第十五話 銃声
秀は目の前の光景を信じられず、どうしようもなかった。
一条を睨むように見つめても、何も解決しない。
秀はしゃがみこみ、雪を抱き抱える。
「大丈夫か?雪」
「ごめん秀、もう無理だよ。」
そういって雪はよりいっそう顔を白くして、ぐったりと首をたらす。
「な、な、何でだよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
秀は目から淡い液体を流し、雪の胸にうずくまる。
「もう、別れはすんだけね。これで私もやっと肩の荷がおりる。」
そういって一条はまた銃を突きつけてくる。
秀は反応しない、ボーっとしたまま一条に背中を向けている。
「それでいい、さらばだ大幢くん」
カチッ
軽い音が秀の後ろでハンマーを引く音が聞こえた。
それと同時に秀は立ち上がった。
「一条博士、全部貴方がやったことだったのですね。」
トーンが一段階下がった少し低い声。
まるで別人みたいに秀は一条を挑発するように話し出した。
「俺たちは人間の究極の秘密、脳について実験をしてた。そこで未来が見える少女が誕生した。貴方はその少女に一番はじめに宣告された。『おじさんの子供、明日死んじゃうんだね』
予想は的中した。貴方の子供は死んだ」
「違う!殺されたんだ、殺されたんよ!」
「あんたの子供は事故で死んだ。それを少女のせいにして処分を命じた。けど、そんなこと認められなかった。そこであんたはこの場所でARISUを暴走させたんだ。俺は止めたのに、あんたは聞かなかった。」
「うるさい!それがどうした。」
「ここにいるすべての人を殺したのはあんただ!どれだけの命が消えたと思ってるんだ!たった一人の人間の憎悪が、どれだけの未来を奪ったとおもってるんだ!」
一条は鳩が豆鉄砲食らったような顔して、たじろぐ。
「でもな、お前らが死ねばすべて終わるんだ。」
そういって銃を秀の頭に突きつける。
バンッ
銃声が鳴り響く。
でも、打たれたのは秀ではなかった。
一条の右腕、付け根あたりから血が滴り落ちる。
一条は痛さにうなり、銃を落とすとその場にのた打ち回る。
秀はとっさに銃を撃ったほう、すなわり扉のほうをむく。