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始まり
始まりは闇の中
聖なる夜にその命は生まれた
生誕と共に狂気は溢れ終焉の鐘は鳴った
世界はどこまでも残酷であると思い知った
「泣かないで、お兄ちゃんが絶対助けてあげるから。」
狂気が渦巻く赤い海の中で純白の少年は、生まれたばかりの無垢な妹に呟いた。
美しく優しい世界がそこには確かに存在していた。
慈しむ無償の愛は深々と降り積もる雪のように。
哀しみの涙は潸潸と流れる雨のように。
守るように小さな腕で抱きしめた。
そして、優しい闇はすぐそばで平伏すのだった。