大斧使いも、弱い訳じゃなかったのにね……」


「エーダの旦那さんが大剣振るい始めたら、あっという間に劣勢になるんだもの……いや、すごい……」


「旦那さんが他の人に、剣を使わないわけだわ……ものすごく加減しなくちゃ、大怪我させちゃうって言う配慮が絶対にあったわ」


受付の人達の言葉ももっともで、結果は旦那の優勝だった。最後の試合で、さすがに旦那は大剣を抜いたのだけれど、リーチは大斧の方があったはずなのに、大斧を流れるように受け流し続けて、隙を見て、巨体だった大斧使いを、はるか後方に吹っ飛ばしてしまったのだ。

実力差がありすぎて、一瞬皆、しんとしたくらいに、旦那はけた違いの強さだったのだ。

そんな旦那は、今、表彰されて、この街の名誉市民というメダルを首からかけてもらっている。

隣の大斧使いは、悔しそうだけどいい笑顔で、誰に見せているのか、腕を振り回して観客に自分を示している。

旦那は人前なんてなれているのか、落ち着いた態度で、彼等の態度の違いもすごくわかりやすかった。大斧使いは、目立ちたがりなのかもしれなかった。

もしくは誰か、見栄を張りたい相手がいるのかもしれない。

そして、メダルをもらった旦那が、周囲をぐるりと見回した後に……私がいる方向を見やって、するり、と洗練された優雅な一礼をしたのだ。


「ねえ、今、旦那さんこっち見たわよね」


「絶対エーダに格好付けたかったのよ!」


「優良物件な旦那さんじゃない! 結婚した後も奥さんに格好いいところ見せたいような旦那ってのは、一生奥さんにめろめろなのよ!」


色んな人が言うから、私は他の人達に紛れて、旦那に手を振ったのだった。

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