地上の草原にて -FROM GRASSLANDS-
-性別、女。
-年齢、15。
-魔力、全てを制限。
-……………!……?………FINISH.
-GOOD LUCK. ※※※※※
「……………ん……?」
僕は目を覚ました。…地平線の向こう側まで広がる、草原の上で。
漫画なんかで見られるような、本っ当に何もない、草原に、僕は倒れていた。
僕は起き上がって、ここがどこなのか、魔法で調べようとする。しかし。
「…あれ?」
発動、しなかった。え?
僕は自分の胸に触れて、魔力を確認してみる。
……反応が、なかった。どうやら無くなったか、制限されているようだ。
だが、しかし、だ。
「…神様舐めんな」
…っぽんっ!
マヌケな音と共に、僕の魔力の制限はある程度解かれた。当然だ。僕が世界のヒエラルキーのトップなのだから。きっと今頃あの耳障りな声の主はアホ面を晒していることだろう。ざまあみろ。
そして僕は改めて、ここがどこなのか調べてみる。…しかし、「NOT FOUND」と表示され、出てこない。…つまり、ここは、
「少なくとも僕じゃない、別の誰かが作った世界、か」
僕は一人合点した。
次に僕は、鏡を呼び出した。指を鳴らすと、パッと鏡が出てくる。
その鏡に映っていたのは、絶世の美少女だった。
僕には元々性別の概念は無かった。この世界に来るにあたって付与されたんだろう。
長く伸びた焦げ茶色の髪に、整った顔立ち、小さめな顔。純白のワンピースから伸びる白い腕。そして、スカートの中からすらりと伸びるきれいな脚。絵に描いたような美少女っぷりだった。
ふと足下にくすぐったさを感じて目線を落とすと、靴を履いていないことに気づいた。ついでに、パンツも穿いていないようだ。僕は魔法でサンダルとパンツ(黄色と白のストライプ)を出して、身につけた。
「うーん…」声も随分と可愛くなっていたが、それはさておき、だ。
「…誰も、いないなあ…」
切実だった。
空はこんなにも青く澄み渡っているのに。大地はこんなにも豊かなのに。
人が、一人も、いない。僕は泣きたくなった。
僕は透視して人を探そうとするが…世界の規模が大きすぎて、全てが見えない。
僕が今の力で透視できるのは半径5000km程の範囲だが、その中に、人どころか、生体反応すらないのだ。これは、異常だ。
「そうだね、異常だねえ」
突然背後で上がった声にビクっとして-いつからいた…?-僕は振り返る。するとそこには、異形の人がいた。…いや、積み木だ。
積み木が喋ったのだ。いきなり。
「…誰だ?」僕が目を細めて問うと、積み木は、
「オレ?オレはねぇ…」と言って、目を閉じた。すると、積み木の輪郭が、だんだん細かく、人の形により近づいている。
そして、積み木はやがて、軽薄そうな男の形になり、こう言った。
「…美術係ってとこかなあ」
美術係。クリエイター。くりえいたー。それは、清書と下書きの能力者。「確定する」ことと「想起する」ことは1つのプロセスだという前提で生まれた異能だ。
僕は彼に魔力の玉を放つ。当たったらその肉体は、あまりの熱量に灰に帰すことだろう、当たったら、だが。
「-バラせ」
そう彼が呟いた瞬間。
魔力弾は積み木になって崩れ落ちた。
チッ、と、容姿に似合わない舌打ちをして睨み付ける僕に、彼は余裕の視線で応じる。
「君は僕には勝てないよ?」
彼は魔法を展開する。あれは僕を捕まえる魔法だ。しかし僕は、
「捕まえられるかなあ?」余裕でおどけてみせた。
僕もまた魔法を展開する。ここから脱出する魔法だ。もう発動できる。
「はっ、逃がす訳…」彼は当然、魔法をキャンセルしようとする。しかし。
「-な!?」彼は、愕然とした。
「神様、舐めないでくれる?」能力を、無効化した。
「馬鹿な…多少力を取り戻しているのは分かっていたが、総魔力10分の1程だぞ…!?それだけで、これほどの…」
「できちゃうんだなあ、これが」
僕は彼を見下し、言い放つ。
「だって、僕神様だから」
その一言を残し、僕はその場から消えた。
※※※※※
彼、美術係は、呆然としながらも、直後に入った通信に応答した。
「…はい、こちら美術-」
「神を逃がすとは何事だボケナスビが!」
美術係は顔を思いっきりしかめて、
「ボリューム下げろうっせえなあ」と言った。
そして彼は続けて、
「ワープ先をいじった。誰か来い」
彼は、静かに舌打ちをした。
あとがき
まさか字数制限に引っかかるとは思ってなかった。気をつけよう。
次回は神様が街に(指定した座標とは違うけど)行く話です。…何かすげぇバッサリしてんな…あ、キャラが増えますよ~
ではでは~