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大きな小人の背負うもの

ホテルの自室のドアを開くとあちこちに散らかった本の山と

任務中冷静な指示を飛ばしていた彼女の姿が目に入る。


「…おかえりなさい」


「…それとお疲れ様」


手にした小さな本…いや彼女の手には大きな本を持ちながらエリスの労いの声がかかる。

部屋の中央で彼女の手には大きな本を抱えながら床に座りこちらに見つめる彼女の姿は

まさにどこかお屋敷から飛び出してきた人形のようだ。


「ただいま…もう次の依頼人と会うために飛ぶ準備はできているのか?」


俺のこの問いに彼女は視線をゆっくりと持っている本に戻しながら


「…うん、後は貴方の…ううんソラの荷物だけよ」


毎度のことだが部屋に散らかった本の山は彼女の荷物には入らない。

随分と昔のことだが、俺がそのことについて彼女に質問すると

読むのは私、運ぶのは貴方それが、彼女の答えだった。

そのときは理不尽な答えだと感じたのでその本を纏めて一週間後に届くように

郵送の手続きを取って彼女には捨てたといったときは一週間の間口を利いてもらえなかった。

女性に逆らってはいけない…どこかの誰かは上手い事を言ったものだ。


「はぁ…分かった、すぐ準備するからもう少し待ってくれるか?」


彼女からの返答はなかったが首を縦に振っているということはそういうことなのだろう。


「…ソラ、すぐじゃなくてもいいからゆっくり準備していって」


時間には厳しい彼女にしては珍しい一言だ。

普段通りの彼女ならそんなこと一言も言わない。


「ん…あぁ」


だが疑問はひとまず胸にしまっておくことにする。

今は移動する準備の方が先だ、疑問の解決は後で本人にでも聞けばいい。

俺は自分の荷物…といっても数着の着替えとスーツなどを纏めるだけの作業に取り掛かることにした。

それから5時間後

俺達2人は国際便の飛ぶ飛行場へ足を踏み入れていた。

横にいるエリスを見ているとあちこちをきょろきょろしては、

俺の後ろに隠れるようにコートの裾を握ったまま放そうとしない。

いつものことながら彼女は慣れない場所や知らない人間の多い場所では、こんな態度になる。

理由はまぁあの施設が原因だと昔は思っていたが最近になってただの人見知りの激しいだけのように思えるようになったのは、きっと彼女説いた時間が長いせいなのだろうか。


「…そら、ひこうきにもうのれる」


なぜだろうか口調まで年齢が低下していった気がするのはただの気のせいかだろうか。


「エリス…そろそろ緊張解いたらどうなんだ?」


彼女のそんな姿に思わず声をかけてしまう。

依頼遂行中のオペレーターをする彼女の姿と今の彼女の姿はまるで人格が二つあるようだ。


「…しらない、きんちょうしてない、むしろそらのかんちがい、そう…そうなの」


そんなガチガチに固まった彼女の手を引き俺達は次のクライアントの待つパリへ向かうのであった。

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