第二話 獣
グロテスクな表現も含まれています。
獣の咆哮がなると同時に、秀は雪とミカに此処にいるように合図を送った。
雪たちは分かったとコクリッと頷く。
それを確認して秀は洞窟から外へ出た。
外はもう真っ暗で、ほとんど何も見えない。
森の夜は予想以上に不気味で、闇に敏感になる。
秀は肌寒いなか、小枝の散らばる道を進む。
足場は悪いが、来た道よりは歩きやすかった。
しばらくすると、また獣の咆哮が鳴り響いた。
その声にビクリとしながら秀は進んだ。
すると前方に黒い影があるのを見つけた。
秀は恐怖と期待で走り出した。
小石が邪魔をして、何度も転びそうになったが、秀は止まらなかった。
―人間かもしれない、逃げる方法を知っているかも
もはや恐怖など忘れて期待が胸を埋めつくした。
しかし、その理想はガラスのごとく砕け散った。
その黒い影は人ではなかった。
クロコダイルのように爬虫類を思わせる、うろこのついた肌。
顔の方は四つに割れていて、小さい牙みたいのがびっしりとついている。
その口(?)の中には血がびっしりとこべりついていた。
爪の生えた手足にも、血がついている。
秀は恐る恐る近づくと人間の残骸が散らばっている。
体のどの部分とも分からぬ臓器みたいなのが回りに飛び散っている。
怪物は、ほとんど原型をとどめていない体から首から上のものをもぎ取る。
そして、ぐちゃと軽い音をたてて怪物はそれを食べ始めた。
秀は恐くなり一歩引いた。そのとき
パキッ
足元で聞き覚えのある音がした。
小枝を踏んでいた。
秀はさっと怪物の方を見上げる。
でも、そこには怪物はいなかった。
跡形もなく消えていた。
もういなくなったのだろうと秀は一安心した。
急いで雪たちのもとに逃げようと振り返ったとき目の前をさえぎるものがあった。
秀は顔をあげる。
目の前に、大きく広げられた血のしたたる怪物の口があった。
秀は絶望した。