15 どうやっても現実は切ない
どうやら今まで、私は雰囲気にのまれて、それに思い至らなかったらしい。
「……寝間着で行くのはやめたいんだけど」
「ここは俺の衣類はあるが、女の衣類は置かれていないぞ」
「なんかないの、着られそうなの」
「少し待て」
言って彼が、指を鳴らした。音じゃない何かが空気を震わせて、五分くらいしたら、見覚えのある女の人達が、わらわらとやってきた。
「やっと顔を見られたわ!」
「王が入れて下さらなかったのよ!」
「お着換えでしょう? あなたの体に添う衣装が用意できてますよ!」
「お着換えをした時計りましたからね!」
いったいいつ寸法を測ったんだろう。彼女たちはそれの達人なのだろうか。達人だから彼女たちが来たのかな、そっちの方が正しそう……と思いつつ、呆気にとられていると、彼女たちが、楽しそうに衣装を取り出し始めた。
そんな彼女たちが用意したものは、華やかなものだったんだけど、男が淡々とこう言った。
「むやみに派手にせんでいい」
「そうですか?」
そう返事を返した女の人たちは、彼と視線を合わせようとしない。それだけは出来ないって言う感じだ。私に対して話している時と違って、声が若干震えている。
なんか……怯えている気がする。私はちらっと男を見て文句を言った。
「女の人たち脅して何してんのよ」
「脅してるわけがないだろう」
「あ、お嫁様、気にしないでくださいな。こう……こちらもちょっと事情があるんです」
女の人たちは、それでも嬉しそうに笑ってくれた。
「さて、地味なのと言いますと、こんな感じで」
「あなたまた、男物まで作ったの?」
「この方は絶対似合うでしょ」
「腕はいいのに趣味が残念ね、あなた本当に」
そんなやり取りで見せてもらったのは、日差しを遮る緩やかな袖の、楽に着られそうな衣装で、そして男物というだけあって、ズボンみたいな形のものだった。
触ってみるとさらりと涼しい。
「これにしてもいい?」
「気に入ってくれました? 渾身の力作です!」
「この人変な所で本気出したわね」
私が指さすと、変な趣味って言われた女の人が、満面の笑みで言って、それに対して仲間の女性が、ちょっと吹き出しつつ言った。
さてお着換えは衝立が必要ですね、という女の人たちの意見を尊重して、彼が背中を向ける。
私は速やかに着替えて、大きな姿見で自分を見て、突っ込んだ。
「いや、男の子にしか見えない!?」
「大丈夫ですよ! 王と並んだら華奢な女性にしか見えませんから!」
「それ単独だと男の子って言ってるような物ですよね!?」
それに対して、女の人たちは笑って誤魔化した。誤魔化すって事はあたりって事である。
そして、私を見た彼が、端的に言いやがったのだ。
「だから肉がないと言っているんだ」
屈辱だけれど、事実過ぎる事実を、こうして目の当たりにした私は、地団太ふんで悔しがるくらいしか出来なくて、子供じみた地団太を踏んでいる私を見て、彼が喉の奥でぐつぐつと笑う物だから、盛大な噴火は出来なかった。
笑われていると、何かよくわからないけど、心のどこかがもにゃもにゃして、私もしょうがないから笑うしかなかったのだ。
「……天変地異だわ」
「うん」
「すごいお嫁様だわ」
女の人たちが、小さな声で何か言っていたけど、聞き返しても、笑顔で
「なんでもないですよ」
って笑うからそれ以上、追及できなかった。




