運命の邂逅 -DESTINY ENCOUNTERING- PART.α
「…やられた」僕は重々しく呟いた。
美術係との戦闘を避けて逃げて来てみたら、何か違う座標に飛ばされてしまった。…どうやら奴にやられたようだ。そう考えると、あまりここには長居してられなさそうだ。
「よし、行こう」僕は、歩き始めた。
※※※※※
……何故まだ歩いてるのかって?はは、しらねーよ。
ワープの魔法自体に探知の魔法がかけられているのでワープが使えず、こうして歩いている訳だが。
「神様、ちょーっと辛いかなあ…」
つい先日までニートしていた僕が、突然こんなに体を酷使したら、そりゃ悲鳴を上げるに決まってる。もう脚がパンパンだ。
かれこれ半日位歩いているが、一向に街はは見えない。勘弁してくれよ…
ぐうう~
「お腹減るとかやめてくださいよ~ぅ」
あの世界に帰りたい。だってお腹減らないし。
そして、ついに限界を迎えた僕は、糸が切れたように、その場に倒れこんだ。
※※※※※
「…なんだって。姉さん?聞いてる!?」
「聞いてる聞いてる~つまりあれでしょ?きゅうりはキノコの仲間っていう…」
「姉さんは何を聞いてたんだ!?胡瓜だよ?瓜じゃん!!瓜ってご丁寧に使ってるじゃん!?」
「いや、これは私の異能を発端とした国家の陰謀…」
「厨二乙!!」
…騒がしい。とっっっっっっても、騒がしい。僕は薄目を開け-
「あっ!気が付いた~?」
-静かに閉じた。
「え!?ええ!?何で閉じた!?待って!?え!?大丈夫!?」
…超うっせぇ…
「…君、すぐそこの野原で倒れてたけど…何かあったの?」若い女性-19歳くらいだろうか-が僕に問う。
「お腹…減った…」僕は正直に答える。
「そっか~じゃあ…」女性は持っていたカゴをガサゴソして、
「はいっ、これ!」バゲットを、丸ごと手渡してきた。
「姉さん!!それじゃデカ過ぎて食えないよ!?まったく…あ、貸して」同じく19歳くらいの男性-女性とよく似ている…双子かな…-が丁寧にバゲットを切り分け、その上にハムとチーズを載せてくれた。
「「さあ、召し上がれ?」」息ピッタリだ。やっぱり双子のようだ。
僕はお言葉に甘えてバゲット1本丸ごと頂き、しっかり手を合わせた。
「ご馳走様でした」
「お粗末様でした~」そう言って彼女は、にっこり笑った。
※※※※※
「私はスウィート•ウィンド。ピッチピチの19歳で~す!よろしく~」
「俺はピークァント•ウィンドだ。18歳だ。よろしくな」
「ん。よろしく」僕はちゃんとあいさつした。
「お前、名前は?」
「?」
「名前だよ、な•ま•え!」
ヤバい、考えてない。どうしよ…
僕はしばらく考えこんで、こう名乗った。
「ロンネ、かな」
「かなって…」流石にバレた。ちっ。
「僕さっきまで名前なかったんだ」
「…そうか、仕方ないな」妙に早く引き下がるピークァント。…?
「ねぇ、ピークァント」
「…ん?ああ、俺か。クァンでいいぞ」
どんな愛称だ。
「私もスウィ、でいいよ~!」
お前もか。
ここの人々の愛称のセンスに危機感を覚えつつ、僕はクァンに訊く。
「じゃあ、クァン」
「おう」
「あなた達が僕を見つけてからのことを話して」
「…うむ。いいだろう」
そしてクァンは、僕に話し出した。
βに続く…
あとがき
多分二部構成になると思います。これからも一つの区切りで長引きそうな時は、「α、β、γ、Ω」の最高4部構成で書きますよ。
そして、新キャラ、ピークァント•ウィンドとスウィート•ウィンド。このウィンド姉弟も、今後ちゃーんと本編に絡んでくると思いますー、ではでは~