二色のパレット
北緯48度51分44秒 東経2度21分04秒これが今回の目的地クライアントの指定してきたフランスの首都パリの位置だ。
フランスへ訪れるのは別にこれが初めてというわけではないが土地や歴史にそこまで詳しいわけじゃない。
俺たちはシャルル・ド・ゴール国際空港へ降り立ちその足で依頼人との待ち合わせ場所へ向かった。
今回は凱旋門からテュイルリーまで続く目抜き通りであるシャンゼリゼ通りに沿った場所にあるカフェだ。
元々今回の依頼を受ける際はエリス抜きで依頼人と会うはずだったが…
依頼人の話では、今回の依頼はどうやら一癖もあるらしいとの理由でエリスもバックアップで来ている。
「…ソラ着いたわ、ここが目的地のフーケよ」
俺がスリなどの警戒を行っているとエリスの声が聞こえた。
目の前には赤い屋根をしたカフェがそこにはあった。
「へえ…ここがあの有名な店か」
Fouquet'sと屋根に書き込まれている。
シャンゼリゼ通りの沿った場所にある老舗の有名カフェ
少々お値段は張るが職業柄俺達には別に痛くは無い。
仕入れた情報ではクロック・ムッシューが美味しいとか聞いていたが…
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「…学生ですか?」
珍しくエリスが顔を驚かせている。
…言うのもなんだがそんな顔でも絵になるもんだ。
「そうだ、君達に依頼する任務は…」
「偽装学生として学園に潜入しとあるVIPの護衛をしてほしい」
「期間についてはVIPが帰国するまでだ」
この話には正直な話エリスだけではなく俺も驚いている。
こんな職業柄学生なんて縁なんてなかったからな。
銃はペンよりも強し…そんな世界で今まで生きていた俺には
とてもじゃないがまともに学生に紛れて護衛なんてできるとは思えなかった。
「…報酬及びその他のバックアップについては?」
しかし、エリスの顔を見る限りどうやら報酬とバックアップさえよければ引き受けると
顔に書いてあるようだった。
…なんか俺と違って興味津々だな。
「報酬については君達が出した額を出そう」
「護衛のバックアップだがセーフハウスや銃火器の手配は全てこちらが引き受けよう」
「君達は使用する銃火器やその他のものをリストに纏めるだけでいい」
この破格の待遇には俺も顔に驚きを隠せなかった。
本来俺たちのような仕事の人間は仕事に使う武装は全て自分で調達しなければならない。
稀にそこまで用意する依頼人もいるがそれは余程金に余裕のある金持ちだけだろう。
「学生として潜るなら身分の偽装もやってくれるのか?」
ここで俺は、初めて口を開いた。
いつもなら仕事の話はエリスに任せたままなのだが今回は珍しく口が出てしまった。
「もちろんだ」
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「引き受けてくれるならこのままル・ブルジェ空港へ向かってくれ」
「…急すぎないかしら?」
本来なら装備の準備などで時間が掛かるはずだが今回はこれほどの待遇だ。
特に文句が無いといったら嘘になるが…
「急なことは分かっているが信頼できる傭兵で学生として護衛ができるのが君達しかいなかったからな」
「連絡を取るのも旅立つギリギリになってしまった」
それはそうだ、俺たちと連絡をとる場合余程のことが無い限りあの人は口を割らない。
「…分かりました、ソラ?」
「その依頼、引き受けました…時間押してるんでしょう?」