お母様に呼び出されました。
朝食を終えたルディアは、母の部屋に呼び出されていた。
「お母様。ルディアです。」
母の部屋の扉を叩き、返事が来るのを待つ。
ほんの数秒後、部屋の中から母の返事が聞こえ、ルディアは緊張の面持ちで部屋の中に入った。
「さて、説明して貰いましょうか?」
ルディアがソファに腰掛けたのを確認するとマリアンヌはその瑠璃色の瞳を鋭くさせ、切り出した。いきなり本題に入った事にルディアは戸惑いながら
「・・・実は、頭を打って寝込んでいた際に夢を見まして・・・。」
と、俯きながら答えた。
「このままでは破滅しかない、と夢の中でお告げがあったんです。さすがに私もまだ死にたくはありませんから、破滅を回避するべく自分自身を見つめ直すことにしまして・・・その第一歩としてまずはいつも迷惑をかけていた皆様に感謝や謝罪を素直にするようにしようと考えましたの。突然で驚かせてしまってごめんなさい。」
朝食を食べながら考えていたことを言い終えると、ルディアは少し頭を下げた。そんな彼女の姿にマリアンヌは暫く目を丸くしていたが、そう、とすぐに表情を綻ばせた。
「それは良いことだわ。あの人が甘やかすからどんどん我が儘に育ってしまってどうしようと思っていたのよね・・・。」
母の言う『あの人』とは父で間違いないだろう。ルディアの記憶が正しければマティアは娘を溺愛していたこともあり、彼女に対してかなり甘く、怒る事なくどんなことも許してしまっていた。
「でも、自分で気付いてくれて良かったわ。明日は王妃様とお茶会の日だったし、いつものように我が儘言い始めたらどうしようと思っていたのよ。」
これで安心だわー、と笑顔で紅茶を飲むマリアンヌ。
・・・ん?
「お、お母様・・・?今なんと仰いました・・・?」
「え?・・・明日の王妃様とのお茶会についてきたいと言ったのはあなたでしょう?」
まさか忘れていたの?と、母に言われ、ルディアは頭が真っ白になった。
――明日、お茶会・・・?
記憶を取り戻す前のルディアの記憶を辿ってみると確かに、数日前に母からそんな話を聞いていたような気がする。というよりも母のお茶会について行きたい、と駄々を捏ねたのは紛れもなく自分自身だった。
・・・最悪だ・・・。
事実を思い出したルディアは心の中で自分自身を呪っていた。
ひとまず、母の部屋から自室に戻ったルディアはこの世界についてもう一度調べてみることにした。
――もしかしたら、乙女ゲームの世界ではないかもしれない。
記憶を取り戻す前のルディアは勉強が大の苦手だったこともあり、この世界の時勢に詳しくない。だから記憶を取り戻したルディアが勝手にここが乙女ゲームの世界だと思い込んでいるだけであって、実際は似ているだけのまったく別の世界なのかもしれない。
ーーそう意気込んで貴族の情報を両親や兄たちに聞きまくり、国の歴史やらなんやらを図書室で血眼になって調べ続けた。
あまりの形相に驚いた使用人たちに医者を呼ばれそうになったが、それどころではなかったので断固拒否させて貰った。
そして、必死になって調べた結果は最初と変わらず、逆にこの世界が『DEAD OR LOVE』の世界であると認めざるを得ない証拠を集めるだけとなってしまった・・・。