兄と妹
よし、人格も作れた。いざって時には、すぐに交代できる。
あまり時間は経ってないはずだが、......ここ何処だ?
「お、目覚めた」
あ、やっぱり面倒だな。鈴果に任せよう。
よし、ちょっと人格会議でもしてくるかな......
「鈴果?どうしたん?」
「ん?いや、何でもないよ。ちょっとちょっと疲れちゃっただけ」
「あ~、疲れとるんなら、今日はもう帰る?」
「ん...いや、勝くんを待つよ」
「え!?今、勝くんって...」
あ、そっか!今の私は、記憶が無い設定なんだ!
もう、鈴音さんも余計な事をしてくれたよ!
「あ、えっと。全部思い出した訳じゃないんだけど、そう呼んでたってのは思い出したから。...間違ってた?」
「い、いや。合っとる。...あ、えっと~じゃあ、部活が終わるまで待っとって」
「うん」
......あ~あ。行っちゃった。私が本物の鈴果じゃなくても、この気持ちは本物のなんだよね...。
少し待ってるだけ、離れてるだけなのに、寂しい......。もっと、話したい。
......こっちの世界では、ずっと私を出してくれないかなぁ。
そしたら...きっと..........。
「お姉ちゃ~ん!」
「わぁ!?」
「えっへへ~。ゆいの所もやっとHRおわったんだ~!」
「あ、ゆいちゃん。もう、いきなり飛び付かないでよ。椅子も倒れちゃったでしょ?」
「う...ごめんなさい」
「分かればよろしい」
......うん。この子が私の妹のゆいちゃん。...で、良いんだよね?
同じくこの戦闘部に入ってて、前線で弾幕をはるんだっけ?何?機関銃?う~ん。まだ記憶を全部は把握できてないんだね。
まぁ、コツコツやっていこうかな。
「あ、お姉ちゃん!今日ね、お兄ちゃんの...お参りに行くみたいだよ!」
「え、そうだったの?」
いや、名前知らないよ?
兄がいるの?まだそれは分かってないことだよ~!
「名前...言える?」
「え?あ、ちゃんと言えるようになったんだよ!
......杉原鈴音」
!?...鈴音?いや、まぁ、この世界の、だしね。
鈴音さんが実は亡霊だった、とかだったらもうどうしようもないよ。
.......ただ、今ので少しわかった。こっちの鈴音...お兄ちゃんは、私を庇って死んじゃったんだね。
殺人グループから、私を守って..............。
そして、それをきっかけに。
私はこの戦闘部に入ったんだ。
基本はスナイパーだけど、近接戦のために格闘も少しは出来るみたいだしね。
「うん。合格。ちょっと待ってて。勝くんに伝えてくるから」
ゆいちゃんは、ついてきてないね。
え~と、勝くんは...あ、いたいた。あれは、ショットガン?
「勝くーーー」
ドゴォォン!
「し、勝ーーー」
ドゴォォォン!
「.......勝く~ん!!!」
「うわっ!?え?あ、鈴果?どうしたん?」
やっと気づいてくれた~。音が大きいよ...もうっ。
「部活が終わったら、お兄ちゃんのお墓参りに行かなきゃいけなくて.......」
「あぁ。鈴音さんのか......。...俺も行って良いかね?」
「え?多分、良いと思うけど...」
「じゃあ、よろしくね」
え?なんで?
なんで勝くんも行くの?今まで一回も行ったこと無かったんだよね?
......まぁ、行ってもいいか、ゆいちゃんに聞いてこよう。