第十話 ARISU
秀たちは早速クロックタワーの中に入った。
相変わらず、うす気味悪く、三人にとってはとても不快な思いなさせる。
鉄の背中から下ろされたミカが秀に近づいてくる。
「お兄ちゃん、ここに居たくない。」
そういうと、ミカは秀の腕にすがりついた。
一方、雪は帰る方法を探すため努力をしている。
「一条さん、クロックタワーの中に入りましたけど、どうやってこの島から逃げ出すんですか?」
「ああ、任せろ、この下に船があるはずだ。あの伝説の船だよ。」
「伝説の船って?」
雪が首をかしげて尋ねる。
「戦艦大和じゃよ。46インチ砲を携えた最強の船。下のほうで確か作っていたはずだ。」
それを聞いてみんな飛び上がるように喜んだ。
「でも、どうやって下に行くんですか?」
「わしのカードキーがある。本当は君たちもカードキーがあるはずなんじゃがな。」
そういって一条は階段の影になっているところに向かった。
そこの壁にはカードを読み取る機械はあるが、その先に扉はない。
そんなことは、お構いなしに一条はカードを機械に入れる。
すると塔のちょうど中心が、蟻地獄のようにへこみ、螺旋階段ができる。
みんなは、一条を先頭に螺旋階段を降りる。
あたりは薄暗くてよく見えない。
階段に一定間隔で並べられたろうそくが唯一の明かりとなる。
「不気味だな。」
秀の前にいた鉄が、誰に言うでもなくつぶやく。
2、3分もしたころに一枚の薄汚れた扉の前に出た。
一条はそれをおもむろにあける。
目の前にはしたいの山が広がっていた。
腕が無いもの、頭が無いもの、すでに原型をとどめてないものまで、さまざまな死体が無残に散らばっていた。
それをみて、一同顔をしかめる。
「ひどい」
少し涙声になった雪の声が聞こえる。
まさにそのときだった、秀、雪、ミカにとっては戦慄を促すような声が聞こえた。
ギギーガッガッ
ようこそ、クロックタワーへ貴方たちにもゲームをしてもらいます。
今度は、増え鬼をしましょう。
これで少女の声はとまった。
「ARISU」
すうとくぐもった一条の声が聞こえた。
あれがARISUか・・・・・
走馬灯のように、秀の頭で記憶がよみがえり、混乱させた。