第十四話 鬼気
秀たちはどんどん、下に降りていった。
はじめはたくさんいた仲間も、今じゃ秀、雪、ミカ、一条しかいない。
そんなことは、なるべく考えないようにして、降りていく。
地下の階段は相変わらず、明かりが乏しく、暗い道を進んだ。
後ろからは動く死体が迫ってくる。
緩慢な足音を響かせ近づいてくるのがわかる。
しばらく行くと、また別の部屋に出た。
ガラス張りの実験室がいくつもある。
そのガラスも、血でくもり、肉で埋もれている。
「一条さん、ここは?」
「ふ〜、覚えていないのかね。我々の実験室だよ。」
一条は少し笑みを湛えて言う。
「ここでは、どんな実験を?」
「まぁ、もっと先に行ったら話すよ」
そういってどんどんと歩いていった。
秀は唯その後に続くしかんかった。
「お兄ちゃん」
ミカがか細い声で秀に抱きつく。
「どうした?もうすぐ帰れるぞ。」
「あの人について行っちゃ駄目、大切なものを失うよ。」
「何言ってんだよミカちゃん。」
秀はミカの忠告を聞くことなく、帰れるという期待が胸を埋め尽くし、思考力をていかさせていた。
この部屋には死体がない。血のあとや肉片はあるのに、死体は一つも転がっていない。
ここで残虐が行われたのは確かだが、その死体は何者かによって全部削除された。
そしてここは一条の実験室。
昔、この部屋を使っていて、今生きているのは一条と秀だけ。
こんな、簡単な推理も今の秀にはできなかった。
秀たちは唯々諾々と一条に従った。
なにやら大きな扉の前に着いた。
一条はそこで、カードキーを使うと重々しい扉が轟音と供に開く。
出たのは小さな部屋、でもそこのガラス張りの窓からは巨大な船が見えた。
「一条さん、これが伝説の船ですか?」
雪が溌剌と聞く。
「ああ、そうだよ。これでやっと救われる。」
そういうが早いが、一条は何処からともなく、一丁の銃を取り出した。
「雪くん、君を用はない。でも大幢とミカとかいったかな、君たちにはここで死んでもらう。」
「まだ記憶は戻らないのか、それは好都合だ。じゃあな大幢」
バン
一発の銃声が小さい部屋にこだまする。
秀は目をつぶっていた。
でも、何がなんだか分からない、一向に痛みはこない。
これが死というものなのか?
でも、確かにい意識がある。そう、生きている。
秀は目を見開く。
そして、周りの光景をみて絶句した。
床に雪が腹部からドクドクと血を流しながら倒れていた。