第十三話 思い出
秀たちはまっすぐ進んでいた。
一条に導かれるまま、何も考えずに進む。
先には階段があり、大理石の大きな広間にでた。
「一条さん、ここは何処なんですか?」
「ここは、一般に言う休憩所みたいなところかな。」
休憩所の上にはシャンデリアが並べてあり、とても地下だとは思えなかった。
「すごいッスね、ここ。」
鉄が嘆称の声が聞こえる。
「俺も、こんなとこにいなけりゃ、今頃はアイツとこんな家に住もうとか、放してたんだろうな。」
「鉄さん、奥さんでもいたんですか?」
雪がそっとたずねる。
「そんなんじゃねぇ〜よ。婚約した人がいるんだ、俺とおんなじ雇われ兵でよ。女だってのに運動神経抜群でよ、まだ若いのに軍の特殊部隊にいたって経歴があって。」
「すごいですね。」
「そうだろ、きっと弥生ならうまくここを抜け出したてるさ。」
「や、弥生さん・・・・・・・・・・・・・・・・・!」
「しってるのか?」
鉄はびっくりしたように雪に顔を近づける。
ここで雪は真実を言うべきか迷った。黒崎のように泣き崩れて、しまいには自殺してしまうんではないかと思ったからだ。
「いえ、わかりません。」
雪はひとことそういった。
下に行く道が見つかったのだろう。
秀が手招きをして雪たちを誘う。
二人はそれに答え、秀のほうに向かった。
まさにその刹那、違う扉が開き、動く死体が襲い掛かってきた。
鉄は自慢の銃をぶっ放すが、あまり効果はない。
それをみて雪の頭にふと、ある考えが浮かんだ。
――上半身がないやつは動いてない、でも顔を打っても死なない、上半身の顔以外の急所・・・・・!
「鉄さん、心臓です。心臓を狙ってください。」
鉄は言われたとおりに心臓を狙う。
すると、緑の液体をたらし、死体は次々に倒れていった。
そうやって行くうちに、だいぶ数が減ってきた。
「雪、鉄さん、いまです。早くこっちに。」
秀の声を聞き雪たちは走る。
扉の目のまえに来たぐらいだろうか。上から何かが落ちてきた。
それは大きな毛の塊だった。
しかしそれがたちあがる。大きな翼を広げて正体を現した。
鳥のような足、全身毛に包まれたからだ、大きな翼、角のある頭。
その奇妙な生物は、雪たちを扉に近づけさせまいと、立ちはだかった。
鉄は銃を乱射。しかし、効果はなし。
次の瞬間には大きな翼をはためかせ、腕のつめで、雪に襲いかかってきた。
雪は目をつぶる。もう駄目だと思った。しかし、一向にいたにはこない。
恐る恐る目を開けると、鉄が雪の盾になっていた。
怪物のつめは鉄の腹部に食い込み、わけの分からないものをたらしている。
「早く行け、今すぐ下にいくんだ。」
雪はそれを聞き、迷ったすえ、秀たちと供に下へ降りていった。
鉄は最後の力を振り絞って、右ポケットを探る。
取り出したのは手榴弾だった。
それに気づいた怪物は慌ててはなれようとするが、爪は刺さったまま抜けなかった。
そして、地下が揺れた。