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残念ながら、母の娘はそこの美少女ではなく私です!!!コミカライズ中!  作者: 家具付
外伝1 泥棒と私 ※本編と雰囲気違い過ぎます。ご注意ください

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3.予期せぬ転換

一年ぶりくらいですが、話のネタが上がってきたので更新再開します。

設定はふわっとしております!

やり逃げなどヘタレのする事である、というのは冒険者ギルドでの定説で、一晩立って夢見心地のなくなった私は、あいつヘタレだったんだな、という事で昨晩のあれこれそれを、きれいさっぱり忘れる事にした。

あんなのは犬に舐められた程度って考えでいなくちゃ、面倒だ。

また会いに来るなんて言っていたけれど、実際に会いに来るかもわからない男を待って、乙女心爆発なんて真似をするほど、私は夢見る乙女でも可憐なお嬢様でも、運命に選ばれている系女子でもない。

何から何まで平凡で、ちょっとナイフ投げとかが得意で、地味顔で胸も尻もそこまで肉感的じゃない女の子、それが私ってわけだ。

平凡系女子が、何かに導かれて物事が進むなんて言う夢は、子供の頃から見たためしがない。

だって私の隣にはいつだって、可憐で可愛くて超美人な、幼馴染がいたのだから。

あの子の隣で生きて来て、自分の顔とかに自信が出来るなんて普通あり得ない。

それに私はあの子の騎士様みたいな立ち位置だったのだ。

シャルロッテを守る女騎士。そんな感じの立ち位置でずっと過ごしてきた私はそれに対して、後悔なんて一つもしていないけれど、夢を見ない若干擦れた性格になったのは仕方がない。

そんな私は今、基礎知識を一生懸命に学んでいる。何の基礎知識かって? そんなのお貴族様的基礎知識である。

流石に基礎算術とか、文字を書く事とか、文字を読む事とかは、小さい頃に町の学校で習ったけれど、私が今習っているのは、そんなものたちじゃない。

何かって言ったらもう笑い事にしかならないけれど、マナーとか、暗黙の了解とか、そう言ったやつだ。

つまり私が長年無縁極まりなかった事達で、十代後半にもなって叩き込まれるとは、数週間前までついぞ考えた事のない物たちでもある。

基本的な高級食器のマナーとか、そんな奴だ。

普通に、あまり音を立てないで食器を動かす、何てのはぎりぎり理解できるけれども、食器の数がめちゃくちゃ多い。ナニコレって言いたくなるくらい、多い!

前菜用、主菜用、デザート用。ぎりぎり理解できそう。肉料理用、魚料理用、パン用、サラダ用、スープ用……なんでそんなに多いんだ! 多すぎるだろうが! 食器洗う人の手間考えろ!! 

と言いたくなる事満載。これを自在に操るお母さんは、慣れた物という調子だけど、私は……ナイフ一本とスプーン一つで食事する世界だったわけで。どれがどれだか覚えきれないのだ。

泣きたい。泣かないけれどもさ。そんな弱音を吐きたくなる食事の時間。

他にもいろいろあるわけで、立ち振る舞いがものを言う世界な貴族社会の荒波をくぐるために、家庭教師さんたちから教え込まれる所作あれこれ。……スカートの裾さばきがなんだかんだと言うけれど、私足元が隠れるほどのたっぷりの布地の衣装なんて、この前のお母さんのお披露目会の時以外、身に着けた事ないわけで……

転ぶ。転ぶ、転ぶ!! あまりにも頻繁に転ぶものだから、教えている人が絶句してしまう位だ。

一度靴が全損するくらいの転び方をしたから、マナーの教師の人が、これはまずいって判断したみたいで、お母さんに相談したらしい。

何を相談したのかって……それは……



「ねえ、エーダ。あなた……」


お姫様学校っていう物に、入学してみない?


……はい? と思った人、手をあげてほしい。私はあげたかった。お姫様学校って、それは……聞いた事はあるけれど、無縁のものだと思っていたのだ。

このお姫様学校っていうのは、文字通り、お姫様といわれる人たち……ちなみに領主の姫様とかも該当する……が、入学して、だいたい三年間くらいそこで学んで洗練されて、素敵な淑女になって卒業するという学校だ。

ここに入学した女の子は、皆びっくりするくらい素敵なお姫様のあれこれを身に着けると言われていて、在学中に良家の子息に見初められて、卒業とともにゴールインしちゃうと言う人も多い学校である。

だがどうして私がそこに入学しなくちゃいけないのか。まったくわからなかった私が、戸惑っていると、お母さんは少し目を伏せた。


「エーダが悪いんじゃないわ。あなたにたくさんの苦労をさせて、行方不明で自分だけのうのうと生きてきた、お母さんが悪いの。でも……エーダはまだ、社交界でつつがなく人々の間を、泳ぎまわれないでしょう?」


「社交界って泳ぎ回る世界なんだ……」


「そう。でも、そこで泳ぐためには、基礎知識とか、暗黙の了解とか、空気感を知っておく事とかが大事になるの。でも……あなたは、それらと無縁で生きてきたでしょう? このままじゃ、どんな素敵な女の子がいても、会話さえできなくて、お友達もできないのが、予測できてしまうから……お母さんが通っていた学校で、少しでもいいから、そう言ったものに馴れてほしいの」


