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第 十 話

光がシカガネ様を避けるならば、光に当たっていなくてはいけない。それはどれほどの規模なのだろう。

車のヘッドライトは明るい。

懐中電灯の光でもシカガネ様は取り憑いてこない。

朝になって太陽の元でも大丈夫だろう。


「く、車に乗って逃げないと」


中瀬さんはそう言うが、誰も免許を持っていない。車を運転した経験がないのだ。


「北藤くん、運転できないの?」


そう頼られて困った。車にまるで興味のなかったオレはオートマチック車の運転の仕方すら自信がなかった。慌てて事故を起こして、それで死んでしまってもかなわない。

そして、まだ心のどこかでは三人のドッキリだという心の甘えがあったのだ。


「く、車の中で電気をつけて一夜を明かすのは?」


我ながら名案。エンジンがかかったままなので、内部の発電機に頼って一夜を明かす。


「ガソリンはどのくらいあるのかしら?」


そうか、エネルギーがないと一夜を明かせないかもしれない。

中瀬さんがかろうじてガソリン量のメーターなら読めるということで、彼女を照らしながら運転席を覗かせた。


「やっぱり、光がシカガネ様を避ける論は正しいかもしれないわね。絶対に光を外さないでよ」

「は、はい」


中瀬さんは運転席に懐中電灯を当てる。そして首を横に振った。


「メモリが三本しかない。おそらく一晩は過ごせないと思うわ」

「ま、マジすか」


途方に暮れた。朝までまだ六時間ほどある。

懐中電灯は六本。それで朝まで乗り切れるのだろうか?


「どうする? ここにじっとして救助を待つ? それとも来た道を引き返して少しでも光のある場所を探す?」


ここまで来るのに、光があった場所といえば湖の近くの街灯だけだ。

そこまで何キロあるのだろう。道が悪いから時速4キロほどしか進めないかもしれない。

しかし、10キロほどなら2時間半で到着できる。

街灯ならば朝まで消えることはない。それに離れればシカガネ様から逃れられるのかもしれない。

ここはシカガネ様の神域なのだ。そこから出てしまえば光だろうとなんだろうと大丈夫かもという思いもあった。


「ミドリは? どう思う?」

「私も光のある場所に急いだほうがいいと思う。シカガネ様はまだジッと見てるわ……」


「ま、マジかよ」


オレたちは先輩たちの遺品である懐中電灯を集め、少しでも光が弱くなったら交換することを決め、湖の街灯に向けて歩くことにした。


だが甘かった。まず三本の懐中電灯では互いを照らし合わせることで精一杯なのだ。

両手に懐中電灯を構え、一本で自らを照らし、もう一本で道を照らす。

そして悪路。車で来る際は草を押しつぶしながら進んでいったのだが、足ではなかなかそれができない。

時速4キロなんて無理だ。オレたちはそれぞれバランスを崩しながら歩くしかなかった。

それでも一時間ほど歩いたであろうか。中瀬さんが翠里に訪ねた。


「どう? 九曜さん。シカガネ様はまだついてくる?」


翠里は黙っていたが、首を縦に振った。


絶望だ。

車から一時間の距離を離れてもシカガネ様はついてきている。

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