第 一 話
F大学のオカルトサークルは二年前の傷ましい事件があってから活動を禁止されていた。
自粛ではない。禁止。
当時入っていた学生は、他のサークルに移る等して上級生は一人もいない。
だが新入生が入って、熱心なオカルト好きも多く再開のめどがたち、一年生たちが集まってオカルトサークル復活となった。
上級生がいないので気楽だ。
しかも、部長となった石田はかなり熱心で先生たちを説得し、構内にある合宿所を借り男女8人合宿を名目に集まった。
オカルトサークルなんて合宿必要かと思うだろう。
出来れば心霊スポットやUFOが舞い降りる地などが良かったのだが、まだ先の事件のことがあり認められたのは構内の合宿所となったので部員たちはそこに甘んじるしかなかった。
「まぁ、一年なにもおきなければ来年は旅行出来るかも知れないしね」
部長の石田は部員たちを慰めた。
オカルト部員たちが合宿所に集まり、することはこれだった。
食堂にロウソクを百本立て、一人一人怪異の話をしてロウソクの炎を消して行く。
百本目を消すと、そこに怪異が現れると言う「百物語」という儀式であった。
部員たちは楽しそうにロウソクに火をつける。
ところが、怪異はすぐに起きた。
部員8人のはずが、9人いる。
女子部員が悲鳴をあげた。
「おいおい。失礼だな」
見知らぬ9人目の男はそう言った。
部長の石田もクスリと笑う。
「ごめんごめん。脅かすつもりはなかった。みんなも新聞なんかで知ってるだろ? G県の心霊スポットに行ったF大生、6人の内5人が行方不明。1人だけが発見されたってやつ」
「ええ。知ってるわ……」
「ここにいる、北藤恒哉先輩こそ、その生き残りなんだ」
「そう。みんなオカルトサークル復活おめでとう。今日はゲストに呼んで頂きありがとう。よろしくな」
部員たちは、その人が人間だったのでホッと安堵のため息をついた。
この三年生の北藤こそ、二年前のオカルトサークルの事件を体験した人だったのだ。
部員たちはどんな話が聞けるのか楽しみだった。
北藤を交え百物語が始まり、一話、一話と話を進めて行く。
聞いたことがある怪奇話、都市伝説、ネットに転がっている誰かの作り話。
みんな持ち寄った怖い話に身震いをしながら百話目に近づいて行った。
時間は深夜の三時。
百話目は北藤となった。
元々、部長の石田が北藤で締めになるようにセッティングしていたのだ。
北藤はためらいながら話を始めた。
「オカルトサークルを禁止にするほどの話はみんな興味があるだろう?」
「ええ。先輩の他はみんな今でも行方不明なんですよね」
「その通り。君たちも行き過ぎた怪異好きはよくない。とくにこんな遊びは止めた方がいいよ。もしもオレの忠告など聞けないと言うならあの事件の話をしよう。どうだ?」
北藤がそう言うのは、恐怖を煽る言葉。オカルト風味をアップする調味料だとみな感じた。
やはり先輩はひと味違う。
「結構です。お話しになって下さい」
北藤はニヤリと笑った。
ロウソクの炎がゆらりと揺れる。
一時静寂。
北藤の口を開く音がそれを破る。
みな一斉に息を飲んだ。
「それじゃ話をしよう。まだ誰にも言っていない、あの惨劇の話を」