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残念ながら、母の娘はそこの美少女ではなく私です!!!コミカライズ中!  作者: 家具付
本編 母の娘は私です!!

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10 むかしむかし

気が付いたら私は、どこかの寝台に寝かされていた。そしてとても……温かかった。それは間違いなく、上掛けなどが、きちんとかけられていたからだった。

ここはどこだろう。そうだ私は牢屋の中で……おかみさんたちは!

私はそう意識が回った瞬間に跳ね上がった。その拍子にガタン、と近くの物が大きな音を立てたため、その音を聞いて、こちらに人がやってきた。


「ああ、よかった。半日目を覚まさないものだから、心配していたんだ。無理もない、アンな場所に、食事も与えられないで、寒さに震えていたら、誰だって参ってしまう」


やってきた男の人はそう言って、私に笑顔を向けてきた。敵意とかはなさそうだった。

そしてこの声に、私は聞き覚えがあった。石造りの壁の向こうで、歌っていた声であり、助けを求めた声だった。


「あなたは……どなたですか?」


「私はこの国の皇太子の弟、というのが分かりやすいだろうな」


皇太子の弟、それは王子様、と一般的に言う人だろうが、この国ではちょっと事情が違っていて、皇太子以外は、王子様と認められないで、成人したら爵位とかをもらって、独り立ちする身の上なのだ。

そして王女様と一般的に言われる人たちは、皇女様と言われ、成人までの間に、自分の能力を生かした職に就くか、結婚するか、修道院に入るか、といった選択を迫られる。

皇太子だけが、王子様、と言われる身の上なのだ。そして彼等をひとまとめにして、王族、というのである。

彼等をわかりやすいように、王族様、と形容するのは、この国独特の言い回しである。

そんな王族様が一体何で助けてくれたのだろう……と思った時だ。

私はおかみさんたちが、近くの寝台に寝かされている事に気が付いた。

ちゃんと手当されているし、温かい布団とかを与えてもらっている。よかった、ちゃんと手当してもらっている、と私は胸をなでおろした。


「ありがとうございます、助けてもらって、看病してもらって」


「こちらこそ申し訳ない、貴族の暴走で、あなたたちを無実の罪でこんな非道な目にあわせてしまっていて」


彼は丁寧に謝ってきた。そして私に、水差しに入った飲み物を進めて来てくれた。

私はそこで空腹だという事、喉の渇きが限界だという事に気が付いた。

そのため一口それを飲むと、それが温かく甘い、お乳入りのお茶だったから、むさぼるように飲み干してしまった。

そして水差しをひったくり、二杯目を飲んでから、私は人心地が付いた気がした。


「お腹が空いていないだろうか? そんなにがぶがぶと飲むなんて」


「思っていたよりもお腹が空いていたみたいです。でも牢屋の中ではそんなに感じなかったのに……」


「心理的な負担で、そう言ったものが感じにくくなっていたんだろうね。それで、詳しい話を聞かせてもらえないだろうか? 君の話はとても大事なものだと思うんだ。牢屋に入れられた経緯以外にも、君のお母さんの事とか、お母さんのドレスの事とか、いろいろ」


「はい!」


私はこの人を信用する事にした。ただ単純に牢屋に入れられていたと聞いただけで、私たちを助けてくれたのだから、信用してもいいだろうと思ったのだ。それ位、こんな簡単に、王族様が助けてくれる事なんて、滅多にないと知っていたし、彼にとっても大事な話だと思ったから、彼も助けてくれたのだろう事は、明らかな気がしたのだ。

そのため私は、出来るだけはじめ……お母さんがいなくなったという昔ばなしから、詳しく話す事にした。

幸いと言うべきか、話の要点ははっきりしていたから、そんなに長い話にもならなかったし、分かりにくくもなかっただろう。

そしてそれを聞いた王族様は、腕を組んだ。


「つまり君の母君のドレスを着た幼馴染が、皇女様の娘様、と言われて連れて行かれた挙句、違うのだと否定したら詐欺だ何だと言われて牢に入れられたと?」


まとめるとそうである。私は頷いた。


「お金を持ってきた人たちは、私たちの話を何も信じれくれなかったんです、信じられないでしょう! 何度も何度も、おかみさんも旦那さんも、自分たちの娘だって言ったのに!」


「……つまりそれ位、おかみさんと旦那さんと、その美人な幼馴染は似ていないのかい」


「目元はおかみさんによく似てますよ、若い頃の、もっとすらっとしたころのおかみさんの面影が、ロッテちゃんにはちゃんとあるけど……ロッテちゃんはどっちかっていうと、おかみさんの妹さんに似たんだって、おかみさん言ってました」


