第一話 探索
歩き出したはいいが、いったいどこに行って、何をすればよいかまったくわからない。
取りあえず、小学生のミカのペースにあわせて丘を下ることにした。
森の中には、もちろん整備された道はなく、獣道をくだっていった。
獣道というんだから、そのには大小さまざまの動物の足跡が刻まれていた。
そこには、見たことのない、というか、絶対にありえない形をした足跡まである。
疑問に思ったが道を進んでいくうちに頭からすっかり抜けていった。
それもそのはず、ごつごつした石や腐葉土などで足場が悪い。
だから小学生のミカに手を差し伸べながらも、一つしたの女―雪にも男の秀手を貸さなければならなかったからだ。
そんなこんなで、どれくらい時間がたっただろうか。
忌々しい思い出残る塔がだいぶ遠くに見える。
あの塔には、思い出も、疑惑もごまんとある。なぜ記憶がほとんどないのか?なぜあそこに居たのか?目的はなにか?
そんなことを思いながら歩いていくと見慣れた足跡があった。
雪やミカは気づいてないようだが、そこにはクッキリと水を含んだ土に痕跡を残していた。間違えなく靴の跡だ。
秀達が来る前に、此処に足跡があるということはこの島に人がいるのかもしれない。
そう思うと秀の心が震えた。
「おい、雪、こっち来てみろ。これはとんだ大発見だぞ」
トボトボと歩いた雪が、足を止めて、ミカの手を握って走ってきた。
「なに?どうでもいいことだたら怒るわよ!」
そういって少しふくれっつらをした。険しい道で疲れてるのだろう。
「ほら、これ見てみろ、人の足跡だ。」
「ん?そうだね。だから?」
「だからじゃないだろ!俺達以外にも人が居るかも知れないってことだよ」
雪は目を見開いて、右手をグーにして手を打った。
隣のミカも状況がよめたのか、少し嬉しそうに見える。
まだ、生き残れるチャンスがあるかもしれない、この閉ざされた島から。
足跡を追っていくのは簡単ではなかった。
この入り組んだ山だ、足跡が消えたり、だいぶ離れたところで見つかったりと、映画の狩人みたいにうまくは行かなかった。
それにもう太陽が沈みかけている、このペースでは人が居るところまでたどりつけないかも知れない。そんな焦りと不安が心の中で渦巻く。
「キャッ」
突然後ろの方でミカが倒れた。
どうやら、木の根っこに足を取られたようだ。
「大丈夫か?」
秀は慌ててミカの傍による。
不幸中の幸い、かすり傷程度でたいしたことはなかった。
でも、流石にこれ以上探索を続けるのは難しい、そこで秀に一つのアイデアが浮かんだ。
「今日はこれ以上は無理だ。さっき向こうの方に洞窟見たいのを見つけた。そこで今日は休もう。」
雪とミカは二つ返事で賛成し、洞窟に向かうことにした。
だいぶ戻っていくと、木がだいぶ入り組んでいる所にでた。
「ね〜、洞窟なんてないじゃん、もう歩けないよ〜」
雪が不満そうにしゃがみこんでしまった。
「なに言ってんだよ。この木々の間のとこ、洞窟になってるだろ。」
崖に木々が生い茂っていてよくわからないが、よく見ると空洞になっているのがわかる。
たしかに洞窟見たいのがある。と、いっても崖にあながあいたようになっているだけ、何かあればすぐに崩れそうだ。
取りあえず中に入ってみると、以外にも広くなっていて自然にできたものとは思えなかった。
「本当だ、洞窟みたいになってる」
雪は少し関心したように秀を褒め称えた。
「でも、よくわかったね」
「ん〜、観察力がいいのかな。なんか洞窟って感じがしたんだよね。」
秀がそういうと、雪はよくわからないといった表情で奥に向かった。
「すご〜い、だいぶ奥まで続いてるよ」
雪が洞窟の前にいたときとは違い、子供のような活発な声になった。
「あまり奥まで行かないほうがいいぞ、熊の洞窟かもしれない」
一瞬、雪の肩がビッとゆれてこっちに戻ってきた。
「ハハハハハ、ミカちゃん、あんまり奥にいっちゃダメだよ」
そういってごまかした。
とりあえずは今日は此処で寝るしかない。
そんなことを思ったとき、外で獣のような咆哮が響いた。