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残念ながら、母の娘はそこの美少女ではなく私です!!!コミカライズ中!  作者: 家具付
外伝2 新婚珍道中!!

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3 目的地に至るまでの前段階

新婚旅行というべきものに行っていいというのは、意外なくらいあっさりと決まったみたいだった。

でも、おばば様とか、長老様と言った人たちが、真剣な顔で私達に


「長くて一週間。それ以上は公務その他に差しさわりが出るのでおやめください」


と言ってきたため、一週間以内に往復できる距離っていうのが、制限として付いたわけで。


「そうすると、私の行きたい所に行くだけで、普通は四日かかるのよ?! どうやって皆に結婚報告すればいいのよ!」


という、私としては難しすぎる問題が立ち上がってしまった。

そうなのだ、この砂漠の王宮のあるオアシスから、黄金の牡牛亭がある私の故郷まで、普通に行くだけで四日は必要なのだ。

ゆっくりしたらあっという間に、制限を超えてしまう。


「大河を走る高速船を使っても、それでも一日くらいしか短縮できないじゃない……」


騒ぎが起きてなければ、ギルドで結婚報告、できればしたかったのに……国内じゃないと無理かな……と私は早めに諦めようとした。人生の中で諦めってとても大事だって、学んで生きてきたからだ。

しかし。

私が、そんな風に落ち込んでいるのをよそに、旦那はあっさりとこう言い放ったのだ。


「やりようによっては出来るだろう」


「は?」


「俺の転移魔術を使えば距離は短縮できる」


公務の隙間に、旅行のために広げていた地図を眺めて、彼はそう言い切った。


「短縮ってどれくらいできるの? だって、あっという間に黄金の牡牛亭の前まで移動って、出来ないんでしょ?」


一週間という制限が出来た時に、一番に聞いたのだ。


「あっという間に、あなたの転移魔術で黄金の牡牛亭の前に行けないの?」


と。そうしたら彼は


「魔術の制限は色々あるものだ。転移魔術という物は基本的な制限として、移動する目的地の事を思い描けなければ飛べない。俺が最後に黄金の牡牛亭に入ったのは十年以上前だ、ろくに思い描けん」


「便利に見える術の大半は、そう言った制約を抱えているわけだ」


と言ったのだ。だから諦めたのに、彼は距離を短縮する事は出来る、と言いやがったのだ。


「どういう内訳で?」


「この城から高速船の出る大河の町までは、一瞬で移動できる。そこから大河を船で一晩移動し……国境を越えるだろう。その後、お前の故郷だという西の青い国の中でも、黄金の牡牛亭の提携ギルドに入る事が出来たならば、そこから高速竜馬を使えるはずだ」


そうすれば、かなり早く黄金の牡牛亭まで行ける計算になる、と彼は地図を指でなぞりながら言った。


「……確かに」


ここで一番問題になるのは、砂漠の王都から高速船の出る大河の町までの距離が、すごく長いって事だった。

そこを縮められれば、確かに時間をかなり短縮できる。

西の青い国の、ギルド提携の高速竜馬を使えれば、西の青い国の王都まで、半日くらいで済んでしまうのだ。


「でも、高速竜馬って、なかなか貸してもらえないと思うんだけど」


「ここで王族の特権を使わないでどうする。そういう手札は使うためにあるものだ」


「そんな贅沢していいの……?」


「お前が大事な相手に結婚報告がしたいという、ささやかな事を叶えるためなら、大いに使うべきだろう」


俺の側との挨拶はもう終わらせてあるのだ、お前が結婚したという事を言いたい相手に会いたいなど、ありふれた思いだ。

彼は贅沢と言っても、そこまでの贅沢ではないと言い切り、そこから私達は、今回の新婚旅行のあれこれを一気に進める事になった。


「現地での噂を仕入れるついでに、妻の結婚報告に行く」


と言った時のおばば様や長老様の顔は、何とも言えない物だった。


「新婚旅行の先が実家でいいのかねぇ」


「もっと思い出になる場所でもいいのでは?」


と突っ込まれたものの


「妻を祝ってくれるだろう相手に会いに行くわけだ」


「あっちで私がどんな風に言われているか、どうしても気になってしまうので」


と二人で意見を言うと、それなら仕方がないか、という流れで、今回の新婚旅行は決定したのだった。

お付きの者は何人必要って聞かれたけれど、


「俺の転移術は大人数を運べない。計算が狂う」


「旦那様と二人っきりにさせてよ。この時くらいは」


ってやっぱり押し切ったら彼ら彼女らに


「いいですか、あなた方はこの砂漠の、王と王妃なのですからね」


「十分に身の安全を確保してくださいね」


「お二人とも、変な所で頓着しない気がするので……」


と結構言われた。私も旦那も、感覚が王族っていうよりも平民に近い箇所があるせいだろう。

私は十六年の間、そう育ってきたわけだし、旦那の方は王様になる前は、王様にお仕えするのもぎりぎりな血縁関係だったという事だから、そういう生活が結構刷り込まれているって聞いたわけだし。

