最終話 脱出
扉のほうには見慣れた人影が立っていた。
少し小さい、まだ若い女性。
「芹澤さん!」
秀はあまりの意外性に驚いた。
しかし、芹澤は何も答えず、倒れた一条のところへ向かう。
「全部聞きました。貴方のせいでみんなが、先輩が・・・・・・・・・・・・・・」
さっきは暗くてよく見えなかったが、芹澤は全身、血をあびて真っ赤になっていた。
「やめるんだ、芹澤さん!」
一瞬、芹澤は秀の声で銃を握る手を緩めた。
その瞬間、一条は走り出し、近くにあった機械のボタンを押す。
「もう終わりだ。今ARISUの爆破スイッチをおした。クロックタワーの十二時の鐘が鳴り終わると同時に、この島ごと破壊する。もう終わりだ〜」
そういって一条は置いてあった銃を拾い上げ、自ら命を絶った。
部屋に静かな沈黙が流れる。
秀はふと気づいたように雪のところに向かい肩を抱き寄せる。
「雪、大丈夫か?しっかりしろ」
しかし、返事はなかった。
「ちょっと私に見せて。」
芹澤がテキパキと生命確認をする。
「大丈夫、まだ生きてはいる。でも出血がひどいは、この分じゃあまり持たない。とりあえず船に運びましょう。」
秀たちは雪を一つの部屋に寝かせ、ミカに見守るようにいった。
一刻も早くここを抜け出さなくては。
十二時まであと五分、船の操作なんて分からない。それにめの前には大きな門がある。
「芹澤さん、船を動かせるようにしていてください。俺は門を開けてくるので。」
「ちょっと、どうやって開けるか分かるの?」
「大丈夫です。記憶が戻りましたから。」
芹澤の目が明るくなった、きっとはしゃいで喜ぼうとしたのだろう。でも、それを必死におさえ船を動かす手掛かりを探しにいった。
秀はいったん船を出ると一条が死んでいるところへ向かった。
ここはARISUを操作できる場所。当然、門を開けるのもARISUを使わなくてはいけない。
でも、どうやって?ARISUは暴走している。
とめるには一条だけが知っている十ニ桁の愛称番号を入れなくてはならない。
秀は必死で過去の記憶をたどる。
ARISU、確か一条が作った機械だと聞いている。ARISUとは子供の名前だとか、あらば番号もARISUにちなんでるのでは?
特に思い当たる節がない、とりあえず十進法じゃ絶対数が足りないので十進方を二進法にかえてはじめを行、次はその行の何番目の数字かに書き換えて、ARISUを代入する。
『1、1、1001、10、11、11』
ちょうど十二個。早速秀は入力した。
しかし扉は開かない。それどころかこの部屋の扉が死体に壊され、死体がながされるように入ってきた。
もう時間はない、一、二分といったところだろうか。
秀はしょうがなく船に戻った。
「扉のほうは?」
芹澤が不安のそうに聞いてくる。
「すまない、駄目だった。もう、終わりだ・・・・」
そういって秀はへ垂れ込んでしまった。
「そ、そんな、せっかくこの無敵の戦艦を動かせたのに・・・」
しばらく沈黙が続く。
それで大きな鐘の音が鳴った。それと同時に秀はひらめいた。
「これの船は戦艦なんだよね。そうだ、強行突破しよう。」
秀は立ち上がる、それと同時に二回目の鐘。
すぐさま操作室に向かう。
行くまでに三回、四回目の鐘がなる。
記憶の戻った秀はもはや無敵だった。ありえないスピードで操作を始める。
五回、六回目の鐘。
「よしっ、あとは充電をまつだけ。」
最新型につくりあげた大和の大砲は、いまやレーザー砲にまで進化していた。
七回目
八回目
九回目
エネルギーはやっと半分に足したところことだろうか。
――間に合ってくれ
秀たちはこころから思う
十回目
十一回目
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十二回目
最後の鐘がなると同時に島はモクモクと煙を上げ爆発した。
いろいろなものが飛び交う。
そんな中、小さな谷の割れ目から一隻の船が出てきた。
これで悪魔は終わったのだ。
人の屍を踏みつけて生きるような地獄から脱出した。