第十一話 壁
ARISUの声がやみ、しばらく沈黙が部屋を支配した。
そして、何も言わず秀の後ろで誰かが立ち上がった。
秀は反射的に後ろを振り返る。
そこに、いたのは首のない死体だった。
その死体がよろよろと近づいてくる。
「な、何だこいつら!」
鉄が叫び、必死で銃で抵抗するがやつらの行動はとまらない。
「とりあえず、この部屋から抜け出しましょ。」
そういって、柊が扉を開ける。
みんなが、入ってくると扉を近くにあった机などで固定し、死体が入ってこれないようにした。
「なんなんだ、あいつら。死んでんじゃないのかよ!」
鉄がいきり立つ。
「一条さん、なにか知っていることがあるんじゃないですか?」
秀が厳しく問いつめる。
「ん〜、まだはっきりとしたことは分からないが、確かしたでは寄生虫の実験をしていたはずだ。敵陣に寄生虫をばら撒き、体力を奪うためだ。」
「それで、どうなったんです。」
「実験は失敗した。寄生虫が取り付いたものは一瞬にして死んだ。けど、寄生虫が人間の体を支配して、死んでも寄生虫が生きてる限り、動き出すようになった。」
「じゃあ、体にいる寄生虫を殺せば、死体は力を失うんですね。」
「そういうことになるかな。」
一条は真剣な顔で考え始めた。
「でも、何処に寄生虫がいるのかは、まだ分かってないんじゃよ。」
「そんな〜」
「とりあえず、死体を避けて、船にたどり着けばいいんだ。」
そういってみんな、あたりを探索し始めた。
死体が閉じ込めてある部屋からは、ドスドスと扉をたたく音がする。
「お兄ちゃん、扉が開く」
秀の腕に抱きついていたミカがぼそりといった。
そして次の瞬間に机がはじき飛ばされ、扉が開かれた。
のろのろとした動きだが、死体がこっちへ向かってくる。
「やばい、扉が開いた。」
秀は大声で叫ぶ。
それとほぼ同時に雪のこれが聞こえた。
「ここから、下にいけますよ。」
みんなは、雪が見つけた扉を出て、階段を折降りる。
下にも、したいが山のようにあった。
取り合えず、秀たちは死体がないまっすぐの道を進む。
みんな、必死に走った。
まさにそのときだった、雪の後ろにいきなり壁ができた。
被害は出なかったものの、二つのグループに分かれた。
前には秀、雪、ミカ、一条、鉄。
後ろのほうには柊、芹澤と壁で仕切られた。
「柊さん、芹澤さん」
秀が大声で叫ぶが返事はない。壁は結構厚いのだろう。
鉄が銃を撃っても反応はない。
「仕方ない、あきらめて先に行くぞ。」
そんな一条の声が聞こえた。
「置いては行けない。」
みんな反論したがどうしようもなかった。
とりあえず、秀たちは前に進んだ。