プロローグ 知らない世界
私は河凪 美織。卒業間近に控えた、しがない女子高生である。
「ユリィ、目が覚めたのね!」
「なかなか起きないから心配したんだぞ、怪我はないか?」
何故か、目を覚ましたら、見知らぬ若い女性と男性が心配そうに私の顔を覗きこんでいた。
……待って、あなた達、誰?
心なしか後頭部がとても痛い。
ついさっきまで、自動販売機で買ったお茶を湯たんぽ代わりに歩道橋の階段を歩いていた筈だ。雨が降っていて寒かったので、お茶のぬくもりが心地よかったのだが、今は手元に無い。
「驚いたのよ、ユリィ。階段を踏み外して、そのまま目を覚まさないのだもの」
優しそうな面立ちの女性がほっ、と安心したように息を吐いた。
この女性によると、先程ユリィという人が、歌いながら踊って階段を踏み外し、意識を失ったらしい。え、何、その人、馬鹿?
心の中でツッコミを入れてしまった。階段の前で歌って踊っていたのだろう。そんな所で踊っていたら、落ちるのは当たり前だろう。
だが、少しおかしい。この人達は、それをユリィに言うべきだ。
「あの……」
だって私は、
「ユリィ、って誰ですか?」
ユリィじゃない。
小説家になろうに多く投稿されている転生ものを書いてみたかったんですが、上手くいきませんでした。というか、これ、転生ものじゃないし。