03 イベントの祝辞式辞の多さと長さは無駄にある
副題はその時のノリて決めてるので内容は伴ってないです。
この学校には特別構成クラス、と呼ばれるものが存在する。
所謂外部生クラスのことで、外部生が新しく入ってくる中一、高一のみに存在しているのは学校側が生徒を差別をしていると思われないためだ。ならどうして一年から同じにしないのかという疑問も確かに多い。しかし、学園は余計な軋轢を避けるには最低限の区別は必要だと判断し、このクラスはその為の予防線なのである。
上流階級には一般家庭出身の生徒を悪い言い方をすれば―――、見下している者も少なくない。更に言えば、外部生の中には上流階級の者に反感を持っている者も居る。一年からその者達を一緒にしてしまえば…ほぼ確実に、摩擦が怒る。そして最終的に優位に立つのはバックがある上流階級の方だ。そして外部生が退学してしまうケースが多い。
この学校は―――、こと高等部に於いては、一流高校と言われるだけあって金があるだけでは入学できないし、外部から来るものなら尚更人より秀でる程度では入れない。頭一つは当たり前、三つ四つ飛び抜け無いと入れないような学校である。一般家庭の者なら払えない授業料でもあるので、奨学金を貰おうと思えば才能があるどころではないかも知れない。
その難関を超えてきた一般家庭出身の外部生…その将来性は抜群だろう。学園としてもそんな逸材を失いたくはない。
そんな訳で、一年の間だけ”そういう”上流階級の生徒と外部生を分けているのだ。
もちろん、完全に分離してしまっては二年からまた同じことが起こってしまうこともある。そこで、”そういう”考え方を持たない上流階級の子女、子息を数名特別構成クラスに在籍させ、外部生にこの学校でのマナーを学んで貰うとともに上流階級への偏見を軽くするのだ。
これは重要な仕事であるが、内部生はこのことを知らない場合が多い。
というのも、一部の上流家庭の生徒が「外部生を贔屓している」と騒ぎ立てることを危惧しているために、クラスに入ることになる内部生にしか伝えられないし、彼等も軋轢を避けるためにそのようなことを吹聴することをしないからである。
そして、表向きの理由として「学習過程を揃える為」とした。
この特別構成クラスに選ばれた内部生は学園に実力を認められたと思われる。良くも悪くも外部生というものは必ず才能を持っているし、その事実は生徒にも認められている。そのため、学習環境が今までと変わったとしても付いて行けるだけの実力がないとやっていけないということも理由の一つにある。
また、そもそも選ばれる基準に「ある一定のラインより上の家柄」というものが存在する。
この二つが抑制力となり、配属されたものごと嫌がらせを受けるという危険がかなり薄くなるのだ。
………で。
私が何が言いたいかというと、だ。
多分、今私は物凄く、怒っている?苛ついている?…まあ、そんな感じの顔をしているのだろう。例えば般若のような。
目の見える範囲に風音ちゃんが居るのであまり顔には出したくないのだが、これは聞いていたよりも酷い。
コイツが新入生代表なのはまだ良いとしよう。中等部時代に生徒会長を務めていた者の義務だから。
現高等部生徒会長が外部生をあからさまではないにせよ見下した表情をしているのも許そう。外部生は投票で確実に負けるから生徒会に入れないし、余計な摩擦を嫌う革新派の子息・令嬢がその役を避ける気持ちも分かるから必然と言えば必然だ。
だが、…そう、「だが」、だ。
お前が外部生を見下せる立場に立っていると思うな。お前も新入生という対等な立場だと言うことを理解しろ。新入生は各々の道のスペシャリストだ。テメェが見下せる相手じゃねぇんだよ。失せろ。
…おっと、つい乱暴なことを考えてしまった。あいつも恐らくドン引きしているような青筋が立っているような笑顔だろう。
「新入生を代表して、ひとこと、ご挨拶を申し上げます。
本日は私たち新入生のために、このように盛大な入学式を挙行して頂き、厚く御礼申し上げます」
途中までは良かった。ああ、コイツもこんな風に立てば堂々たる風格を持ち合わせるのだと感心さえしたのに。
しかし―――。
「華季学園中等部より進学してきた気心知れる友と共に、より一層日々の活動に励みたいと思っています」
外部生を省いたこの宣誓。
「また、高等部より共に学ぶこととなった仲間にこの学園での在り方を教え、」
どう考えても外部生が自分たちより下と思っている発言。
この学園での在り方、だ?それは各々が判断し決めていくことだろう。
ちらりと風音ちゃんのほうを確認すると、意味が分からないのか不快なのか、眉を顰めている。おいおいおい、しっかりしろよ。風音ちゃんの態度はまだマシな方で、見渡してみると露骨に顔をしかめるクラスメイトや、特Bの生徒が見える。…ああ、前途多難だ。
まだ良かったといえるのはあの偉ぶった奴の顔が整っていたこと。そのお陰で一部の女子はそこまで嫌悪感を抱いていない様子だ。ただ、あくまでそこまでで少なくとも快く思っていないことは確かだが。
私は半端者なので都合がいいらしく、調整役の一員として先生方に頼まれてしまった。
なのに、なんでこんなややこしくなることするかなぁ…。後でアイツ〆よう。八つ当たりというなかれ。当然の処置と言って欲しいくらいだ。
在校生代表よりも酷いってどういうことだ。
…まあ、放っておこう。サロンに行くことはあるかもしれないが、今は盛大に嫌悪感を示しておけばいい。
主にツッコミどころが新入生代表の宣誓のみだったのでとても退屈だった入学式も終わりを告げ、教室へと戻る段階へとなった。
そしてここでも違和感が。
「(どうして特別構成クラスが一番出入口に近いのに出るのが最後なんだ?)」
そんな風に内心不満を抱いて、…って。
「(はぁ!?先輩たちも先に出んの!?)」
馬鹿じゃねえの!?この学校はそこまで堕ちたのか…!?
一種の失望感を感じながら全員が出るのを待っていた。偶にちらりと優越に満ちた目をこちらに向けてくる生徒が居るのが本当に残念だった。
―――夏川或夜があんな態度を取るだけでこんなにも影響が出る。そのことを本人は理解しているのだろうか。いや、分かってはいるのだろう。だが、影響が及んだその後を考えていないのかもしれない。学園が堕ちれば今の地位を失うという、当然のことさえ。
そんな風に考えていると、ステージに理事長が立っていた。そして驚くべきことが起きたのだ。
「―――特別構成クラスの生徒の皆様、華季学園の生徒が申し訳ありません」
そう言って、頭を下げたのだ。
当然、生徒達にはどよめきが起きる。
その中前に立つ紳士はとある説明を始めたのだ。
「恐らく君達の多くは、特別構成クラスは【外部生の庶民と内部生の上流階級を差別するためにあるもの】と思われていると思います」
これからその理由を説明したいと思います―――、と。
理事長は、そう言ったのだった。
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