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素敵な夢に贈り物を  作者: 月出明人
1章:夢のような現実
7/24

1-4:観察と転移

カクヨムに追い付きそうです。

執筆速度上げたいですが、なかなかうまくはいきませんね。

 昨夜はお楽しみでしたね。なんて展開を期待していた人は残念だったな。美紀(みき)の身にあんなこと(・・・・・)があって、寝言で俺の名前を呼びながら泣いていたんだぜ? こんな状態まで追い詰められて、それでも俺の側にいたいと願う。この信頼を裏切ることなんて俺にはできない。俺はこれからのことを考えるので精一杯だったよ。


 さて、異世界? での生活2日目。美紀(みき)にとっては5日目。俺は早く目が覚めた、というかほとんど眠れなかったが、美紀(みき)が自分で起きるまでは起こさないつもりだ。その間に昨日メモ書きした内容の中で一番不思議な点について俺は考えていた。


 美紀(みき)の背中から生えていた()


 夢のようで夢じゃない現実。この中で俺自身も何かできるんじゃないだろうか。そういう考えに至った。純粋な男子高校生ならば能力(・・)というものに憧れを抱かないはずがないだろう?

 とはいえ、一概に能力(・・)といっても漠然としすぎて、何がトリガーになっているのかもわからないし、眠れない間に『目覚めよ!俺の能力(・・)!』とか言っちゃったことは既に黒歴史へと深く追いやった。恥ずかしくて死ぬ。実際に声に出してうんうん唸っていたのだろう。美紀(みき)が起きてきた。台詞は聞かれてないよね?


「んー。颯汰(そうた)おはよー。」


 くわっと軽く欠伸しながら、眠たそうにその目を擦り、まだ意識がはっきりとしていないのかフラフラしている。その頭にはちょこんと跳ねた寝癖。なんていうかもう可愛すぎて死んだ。何回死んじゃうの俺。まさか不死の能力(・・)! ……ないわ。さっさと俺のイカれた頭をどうにかして今後のことを決めよう。


「おっす美紀(みき)。よく寝れたか?」


「うんー。颯汰(そうた)は眠れた?」


「まあな。んでこれからの事なんだけどさ。っておい寝るな。」


「うんー。」


 さすが朝の弱さに定評のある美紀(みき)さん。こりゃまだ話はできないな。


「とりあえず朝飯食いながら話すとして、昨日はお前が飯作ってくれたし次は俺が作るから、顔でも洗って目覚ましてこいよ。」


「ふぁーい。」


 パタパタと階段を下りていく美紀(みき)を追いかけるように、俺もリビングへと向かった。

 料理。俺にそんなことができるのか? とか思ったことだろう。はっきり言おう、俺はこんな女みたいな外見をしている。男らしくがもっとーの俺に料理なんてスキルは皆無だ。じゃあどうするかって? トーストと牛乳です。ごめんなさい。


 美紀(みき)がリビングに来るころには完全に目が覚めていたようで。俺たちはこれからのことについて話すことにした。


「まずは浩一(こういち)への連絡だな。折り返しがこない時点でなんとなく結果はわかっているが、それでも確かめたい。」


「そうね。その後はどうするの? 外に出てみる?」 


「それについてなんだが、美紀(みき)()あるだろ? それがこの世界での何かしらの能力(・・)だと仮定するとさ。」


「うん。」


 美紀(みき)はトーストを齧りながら頷いている。


「おそらくだが、それは美紀(みき)だけじゃなく、こっち(・・・)にいる人間なら誰にでも起こり得る現象だと思うんだ。」


「まあそうよね。私が作った世界ってわけじゃないし、私だけなんて事の方が確率としては低いんじゃないかな?」


「うん。それでな? こんな手探りの世界じゃこっち(・・・)にいる奴らもみんな警戒しているだろう。一人きりで精神的におかしくなっている奴もいるかもしれない。そんな中で何かしら能力(・・)を持っているとしたら、かなり危険だ。そこを踏まえた上で行動していかないと、俺たちも危ない。」


「……そうね。」


 すまない。俺は心の中で謝った。思い出させたいわけじゃなかったが、俺がいることで安心しきっているのか、()を持っているからなのか、外に出る(・・・・)なんていう発言を迂闊に言ってしまうその油断は早めにどうにかしたかった。


「どんな能力があるかなんて未知数だ。空を飛んでいるから安全という保障もない。かと言って、ずっと引き篭もっていても事態は変わらない。ここまではいいか?」


「うん。じゃあどうしよっか?」


「そう、ここからが大事なところなんだ。」


 美紀(みき)は息を呑んで、次の俺の言葉を待っている。


「俺も能力使いたい!! いや、まて違うぞ? これは単なる欲求じゃない、俺たちには既に一人きりじゃないという事実と美紀(みき)()というアドバンテージを持っているのは確かだ。だが、ここで俺も能力(・・)が使えるに越したことはないわけで。えっと、はい。使ってみたいなーって……思いました……けど。」


 言い訳するように捲くし立てたわりに、尻すぼみに自信も声も失っていく俺って超かっこわりぃ。そんな俺を、美紀(みき)慈愛の瞳(あわれみのめ)で見つめていた。やめて! そんな目で見ないで!


