さいなんの始まり。
彼女の護衛が始まって早二ヶ月余りの月日が過ぎた。
その間に周りでいろいろな出来事があったが…思い出したくは無い。
今日は久しぶりに護衛から外れる日だ。
ちょうど学園も休みの日だからこれは世間一般でいう休日になるのだろうか。
イリスさんにいきなり休暇を貰ったわけだが正直何をしていいのかが分からない。
思い切って一日ゆっくり眠り続けるのもいいかもしれない。
…なるほど、それは夢のある話だ。
今日は一日中惰眠を貪る事にしよう。
俺はそんなことを考えながら自室のベットの布団の中へ潜る。
―ピンポーン。
部屋にチャイムの音が鳴り響く。
エリスが出るだろうと考えた俺はその身体を丸めて聞こえないフリをするが…
―ピンポピンポピンポピンポーン。
何の嫌がらせか分からないがチャイムを連続で押した軽快なサウンドが俺の睡眠を妨害する。
えぇい!エリスはまだか!…エリス?そういえば昨夜イリスと出かけてくるとか言っていたような…。
ジーザス!神なんて信じてはいないがまさにそんな言葉を思わず吐きたくなる。
俺は布団からゆっくり起き上がりカメラから睡眠を妨害した訪問者の顔を拝むことにする。
…えーっとクラスメートの女子とエリスにイリスそれにアイリーンだと?
『ソラ?カメラで見てるのは分かるからドアを開いてくれないかしら』
カメラ越しにエリスがしゃべっているのは分かるが身長が足りないのか頭がほんの少し写っているだけだ。
『エリスちゃん凄いね~よく分かったね!』
『…それほどでもあるわ』
『わっ、凄い自信…』
ひとまずドアを開いたらさっさと寝てしまおうと考え俺は玄関へ脚を運ぶ。
玄関までたどり着いた俺はドア越しに感じる人の気配に嫌な予感を感じる。
そう、まるで自分の予定外の事が起きるときに感じる嫌な予感だ。
だがドアを開かないわけにもいけない。
二箇所ある鍵を開けるとドアはゆっくりと開いていく。
「ただいま…」
「お邪魔しますね、ソラさん」
「おじゃま~!ソラっち!」
「おじゃまします、ソラ君」
「…何の用かは知らないがお邪魔される」
嫌な予感は当たってしまったのかもしれない。
だからあえて先に言うべきだと感じた。
―さようなら、俺の一日睡眠…ようこそ騒がしい時間…
「ん?ソラっちなんか言ったかい?」
「…いや、なんでもないと思う」