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残念ながら、母の娘はそこの美少女ではなく私です!!!コミカライズ中!  作者: 家具付
外伝1 泥棒と私 ※本編と雰囲気違い過ぎます。ご注意ください

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18 敬意と恐れを混ぜ込んだ

この国は、どうやら私の暮らしていた国から、一つ小国を挟んでさらに先にある地理らしい。

結構な距離だ。ついでに世界地図を広げて見て、可能な限りお姫様学校との距離を調べてみたところ、やっぱりとても遠かった。何故か? 私が暮らしていた国よりも西にあるお姫様学校と、東にあるこの国は、正反対の位置にあるのだ。

そう考えると、あの人どうしてお姫様学校に来ていたんだろう……やっぱり最初の印象通りに、誰かの付き添いだったんだろうか。

でも誰かの付き添いだったら、いきなり国に帰ったりできないんじゃないかな。

そうすると、あの人も誰かとの縁談とかがあって、その誰かとの出会いを演出しなくちゃいけなかった側では?

いよいよあの人の妻とか、無理じゃないだろうか。いくら彼が私の事を気に入っていて……私が彼の近くにいる事に、妙になじんでいる気がしても、一国の王様が政略の欠片もない結婚が出来るわけもない。

なんて事を考えつつ、この国の婚姻制度が巻物のどれかに記載されていないか調べようと、した時だった。

扉の向こうが少しにぎやかになって、数人の女性の声が聞こえてきた。

石造りの建造物のように思えていたこの建物は、よくよく見るとアラバスターの多いレンガ造りで、それらはどことなく、おかみさんの所でお世話になっていた集合住宅とかと違う趣ってものがある。

多分風土に合わせた造りって奴だろう。たまに、異国出身の冒険者の人が、故郷の建物を懐かしがって仲間にぼやく事もあったくらいだし、地域性って奴は大きそうだ。

まあ何が言いたいかって言うと、レンガ造りの建物の扉は、レンガでは無くて木製で、外の声が聞こえて来るって事が言いたかったわけ。

扉の前で誰か女性の声が複数と、それを止めているような男の人の声がして、五分くらいそれは続いて、静かになった。

誰が来たんだろう、もしかしてあの男の奥さん候補の、一族の人ってやつ? 

やっぱり、どこから来たともしれない女の子なんて、王様の妻には認めないっていう事を忠告に来たのかな。

私、あんまり同年代の同性との会話できないんだよね……ギルドの受付って、同年代の女の子には不人気な職業だから。やっぱり荒くれものたちに怒鳴りつけられたり、圧力をかけられたり、下品な言葉を時々浴びせられる、ギルド受付嬢って、十代の女の子にとっては結構覚悟がいる仕事だ。

そんな仕事をしていると、喋る相手は大体年上の、荒っぽい男の人が多くなっちゃって、同じくらいの歳の可愛い女の子たちと、喋らないんだ。

だから会話が続かない事も多い。

異国の女の子と会話とか、どうすりゃいいのよ、と思いつつ身構えて、きちんと座り直した時だ。

扉が開いて、複数の、髪の毛にとっても綺麗な模様の布を巻き込んだ女の子たちが、目をきらきらさせながら、こっちを覗き込んできたのだ。


「うわ、思ってた百倍強そう」


「あのねえ、王と見つめあえるってだけでそれ当たり前」


「うわあ、やっぱりアニスお姉さんの趣味の衣装だ」


「アニスさん、男物仕立てて、女の子に着せるの好きだもんね」


「ここまで違和感がないのもすごい」


……褒められている気分にはならない。でも、彼女たちに悪意とか、敵意はなさそうだ。

私は大きく息を吸って、彼女たちを見て問いかけた。


「あの、私に何か用事ですか」


「あ、ちゃんと女の子の声だ」


「それも甲高くない、王好みの声だ」


「あんたたち! いい加減挨拶位しなきゃだめでしょ! ……初めまして、お姫様。私達、王の一族のものです。慣れない土地で出歩けず、一人でお暇を持て余すかもしれないと思って、おせっかいながら来てしまいました」


女の子たちの中で、一番しっかりしている子が、にっこり笑って挨拶をして来た。

私は相手が挨拶をして来たのだから、こちらも、という事で、頭を下げて挨拶をした。


「初めまして、ええっと……エーダです」


「エーダ様? ほら、あんたたち、いつまでもここでじっとしてたら、エーダ様もどうすればいいかわからないでしょ! でもここ王の私室なのよね……入ったらなんか呪われそう」


