グロリゲスの出張飯~島根の豚カツ~
読み終わった後に
次に諸君は
「トンカツ食べたい」
と言う。
諸君らは豚カツという食べ物を知っているだろうか。
豚肉にパン粉などの衣をつけて油で揚げた料理で、夕飯で出てくるとテンションが上がってしまう料理だ。定食などでもある程度の地位を築いている。高カロリーで太った男性が食べていると、「共食いwww」などと馬鹿にされるあれだ。
私はあれが大好きだ。
メインのトンカツも好きだし、付け合せのキャベツも、ちょっと付けるだけで素晴らしいアクセントになるからしも、絞ってあっさりおいしくいただけるレモンも含めて大好きだ。
そんないろんなところで出てくる豚カツだが、数年前まで
「豚カツはどこの食べてもある程度いっしょじゃん?」
「良い所、衣のサクサク感の違いだろ?」
「分厚けりゃ美味いでいいじゃん」
と浅はかな考えだった。
そんな考えを根底から覆された一軒の店いや、1品に出会った。
あれは私が島根県の某所に営業に行った時だった。
朝から上司と車で走り2件のお客様を回った後だったので到着したのはお昼頃だった。
上司は何時もここに来る時はお昼を食べてからくるケースが多かったらしいのでその周辺では殆ど食事をすることが無かったらしい。
2人で食事をするところを探していると、1つの看板が目に飛び込んできた。
「旨いとんかつ」
正直、上司とふたりで鼻で笑ってしまった。
「自分で言うか?」
「それだけ自信があるんですかね」
上司も豚カツ、というよりは揚げ物が大好きな人だ。年齢も40代後半とあって、かなり色んなものを食べており舌は肥えている。私も、揚げ物好きとしては見逃せなかった。
というより、そこ以外食事処が見当たらず、このままいくとコンビニ飯で終わってしまう。
そんな焦りも多少あって、その店に入った。
見せには昼にも関わらず、あまり人がいなかった。
店の雰囲気は和風で落ち着いた感じ。悪い印象は少しだけ暗い所だろうか。
内心、昼の稼ぎ時にこの人数はちょっと失敗したかな?と思うが、今更出るわけにもいかず、ランチを頼んだ。
ヒレカツとロースカツのダブル定食が900円に近い値段と地方にしては少し、高い印象を受けた。
(まぁ、豚カツって意外と高いし、ヒレとロースだから仕方がないか)
そう内心で自分を納得させ、上司と仕事の話をしつつ料理を待った。
「お待たせしました」
おばちゃん店員が2つの定食を運んできた。
多めのキャベツ、メインのヒレカツとロースかつ、からし、ゴマの入った小さいすり鉢、ご飯と、味噌汁。
普通の豚カツ定食にヒレカツが付いた印象を受けるだけのシンプルなものだ。
ソースは辛い、甘いの2種類がテーブルの上の小さな瓶に入っている。
私は2種類を2対1でブレンドしてみた。ゴマは原型がとどめないほどすりつぶす。上司に
「ゴマはすりつぶさない方が良いぞ?」
と言われたが、それは好みです。それにこっちの方がゴマの香りが引き立つような気がする。まぁ、ソースに入れると意味ないのだが、挽いているときの香りが良い。
まずはキャベツから。ドレッシングが意外とおいしい。さっぱりとした中に程よい酸味が聞いている。ぜひ一本買って帰りたかったが出張初日でお土産を買うのはいささか気が引けた。
上司は先に豚カツからか。キャベツは先に食べた方が、良いのに。
ふとその顔を見ると何故か笑っている。なぜ?
いざメインの豚カツへ。少しのソースだけをつけ、口に運ぶ。
噛んだ瞬間、私の豚カツに対する価値観がひっくり返された。
衣はサクいや、シャクッといった感じ。揚げ過ぎて固い訳でも油でギトギトしてじっとりともしていない。サクサク、シャクシャクとした衣は、今までに出会ったことが無かったと言っても過言ではない。
しかし衣もさることながら私の価値観を変えたのは豚の方である。
厚みは1センチkら2センチの間位。かなり分厚い方だろう。しかしその肉厚からは想像できないほど肉が柔らかい。そして噛んだ瞬間から溢れる肉汁は濃厚な味わいでありながら決して脂ぎっている訳ではない。さらさらとした、肉のうまみが詰まっている。
上司が笑っていた理由がわかった。
笑ってしまうほどうまいのだ。
私はこれほどの豚カツに出会ったことはなかった。
「なんだ、これ」
言葉に出てしまうほど不思議だった。
これが、豚カツだというのなら今まで私が食べてきた物はそれに似た何かだったのか。
否。今まで食べてきたのが豚カツで、今食べているのが豚カツを超えた何かである。
私はそうとすら思えてきた。
からしもそのうまさを引き立てる。ご飯が進む。
日本海側ならではの魚介出汁の味噌汁も素晴らしい。
「思わず笑ってしまうほどうまい豚カツ屋」
自称wwwとか言ってごめんなさい。
今では年2回行くか行かないかの島根県に行くときの最大の楽しみである。これだから出張はやめられない。
もし、島根に行くことがあればこの店を探してほしい。あなたの価値観を覆せるかもしれない。
読者「トンカツ食べたい。ハッ!」
ってなったら私の勝ちです。