「おかみさんの妹は、美人だったのかい」


「若いうちに死んじゃったけど、とっても美人だったらしいです」


「それで、銀髪に紫の瞳に……なるほど……そう言う事情か……」


王族様は何か納得したそぶりを見せた。彼は何か詳しい事情を聴いているか知っているかしているのだ! 私は身を乗り出して問いかけた。


「何か知っているんでしょう!」


「知っているというかなんというか……まあ、君の視点で言えば知っている、という事になるだろうな」


「教えてください、どうしてロッテちゃんが、皇女様の娘だなんて言われて、お祭りの日に連れ居ていかれちゃったりしたんですか? 私たちは何にも知らないんです」


私の訴えに、王族様は頷いた。


「君はもう、関係者だから、話してもいいだろうし、知る権利もあるだろう。何せあのドレスは、君の母君が持っていたので間違いないのだろうからな


そう言って、王族様は驚くべき事を話し始めた。




事の始まりは十八年前である。

その当時、大変華やかで可憐な美少女が、社交界を支配していた。

その美少女の名前はカレン。カレンは男爵家の養女であったものの、持ち前の美貌と才覚と愛される性格から、社交界の特に若い男性に熱烈に支持されていたそうだ。

若い男性が軒並み骨抜きになったほど、カレンは魅力的だった。

そしてそれを面白く思わないのは、彼等の婚約者や恋人、そして妻たちである。

彼女たちはなにかにつけて、カレンに警告を発し、忠告をし、態度を改めるように言ったのだが、カレンは改善する事もなく、その事を男性諸君が、彼女を虐げていると判断するようになったそうだ。

その中でも最も熱烈にカレンに夢中になっていたのが、この国のとある王族様だったらしい。

この王族様には、従姉妹の皇女様という婚約者がいたものの、彼女をまるきり無視して、カレンにだけ愛を捧げる始末。そして皇女様がそれを注意すると激昂する事を繰り返していたという。

皇女様はカレンの今後の事も考え、そして婚約者の事を憂い、カレンと正式に話し合いの場を設けたのだが……そこで皇女様は、カレンを悪逆な呪いを使って殺しかけた、という罪を擦り付けられたという。

皇女様はそして一人、呪いをかけようとした最低な女とのレッテルを張られて、失意のうちに失踪したそうだ。

そして婚約者はカレンと結婚したものの、カレンは男を、誘惑しすぎた結果、王族様の不興を買って、不貞の罪で絞首刑。

こうなって来ると皇女様が正しかったのだと誰もが思っても、婚約者も陛下から見捨てられて元鞘には戻れない。

それに、この皇女様を心から愛していた公爵家令息が、彼女を見つけたら結婚すると宣言。

そうして何年も皇女様は捜索を続けられて……十年前に市井で痩せた姿で発見されたのだという。

皇女様は宮中に連れ戻されたものの、それから一言も口を利かない生活をはじめ、誰もが手を焼いたそうだ。

結婚すると言っていた公爵家令息も、父の後を継いだけれども、どんなに贈り物をしても話をしても、皇女様はにこりともしない。当然手紙は燃やされるし、愛の言葉に聞く耳なんて持たない。

それで十年が過ぎ、いい加減公爵も結婚しろと周りに言われるようになった頃。

皇女様が言ったのだ。


「私は娘に会いたい……」


と。彼女に娘がいたなんて誰も知らなかったし想定外だった。しかし娘のためなら口を利くのだ、娘を見つけ出せば結婚してくれるかもしれない、と希望を持った公爵が、しらみつぶしに街を探し出し、そしてついに、数日前に、皇女様がとても大切にしていた社交界デビューの際に仕立てた記念のドレスを身にまとった、彼女と同じように美しい銀の髪に菫色の瞳を持った、大変な美少女を発見したのだという。

美少女は己の出自を隠されていたらしく、自分には両親がいて、皇女様は決して母親ではない、と言っている物の、彼女も皇女様も国一番の美貌に間違いなく、娘に違いない、と周りは盛り上がり、そして、公爵も娘が見つかったのだから結婚を、と皇女様に迫っているそうだ。

皇女様は


「先に娘との再会を」


と希望している物の、


「結婚してくださったら会わせます! 誓います!」


という公爵との意見のぶつかり合いらしい。

そして訳ありの先代の王の娘を何とかしたい、今の王様も、この結婚を後押ししているそうな。

そんなこんなでどうやら、一週間後には、公爵と皇女様の結婚が執り行われるらしい……というと事まで、王族様は話してくれた。

私はしばし沈黙した。


「……言いたくないけどそれ私だと思う」


「私もそんな気がしているんだ、それに人をやって、今、君のご近所さんの話を聞きに行かせている所なんだ。君のおかみさんが、どんな娘を十年前に引き取ったのかをな」


「でも、……本人否定しているのに、違うっていうのありなんですか」


「同じ銀髪紫の瞳、そして美貌。これだけそろえば間違いないだろう、という盛大な勘違いに決まっていそうだが……公爵は結婚してしまえはこっちのものだからな、何としてでも結婚したいに決まっている」


「そんなに何年も」


「公爵家の妻としての格で言うなら、間違いなく皇女様は最高だ。そんな女性と結婚できる可能性があるのに、その他で妥協はできないだろう。あそこの家はそう言う家だ」


王族様はそう言ってため息をついた。


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