終章
船は順調に陸へ向かっていた。
秀たちは甲板に出て風を感じている。
「ねぇ、秀くん?」
芹澤が少し遠慮してきく。
「なんですか?」
「記憶はもだったんですよね?」
「そうですけど。」
「じゃあ一つ聞きたいことがあるんです。」
「なんですか?」
「実験に使われた少女ってひょっとして・・・・・・・・・・・・・・・・」
最後のほうは口には出さなかった。
「そうですよ。ミカです。もう少し大人になったらしっかり説明しますよ。そのころには直す方法も分かってるかも知れませんし。」
そういって少し笑った。
「それともう一つ」
芹澤は照れくさそうに顔を赤くして言う。
「雪さんとはどういう関係だったんですか?」
「ん!婚約者だよ。昔っからのね。」
秀は照れもせずひょうひょうと口にする。
「え、あ、あの・・・・ごめんなさい。」
「なんで誤るんですか?」
「だって雪さん・・・・・・・・・・」
「いいんですよ。これは全部事故だった。一人の男が巻き起こした事故。」
そういって秀は遠くのほうを見つめた。
しばらくして陸に着くと秀たちは軍に看護された。
雪も軍の病院で手当を受けたがもう手遅れだった。
秀たちは少し、普通な毎日にとけこめなくて、違和感のなか毎日を過ごした。
この事件は当然、報道されることはなく闇に消えた。
でも、ミカの姿は帰ってから一度も見た人はいない。
それが不幸の予兆なのかは分からないが、今は確かに平和だ。
この事件を知っている軍の人はみんなこういっていた。
一人の男の悲しみが、不幸な事故をまねいたって。
人間の感情は消えることがない、欲望、憎悪、悲しみ。この世は永遠の感情の輪廻から解き放たれることはない。
これでクロックタワーシリーズは終わりです。
今まで読んでいただきありがとうございます。