さて、そんな風にちょっと問題は起きたけれど、私達は無事に砂漠を越えて、高速船にも乗船して、ギルドの高速竜馬に乗って、私の故郷の、西の青い国の王都に、到着したのだった。




「意外な程、お前の事は広まっていない様子だな」


どうにも、顔というか瞳を見るといろんな人が失禁したり気絶する旦那は、ガラスに色が付いた眼鏡をかけて、さらに顔を合わせないための予防策として、深くフードを被っている。

深いフードは砂漠ではありふれた装束だから、こっちに来ても、あっちから来た人なのだ、程度の認識になるみたいだった。

それでもやっぱり、物珍しさはある。いろんな人がこっちを見たりしたからそれは間違いがなかった。

なにせ旦那は、私を片手で持ち上げられるくらいに、屈強な体つきをしているのだ。

背中にしょっている、大剣からも彼が歴戦の武人でもあると、予想は付くだろう……。

そんな彼が、町の噂や、町のいたるところに張られている掲示板などを見て、そんな事を言った。


「私も意外だと思ってる。もっと騒がれててもおかしくないって思ってたから」


掲示板には、町の情報とか、一体どこから仕入れたのかと思う、王宮事情とかが掲示されがちだから、そこにもどこにも、私がいなくなったとかそういう話が出ていないのは意外だった。

もしかしたら、まだこっちでは、調査みたいなものが進んでいないのかも。

それとも、調査結果が問題過ぎて、一般市民には掲示されないとか? あり得る。

だって私が六歳の時に、王宮とかがお母さんを見つけた時だって、そういう掲示は出なかった。

お母さんが王宮から追い出された事情が、婚約者たちの女性問題の果てだったのも大きいだろう。

あの頃、お母さんの事が掲示されて、お母さんの似顔絵が出ていたら、きっとおかみさんたちは気付いてくれたし、ギルドにだって情報を集めるように頼んでくれたはずだから。

それがないって事は、ここに出せない情報として、王宮が取り扱っている可能性が高いか、調査途中で断言できないから、出せないネタって事になっているわけだ。


「こちらから、多方面に色々物を申していないからな」


「砂漠から文句を言ったら、もっと早く分かるものだったと思う?」


「春原の国に情報が回っていれば、あちらも契約の都合があるからすぐに、あの学校に調査を入れるだろう。そうすれば学校側も調べるだろう。さらにそこから青い国に回る。ここまでいろいろな事が遅れたのは、俺や砂漠がお前をエーデルワイス嬢だと判断したが故の結果だな」


「後悔してる?」


「お前よりいい女は知らん」


「……」


確かにそうだった。砂漠の人たちが、嫁に来た少女と、縁談相手が違う、詐欺だとか騒いでいたら、色んな事はもっと早く明るみになっただろう。それがなかったのは、私とエーデルワイスさんの特徴が、同じように、赤毛で茶色の瞳で、愛称というか、呼び名がエーダだったという、一致するものが多すぎた結果なのだ。

いや、偶然にしても一致するもの多いから、偶然ってすごいな、と思う事も有るけれど……呼び名に関していえば、呼び名って色々あるから仕方ないじゃない、と言いたくもなる。

私はぱたぱたと、だしぬけに言われた言葉に熱くなった顔を仰いだ。

この人、唐突に、当たり前の事みたいな言い方で、私の事褒めたり、口説き文句みたいな事を言ってきたりするから、まだ慣れないのだ。

まるで私が、一等一番に特別である、みたいな言い方をするものだから、私って特別なのかもって思っちゃうけど、私みたいなのはいっぱいいるわけだし。

旦那の好みが、ちょっと残念な事も大きいし……いや、この人私が目を合わせても失禁したり気絶しないって事で、気に入って結婚だもんな……と思う事も結構あるのだ。

私は……旦那はほかにいない男だと思っている。私を選んでくれた、私がいいって言ってくれる、それだけで特別な男だ。他にそんな男はいなかった。

だから、私は旦那を大事にしたいし、でも言いたい事は皆言いたい。そして大事にされたいし、言いたい事を言ってほしい。この人大事な事黙るから。

さて、顔を仰いだ私は、いい加減掲示板から離れなくちゃ、と彼の裾を引っ張って、言った。


「ギルドに行こう、この調子なら、大騒ぎにはならないと思うから。でも結婚したとか言うと、祝い酒をおごれって、騒ぐ人はいるかも……」


「それが流儀ならば、路銀が許す程度にはおごるぞ。うちのおばば達がえんえんと小言のように、新婚旅行でも路銀を制限してくれ、というものだからな」


「あれ、後で一族の女の子たちに聞いてみたけど、前の王様がめっちゃくちゃ新婚旅行で散在して、笑えない事態になったせいでしょ、あなたのせいじゃないと思う。あなたがわりとお金のかからない王様だって、実はおばば様たち安心しているらしいから」


「俺には言わんくせに、お前には言うのか」


「よそからきたお嫁様には言える事ってのもあるんでしょ」


言いつつ私は、彼の腕に引っ付いた。引っ付いても倒れないしよろめかないし、しっかり支えてくれるこの感覚は、どうにも居心地の良さが増すものでしかなかった。

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