「と、とにかくだ。すぐに行動は起こさないで、能力(・・)について考えていきたいと思う。」


「使えるといいね。かっこいい能力(・・・・・・・)。」


 抉ってきやがった……。ぐぬぅ。


 とりあえず、先に決めていた浩一(こういち)への連絡を済ませようと思い、電話とメールをしてみるが、結果は昨夜と同じだった。

 次に、本日の本題の能力(・・)について話すことにした。


「お前に辛い事を思い出させる事になるかもしれない。先に謝っておくよ。すまない。」


「ううん。気にしないでって言っても無理かもしれないけど、今は颯汰(そうた)がいてくれるから私は大丈夫。」


 当然のようにそんなこと言うのは卑怯だ。危うく惚れそうになるじゃないか。顔が引き攣るのがわかるが、ここはポーカーフェイスでいかねばなるまい。


「お前が能力(・・)を使えるようになった原因について考えたいんだが、そもそも原因というのは正しいとも正しくないとも言える。」


「どういうこと?」


「確かに切っ掛けとなったのはあの事件かもしれないが、もしかしたらこっち(・・・)にきた時点で、お前が飛びたいと思ったら()が生えていたかもしれないってことだ。追い込まれた時に発現して窮地を救う、なんてのはナンセンスだ。ギャンブルが過ぎる。できりゃ窮地に陥る前に能力(・・)が欲しい。まああくまで可能性だし、望んだ能力(・・)が備わるのか既に世界に決められた能力(・・)が何かを切っ掛けで発現するのかもわからないけどな。」


「難しい話ね。具体的にどうするの?」


「そこなんだよなあ。何かヒントみたいなのがあればいいんだが。能力(・・)っていったって、発現能力リストみたいなのがあって、この中のどれかが発現しますとかってゲーム的な展開も攻略本もないわけだし。」


 能力(・・)がどんなものでどんな力が働いているのか。オーラ(・・・)みたいなもんがあるのか? 実際に見てみんとわからんなこりゃ。

 あ……? あるじゃん、実際に。


「そうだ美紀(みき)! お前の()出してみてくれないか。よく見てみたい。」


「ふんふん、なるほど。まずは実際の能力(・・)を見るのが近道かもね。わかったわ。」


 なにやら可愛く頷いていたが、そういって美紀(みき)()を具現化させた。改めて見ると凄い綺麗だな。誘われるように俺の手がその()に伸びていき、そっと撫でたところでそれは起こった。


「アンッ……くすぐったいよ颯汰(そうた)。」


 はい俺死んだ。なんだこのエロスは。なんて声出しやがんだ、そしてなんで感覚まであるんだよ。くそう。


「あ、ああ、すまない。もうちょっと触るぞ?」


 今度は許可を得て、触るんだという意思を通してから触れる。


「優しくしてね?」


「……お前わざと言ってるだろ。」


「うん。」


 躊躇なく言われた。ちくしょーーー!! 弄ばれた!頭を振って煩悩を捨て去り、改めて()に触れる。


「本当の羽みたいにふわふわなんだな。それに背中から生えてるとは聞いていたが、実際には服からちょっと離れた空中から生えてる。」


「あ、そうなんだ? 気付かなかった。」


「まあ本当に背中から生えてたら、いろいろ大変だぞ。服とか破れるし。」


「それは……困るかな。」


 言った直後に想像してしまった。やべえ。俺をどこへ誘うのこの子は。少し咳き込んで誤魔化した後、さらによく観察してみる。


「この()が出てる時、お前自身もなんかオーラみたいなのに包まれるんだな。体が光ってるぞ。」


「うん。なんかね? 薄い膜みたいなものに覆われてる感覚? だから、かなりの速度で飛んでも目を開けていられるって感じかな?」


「なるほどな。そういやお前、俺が電話した時どこにいたの? 物凄い風の音聞こえてたから、それこそかなりの速度で飛んでたんだろ?」


「んーっと。渋谷の駅あたりよ?」


 おいおい、渋谷って……少なく見積もっても5kmくらいはあるんじゃねーのか?そんだけの距離を2分足らずで来たとか恐ろしい速度だな。

 それにしても渋谷……か。そういや浩一(こういち)と来週渋谷行こうって話ししてたな。行けなくなっちまったけど。そんなことを思い出している時だった。


 急に視界が暗転して、次の瞬間俺は外にいた。


「あ……?」


 意味もわからず辺りを見回して気付いた。ここは……


「は? 渋谷駅……? 嘘だろ?」



俺はまだパジャマのままだった。

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