「王は呪う人ではないでしょ、でもまあ言いたい事はわかる」


「私がそっちに行けばいいんじゃないの」


さすがに王様の私室に土足で入れないんだろう。いくら一族の女の子たちでもそれ位の遠慮はあるんだろうなと思いつつ、私は立ち上がった。

すると彼女たちは慌てふためいた。


「エーダ様にそんな気を使わせてどうするのよ!」


「でもどこだったらあり? なし?!」


「そこの東屋よ!」


「あそこなら執務室から見えるから、王の怒りを買わないわ、たぶん!」


女の子たちは大騒ぎして話し合い、すぐどこに行くか決めたみたいだった。

東屋があるんだ……と思いつつ、私は扉の方に近寄って、彼女たちを見た。

私は女の事しては、少し身長が高い方だ。たぶんこれも父さんの血が出たんだろうけど。

そんな私が、見下ろすほどの背丈の少女たちは、かわいいなあ、と思う可愛さだった。

彼女たちは、初対面のはずなのに、私に対してとても好意的な視線を向けて来ている。

どうしてだろう。

色々聞きたかったけれど、彼女たちはすぐ私の手を掴んで引っ張って歩き出した。


「皆様……あまり遠くに出ないでくださいよ! 雨乞いが近いので、皆気が立っているんですからね!」


私室の前に立っていた兵士さんが、女の子たちには勝てないけど、言わなきゃならないっていう顔をして、彼女たちに声をかけて、彼女たちはにっこり笑った。


「そこの東屋だもの」


「王も少し前までは、そこでよく一休みしていた場所ですもの」


「そんなちょっとの距離で、怒る王じゃないですよね!」


「うふふ」


強い……と思いつつ、彼女たちに連れられるままに進んでいくと、王である彼の部屋は、大きな建物から少し距離を置いた場所にあるのだという事が、わかった。

彼の部屋がある建物は、強い日差しを避けるためなのか、一番日陰に作られていた。

きっと一番涼しい建物を使っているんだろう。この国の日差しはとても強い気がするもの。

さて、そんな建物の一階の裏口みたいな場所から外に出ると、見えてきたのは水の枯れた人工池らしきものの上にある東屋だった。

干上がったそこに、寂れたようにぽつんとある東屋は、ちょっと不気味な雰囲気もあるけれど、日陰で涼しそうだった。

そこに、彼女たちは当たり前のように進んでいって、東屋の座る場所に腰かけた。

私も促されるままにそこに座ると、彼女たちの中で、一番年上に見える少女が、頭を下げた。


「このたびは、ようこそ、いらしてくださいました。王の一族の女たちは、あなたを皆歓迎いたしております」


「……あ、はい」


いきなり、さっきまでの砕けた感じの喋り方から、丁寧なものに変わったので戸惑っていると、他の女の子たちも頭を下げた。


「本当に、おいでいただき、感謝しております。……こう申すのは勘違いを起こすかもしれませんが、一族の女たちは、王がじきじきに妻たる方を見つけてくださった事に安堵しているのです」


「……あの、ひとつよろしいですか? 何か深いご事情があるのですか……?」


一族の長老とおばばたちが、あの人の妻を選んでいる最中だと聞いていたから、女の子たちがこんなに、手放しで私という、余所者の奥さん……まだ認めてないけど……が来る事を喜ぶのって変な話のように思えたのだ。

あの人、むやみやたらな乱暴男とかじゃなさそうだし、結構優しくてお人よしっぽさを感じるし、下手すりゃ私より作法とか知っている。

悪い相手じゃないだろうに。それともやっぱり……


「あの人の目を見ると、皆失禁する事と、何か関係が?」


「……そうなのです。同じ一族であっても、王の目を見ると、すべからく恐ろしさのあまり、失禁したり気を喪ったりと、とても共に過ごせない状態になるのです」


「そんな怖い人ですか? 私が接するに、そんな残酷な気性ではないと思うんですけれど」


「……」


女の子たちは目と目で会話をし始めた。何か秘密があるみたいだ。

でも私は、それをあえて聞くつもりはなかった。


「あの人の秘密なんでしょう、あの人が自分で言うまで、あなたたちから積極的に聞かない事にします」


「いいんですか?」


「あなたたちの態度から、何かしらの、よほどの事情があって、あの人の妻になれないのだろうという事は、察せるので」


「……ありがとうございます。でも、これだけは確かなので、言わせてください」


「はい」


女の子たちの一人が、まっすぐに私を見てこう言った。


「あの方は、救国の王である事に、嘘偽りはないのです」


救国の王……この国戦乱があったのかな。

あの人は自分が生贄だって言った。自分しかできないって言った。彼のその犠牲があるから、この国が救われたと皆が思っていて、救国の王というのなら、それはこの国にとって事実なんだろう。

そんな事を思ってから、私は頷いた。


「分かりました、頭に入れておきます」


それを聞き、彼女たちはほっとした顔になった。そして身を乗り出して、好奇心で一杯だという顔を隠さずに、聞いてきた。


「あなたは、どこからいらしたのですか? 故郷のお話を聞かせてくださいな!」


「私達も、この国の事をお教えいたしますわ!」


ありがたい申し出なので、私は快くそれを受け入れた。実際に暮らしている人から話を聞くって、すごく分かりやすいから。

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