鬼一人
俺とエリスが上陸後そこ15分もしないうちにいかにも高そうな車が到着した。
対防弾仕様の高級車って…どこの大国の大統領車だよ。
逆に軍用車両が来たら流石の俺も引くけどな。
「お待たせしました」
「さっきぶりだなイリスさん」
「無事に合流でき光栄です」
「…ちょっときき『イリスさん、今回は相当面倒なことになりそうだ』」
エリスの口をそっと手で塞ぎ俺は、イリスさんに先ほどの合図を送る。
「何かトラブルでも…?」
俺はそっと足を動かし地面に書いた言葉を彼女へ見せる。
もちろん片手にはいつでもコンバットナイフを持った状態だ。
これはもしも彼女が敵であった場合を想定してだ。
今回の依頼は、「if」の可能性も想定して行動しなければならない。
俺とエリス2人が生存した状態で依頼を完遂することができるなら問題はないが…
最悪の場合は依頼を途中で破棄することも考えなければならない。
これが俺とエリスが15分間で話し合った内容だ。
『すでに懐に潜り込まれている、傘が開かないように細工がしてあった、貴女は敵か?』
彼女は地面に書かれた言葉にほんの少し悔しさを滲ませ待たせてある車から見えないように口を動かした。
『今回の件は申し訳ございません、現在フローレン家の護衛でも信用できる者は昔から仕えている者ぐらいしか信用ができません』
「いや、なんでもない」
「それよりも早く移動した方がいいだろう」
「…ソラそれよりこの手をどけてもらえるかしら」
「あぁ…悪い、完全に忘れていた」
『分かった、ひとまず俺たちはあなたを信用する方向で行く』
『承知いたしました』
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俺たちの合流してからの会話の後すぐに車に乗り込んだ。
ひとまずやるべきことは、エリスに任せている。
彼女に任せたことは特殊な機材を載せている彼女のノートパソコンで盗聴器や小型カメラがないかを確認作業だ。
「エリス?」
「…保存食で即席とかも念のためほしいわね」
そういって彼女は運転席の方向に視線を向ける。
「了解した」
車にまで盗聴器を仕掛けるとは熱心なことだ。
しかも音源を拾っているのが運転席の現在車を動かしている男だから笑えない。
「イリスさん、ちょっと車を止めてもらうように言ってもらってもよろしいですか?」
俺はイリスさんに運転席から見えないように合図を送る。
イリスさんはこちらをそっと目線を向け運転手に車を止めてもらうように指示を出した。
…さて、ここからは俺の仕事だ。
俺は車から降りて運転手側のドアの窓をそっと叩いて運転手を外に呼び出す。
「何かご用でしょうか?」
そういってこちらを向く彼の眼は企業側の独特の眼…
「快適な空の旅をありがとうと言いたくてね」
俺のその言葉に彼は一瞬だけ反応を見せた。
彼は懐に仕込んでいた何かを取り出そうとジャケットの裏に手を伸ばした隙を突き
俺は右手でその手を掴みそのまま彼を後ろに押し体勢を崩させる。
そのまま俺は右足を彼の左足関節へかけそのまま地面へ押し倒す。
俗にいうCQCの崩しの一種を使いやすいように手を加えた技だ。
念のため彼が懐から取り出そうとして落ちた銃はイリスさんの方へ蹴り飛ばす。
「さて、答えてもらおうか…どこの飼い犬だ」
「だれが・・・!!」
「強情はためにならないぞ?」
そういうと俺は押し倒している彼の腕を目掛けて足を振り下ろす。
ボキッという音と共に彼の悲鳴が響き渡る。
「安心しろ、殺しはしない」
俺は彼に向かってほほ笑みながら折れた腕をグリグリと圧力をかける。
「ただし、物凄く気持ちいいと思うぞ?マゾっ気あるならな!」
「わっわかったいう!いうからやめてくれ!!!!!」
彼は必至の声で俺に懇願する。
俺はゆっくりと折れた腕に乗せていた足を退けると彼は息をつく。
「へえ、意外と素直になるんだな」
「こんなことされるくらいならしゃべった方がましだ!!」
「でも、念のためもう一本足を折る」
「逃げられたら困るしな」
俺の言葉に彼の瞳がドス黒い絶望に染まったのはきっと気のせいだろう。
「…日本だとこういう時鬼っていうのかしらイリスさん」
「どうなんでしょうね…」
鬼は3人のような気がする…。