チャットルーム
五人の大学生が、ビデオチャットをしていました。
知っての通りビデオチャットとは、遠く離れた友達とリアルタイムでメッセージを交換、ビデオを通じて会話出来る機能の事です。
「なぁ、明日提出のレポート、見せてくんない?」
「またかよ……何回目だと思ってるんだ」
「今月入ってもう三回だな」
「笑い事じゃないよ、全く……」
「まあいいじゃない、出来てるんでしょ」
「そうだけどさ……」
「あ、じゃあうちも頼むわ。あんたのレポート、見やすーて評価も高いからなぁ」
「お前もかよ!」
「こらこら、自分でしないと意味ないですよ」
「いやん、けちー」
「こいつの言う通りだって……ほら、自分でやれよ」
「ぶーぶー!」
「うちらを見捨てるんか!?」
「見捨ててなんかないけど……」
「彼も必死にレポートを仕上げたのです。君達もちゃんと努力しなさい」
「あかん、真面目君にはかなわへんわ」
「ぶー、けちー」
毎日毎日、たわいもない会話を続けていました。
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「なぁ、あのニュースみた?」
「ニュース?」
「あぁみたみた、事故死でしょ」
「怖いなぁ……転落死やったんやろ」
「恐ろしいですね……前方不注意で……」
「ちょっとみんな……なんの話をしているの?」
「ん?お前、しらないの?」
「今テレビでやってるで。見てみたら?」
そう言われ、彼はテレビを付けました。
砂嵐が少し流れたので、チャンネルを回していると、そのニュースが流れました。
「今日、山道で交通事故がありました。被害者は大学生で、サークル活動の一貫としてドライブに行き、その途中でガードレールに追突、そのまま崖下へ落ちてしまいました。被害者は五名で、四名が死亡、一名が意識不明の状態です」
そして画面には四名の死亡者と、一名の意識不明者の名前が表示されました。
「……えっ?」
彼は目を疑いました。
それもそのはず……
四名の死亡者は先程までチャットをしていた友達の名前、そして意識不明者は自分の名前が表示されていたのですから。
「……どういう……事だ……」
彼は混乱して、すぐパソコンを見ました。
すると……
「君も死ねばよかったのに」
「君も死ねばよかったのに」
「君も死ねばよかったのに」
「君も死ねばよかったのに」
「君も死ねばよかったのに」
画面にそう何度も書かれていました。
「う……うわぁぁぁ!」
彼は錯乱しました。
文字は続けてながれていきます。
「やめ……」
彼は恐ろしくなって、パソコンを閉じました。
そして早く寝ようと、ベッドに向かいました。
しかし、部屋の様子をよく見てみると……
「……死ねばよかったのに」
「……死ねばよかったのに」
「……死ねばよかったのに」
「……死ねばよかったのに」
部屋の中に、先程までチャットで喋っていた友達がこちらを向いてそう呟くのです。
「あっ……あ……」
「……君もこっちへおいで」
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「ニュースをお伝えします。昨日、交通事故にあった五名の大学生の意識不明だった一名が、今日息を引き取りました。次のニュースです……」