社交界の空気も基礎知識も、暗黙の了解も、知らないのは事実で。

そう言ったものに慣れ親しんでいる人と接した時に、会話が弾まないだろう事も事実で。

……なんか、私の生きてきた世界と、これから生きなくちゃいけない世界が、すごく違うんだなって、お母さんに言われて、なんだか、はっきりわかってしまった気がした。

私が知っている世界の常識とかそう言ったものは、これから、“お母さんという生粋のお姫様”の娘にとって、あまり好ましくない物なんだなって。

そして、これから先、生きていく世界の空気とか、慣れなくちゃいけない物に、慣れてほしいと願うお母さんは、私の今後をすごく考えてくれているって事も伝わった。

だってお母さんは、とても申し訳なさそうだ。

公爵たちに連れていかれて、行方不明みたいになって、意地になって一言も喋らなかったから、私と一緒に生きる事も出来ないまま、十年近く時が流れて。

何か一つ、お母さんの側が行動を変えていたら、色々違っていただろう事も、事実で。

その結果が、これなのだと、お母さんは後悔しているんだ。

お母さんは、いきなり王宮という世界から、生きる方法を教えられる事もなく出て行くほかなかった人だ。

常識も世界も、がらりと変わって、苦労した人だ。

自分が、慣れない世界に馴染むために、大変な苦労をしたから、……だから、慣れるまでのぎりぎりのモラトリアムって奴の中に、私を入れて、私がしなくていい苦労をせずに済むように、こうして提案しているんだ。

この町の領主の城の中で、マナーとか勉強を教えてもらっても、社交界の空気とか、貴族お嬢様の空気を理解できるわけがないから、お姫様学校という、失敗してもまだ挽回が出来る場所に、入学させたいんだ。

それが、分かってしまったから。私は、それに頷くしかなかった。





お姫様学校は、全寮制の学校だという。完全なる女の園か、ああ恐ろしい……と思うのは仕方がないだろう。私は色々、女の人の怖い物を見てきた経験がある。

ギルドで起きる修羅場系のあれこれは、見物するなら面白い酒の肴になるけれど、それを止めなくちゃいけない受付嬢たちにとって、ひっかかれる覚悟は必要な世界だった。

そこに入学する際に、誰か一人、侍女をつけるのが慣習だと言われたけれども、私は侍女のあてがない。それに侍女がいなくても、だいたいの事は出来る。

豪華なドレスの着用は出来ないけれどもね。

……なんて話をしていたのに、お姫様学校に向かう馬車の前で待っていたのは……


「エーダちゃん! これからよろしくね!」


とふわふわ笑う超美少女……そう、シャルロッテだった。


「どうしたの……? お針子仕事は? あんなに頑張ってたのに」


「実は仕立て屋の親方さんと、大げんかしちゃって、辞めたの」


「なんでそうなった……?」


「お洒落で実用的なドレスの型紙を作っていたら、そんなの流行に合わないって言わたの。これからの時代、着やすくて呼吸がしやすいドレスは売れますって言ったのだけれど、女の人のおしゃれは我慢の世界だっていって、譲らなくって。ついには私の試作品のドレスを、びりびりに破いて燃やされたから……こんな話の通じない仕立て屋なんて潰れてしまえ! っていって、辞めたの。ふふ、お母さんとかお父さんとかに、「これだからシャルロッテは」なんて言われちゃったけれど、新しい仕事先を探す時に、エーダちゃんのお母様から、お声がかかったのよ」


そうか、シャルロッテの時代を先取りしすぎたドレスは、古典も流行も知り尽くした親方さんに、気に入られなかったのか。

そんな事もあるあるだろうな、と思いつつ、私は問いかけた。


「侍女のお仕事だよ……? ロッテちゃん、人目がある場所では、私に丁寧に喋らなくちゃいけないんだよ……?」


「ふふふ、侍女の視点から、新しいドレスや部屋着のアイディアを見つけられそうで、とっても楽しみ!」


そうだ、シャルロッテは元々結構前向きな子だ。あの結婚式の時は、心労が強すぎて、くらい落ち込んだ顔をしていただけだ。

そんな事を思い出しつつ、私は言った。


「一緒に居られてうれしいけど、迷惑かけるみたいで複雑」


「私はちっとも迷惑じゃないよ。だって侍女っていうカテゴリにいるだけで、エーダちゃんの隣で授業を受けて、お姫様と同じだけの教養も手に入るでしょう? 下町の女の子が手に入れられるチャンスとしては、最高峰よ」


「そっか、そんな考え方も出来たか」


「エーダちゃんは落ち込み気味なの? 新しい世界だもの、楽しもうよ」


シャルロッテがそう言って、私を馬車の中に引っ張り込む。前向きな彼女を見ていると、なんだか、大丈夫になるかもしれないなって、思えて、私は笑った。


「うん、一緒に頑張ろうね」


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