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ブルーストーン  作者: スルガアオイ
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第十話「光線と稲妻」

後ろから声が聞こえた。シバだ。シバが何か叫んでいる。大きな声で何かを叫んでいる。何て言っているのかはいまいち聞き取れなかったしどうでも良かったけど、シバがロボットを蹴飛ばしたのか、警備ロボットは階段の下の方へと落下していった。


「コノハさん何をしているんですか!!早く立ってください!!!」


シバは僕の腕を強く掴み僕の体を起こしてくれた。外力を加えられたせいか、動かなかった体は動くようになっていた。腰を抜かしていたのだろう。


僕たち3人は階段を駆け上がり、先ほどの部屋へと入った。


「ごめん、腰を抜かしていたみたいだ。」


「そんな事よりまずは、扉をバリケードで塞ぎましょう。」


先ほどまで怯えていたシバだったが、割と頼り甲斐のある男だと思った。それに比べて僕は腰を抜かしてしまっていた。少し恥ずかしいが、今はそんな事より目の前の事に注意を向けるのが賢明だろう。



「そこの作業台をここへ!急ぎましょう!」シバが言った。


「分かった!シバとスイはそっち側を、こっちは僕一人で持つよ!」


作業台を扉の前へと運び、その上に棚やツールワゴンを次々と乗せた。扉の向こう側では、機械の駆動音が聞こえる。既に警備ロボットは直ぐそこまで到達してしまったようだ。


「まずい、すぐそこまで来ています!」


「こんなバリケードで耐えれるとは思えない!スイとシバは後ろへ下がってて、扉が破られたら僕がこの武器で何とかする。何とか出来るとは思えないが、もうやるしか無い。」


「コノハさん、本当に大丈夫ですか?」


「大丈夫かもしれないし大丈夫じゃないかもしれない。二つに一つ。もし、大丈夫じゃ無かったら、僕ら3人はここで終わりだね。」


スイが心配そうな表情でこちらを見つめている。


「大丈夫さ、きっと何とかなるから。」僕は強がりを言った。


上に上がって来た警備ロボットは一機だけだろうか。出来ればそうであって欲しいが...


警備ロボットはもう扉の目の前まで来ている。扉をゴツンと叩く衝撃音。次第に衝撃音は大きくなっている。ツールワゴンは作業台から落ちてしまいそうになっている。もう間もなくバリケードは破られるだろう。


スイとシバの方へ目を向けると、彼らは、部屋の隅にある棚の影に身を隠している。


僕は部屋の中央に転がっているマシンの影に身を隠し、呼吸を整える。もう、先ほどのように体のコントロールを失ってはいけないのだ。強く武器を握りしめ、扉の方へ向けてそれを構える。狙うは、奴の制御系だ。


もう一度呼吸を整え、大きく息を吸う。バリケードは崩壊寸前で、いつ入って来てもおかしくない状況だ。トリガーに人差し指を当てがうが、指の震えがある。


「大丈夫だ。きっと上手くいく。」僕は自分にそう言い聞かせた。


額には汗をかいている。


心臓の鼓動は骨肉を伝播し、僕の鼓膜に響いている。まるで、壊れたメトロノームのように、不規則なカウントが段々と速くなる。


作業台に乗せておいたツールワゴンと棚は地面に落下し、室内に激しい音が鳴り響く。バリケードが崩壊した事が分かった。


警備ロボットが入って来たのが分かる。壁に映ったレーザは僕たちの息の根を止めるために慎重に、辺りを捜索している。


息を潜め、心の中でカウントを始める。


3...2...1...


僕は勢いよく、マシンの影から飛び出る。奴は前方3m程度の所で身を構えていた。


僕は奴の胸部に狙いを定めてトリガーを強く握った。


しかし、刃は発射されない。


「どうして!!!」


もう一度トリガーを握る。それでもダメだった。


奴は、勢いよくこちらへと向かって来ていた。


「くそっ!!!!!」


僕は叫びながら、警備ロボットに目掛けて突進した。


「うわぁぁぁぁぁっ!!!!!」


刃が奴の胸部に突き刺さる。僕はアークショックボタンを押し、電気ケーブルを介して奴に電流を流し込んだ。


白い稲妻がバチバチと音を立てながら明滅している。電撃は僕の腕にも伝わって来ていて、指が固まってしまっていた。


僅か数秒程度のことだっただろう。奴は、直立のままで完全に動かなくなった。


「やった...上手くいった...手がビリビリする。」電撃により腕は細かく痙攣し、膝は恐怖により不規則な痙攣を起こしている。


「コノハ!」スイが駆け寄って来た。


「コノハさん!大丈夫ですか?」シバもこちらへとやって来る。


「あぁ...何とかなってしまったね。それより、2体目の警備ロボットの事も考えなくては。」僕は膝から崩れ落ちてしまうがシバが僕の体を支え、床に座らせてくれた。


「次は、私がそれを使います。」


「あぁ、これはやめておいた方が良い。電撃が跳ね返ってくるからね。」


「しかし、これ以外で警備ロボットを止める手立ては...」


「私がやるわ。」スイが言った。


「ダメだ。君には難しい。」


「ダメなんてダメよ。私がやる。」


「これは危険すぎるし、君の体格じゃ無理があるんだ。どうか分かってくれないか。」


「そうですよ、スイさん。貴女がやるにはリスクが大きすぎます。」シバも反対した。しかし、スイは引き下がらない。


「嫌よ。私はやると決めたらやるの。いいからそれ、貸して。」


スイは僕の武器を強引に奪い取り、扉の方へと歩き出した。


「スイ!!待って!!!どこへ行くんだ!!!」


「貴方たちはそこでしばらく待っているだけで良い。後は私が何とかするから、大丈夫よ。きっと。」スイは体格に似合わない程の武器を抱えて走り出した。


僕は、床に座り込んだまま、その姿を目で追う事しか出来なかった。








登場人物


コノハ・イサム:分解屋で機械生命体論者。


スイ:青目で少女の容姿をしたアンドロイド。”確定現象”を見るという不思議な力を持つ。20年間もの間ラザファクシマイルの地下に幽閉されていた。誰が何の目的で彼女を産み出したのかは不明。


シバ・エイト:システムエンジニア。ラザファクシマイルのシステムエラーを調査していた所、警備ロボのシステムに異常を発見。警備ロボットたちの破壊工作に巻き込まれる。


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