開幕の時
―お父様へ
日本へ留学してこの学園での新たな生活が始まって早いもので一週間。
クラスメートとの中も特に問題も無く仲良くさせてもらっています。
イリスが出かけてしまったので代わりの護衛の方が数人で警護なさっているので…
心配だからって日本まで追いかけてないでお仕事頑張ってください。
そういえば今日は、私がずっと探していた人にそっくりな人に出会いました。
名前も同じだしやっぱりあの人だったのかな…?。
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「聞いた?転校生の話!」「あぁ!」「私その人見たよ!」
何時もとちょっと違った朝の一幕。
ちょっとだけ皆落ち着きが無いのはどうやら私がこの学園に転校して
一週間後にまた新しい転校生が来るんだからしょうがないのかな。
「アイリーンはどう思う?なんだかお人形みたいな可愛い子とシリアスそうな男の子らしいけど!」
隣の席に座っているロングの髪を纏めた学園に来て初めてのお友達静がこちらを向きながら尋ねてくる。
静という名前が負けてしまうほど彼女はいつも元気一杯というかテンションが高い。
その勢いは私の転校初日に男子生徒を巻き込んで一事件起こして教師に大目玉を食らったくらい。
「でも、うちのクラスには来ないと思うけどなぁ」
「まぁ、アイリーン来たしね~」
「むっ、そういうこと言うなら今日は教科書見せないよ~」
「そっそんなぁ~かんにんしてなぁ~」
こんな会話を続けていると教室のドアが開き担任古神ちゃんがいつものようなめんどくさい様な顔をしながら入ってくる。
もう少し大人なんだからしっかりしろ~はクラスメート全員の心の声だ。
そんなのだから三十路なのに浮いた話一つ無いんだと静に言われるんじゃないのかなとか思ってみたり…。
話だと一部の男子生徒と女子生徒に凄い人気があるらしいけどね。
「それじゃホームルームを始めるぞ~」
担任の少々間延びした声と共にいつものホームルームが始まる。
でも、始まって五分も立たずに終わるのはホームルームなのかなぁ…
「んで…まぁあれだ」
「転校生が来たことはどこから仕入れたかは知らんがどうせ静辺りが流したんだろうってことで全員知ってること前提で話を進めるぞ~」
「ちょっと先生~それはないですよ~」
「早い話があれだ…転校生の二人を校長直々に押し付けられちゃった♪テヘッ」
古神ちゃんのテヘッの発言に一瞬教室が固まる。
いや、先生…その歳といつもの態度でそれは無いと思うんだけど。
でも何人か胸を押さえてギャップ萌えとか言ってる…
「誰だ今、テヘッって歳じゃないと言った奴は!もうすぐ三十路と思ったそこの男子!放課後進路指導だ!楽しいお話しよう!」
「ありがとうございます!我々の業界じゃご褒美です!古神ちゃん!!!」
この変なテンションの男子生徒なんて名前だったかな…。
「そんなことよりも謎の転校生!入って来い!」
担任の古神ちゃんは大きな声でしゃべりながら入ってきたドアを開く。
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「…ソラが先に行ってよ」
「何でさ?」
「…だって」
教室の前まで案内された俺はエリスとずっとこんなやり取りを続けている。
さっきからこの部屋からは他の教室と違ってやたら騒がしい。
薬の常習犯でも混じってるんじゃないんだろうか。
そんなことを考えると担任の声と共に勢いよくドアが開かれる。
「エリス行くよ」
俺は未知なる教室へ足を踏み入れる。
エリスは俺に置いてかれるまいと袖を掴み半ば引っ張っていくような感じで教室へ入ってくる。
俺達に興味を持った視線がいっせいにこちらを向く。
思わずその視線を火炎放射器で焼き払いたくなりそうな気分になる。
「それじゃ…ホームルームの時間は長いから適当に自己紹介を頼んだぞ~」
「古神ちゃん~!仕事放棄はいけないぞ~」
「誰だホームルームで喋るのめんどくさいから時間潰させようと自己紹介させようとか考えたのは!」
「っと、んじゃとりあえずお前から頼むぞ?」
お前が誰を指しているのかは知らないが俺の方を見ているということはそういうことなのだろう。
自己紹介…何を紹介すればいいんだ?project fate of battle childrenの生き残りか?
それとも傭兵としてのコールナンバーF.O.B.C.01なのか!?!?
無難に今の偽名で対応するしか…
「……天宮ソラ、以上だ」
一瞬教室の空気が固まる。
なんだ、このやってしまった的な空気は…
すると先ほど教師に仕事放棄などと言った女子生徒が挙手し一言
「どこからきたんですか~?」
「ここに来る前はイタリアにいた」
「へぇ…イタリアの学校か~えっーとじゃあ趣味は?」
「詮索しすぎるのはあまりいい趣味とは思えないが」
「あはは~覚えておくわ!」
彼女との会話が終わると閉じていた担任の口が開く
「よし、じゃあ次そっちの可愛い小動物系の女の子!」
「……」
エリスの方を見ると完全に上がってしまっている。
自然と俺の服を持つ手にも力が入る。
「……ぁ、天宮…エリス」
「…以上」
彼女にしてはよく出来た方だ。
ふと教室内を見渡すとどこか暖かそうな目に変わっている。
一部、なにやら苦痛に悶えながら破壊力が…二次元の女神光臨…生きてて良かった…と言っている妙な奴も混じっているが。
「ふっ…よし、自己紹介も終わったことだし2人はそこの空いてる二つの席に座ってくれ」
「それじゃあ、授業を始めるぞ!」
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どこか変わった二人の自己紹介を見ていて私はソラと名乗った彼には見覚えがあるなと感じていた。
ちょうど私が探していた男の子をそのまま大きくしたような感じ。
そしてソラという名前…まさかね…。