中間報告②
この報告書は、ある人物二名に依頼された調査の中間報告である。情報の流出には諜報部の存亡に関わるので、特に注意を払っていただきたい。
諜報部統括官の手記より。十月二四日。
まず最初に、元老院の議長を務めるヴェルデが進めている計画についてだが、現在こちらに公開されているもの以外の情報は確認できない。主力となる戦力は外部から雇い入れる予定であるが、それ以外にもヴェルデには強力な私兵を所有している。
まず魔法技術を駆使した兵器工廠であるが、独自の部署を設置しており、その内容を知ることはできない。出入りする技術者の周辺を洗ってみたところ、生物や精霊に関する資料が多く見受けられたが、これらが直接兵器転用されるかは不明である。
次に、常にヴェルデの側に付き従っている漆黒のローブをまとう者達。能力の詳細なデータは不明であるが、彼等にはいくつかの共通点が挙げられる。まず、それぞれに尖った能力を持っている点である。攻撃・防御・情報処理・事務・技術等々、確認されたのは四人だけだが、最低でも八人、それ以上にいたとしてもなんら不思議はない。
そして最後の一人、エザリア=S=ミズーリー。年齢も経歴もなにもかもが不明な人物。先日の会議で見せた謎の技術や魔法について調査を進めていたのだが、捜索に向かったメンバーは全員行方をくらましている状況。生存は絶望的である。
同時に、既存の魔法の中に類似するものがないかの調査も行ったが、それらしいものは見つからなかった。少なくとも、漆黒のローブをまとった者達より危険な存在であることは、間違いないだろう。
ところでエザリア=S=ミズーリーの目撃情報なのだが、これが偶然にもレナ=ル=アギニ=ド=アナヒレクスのサーヴァントである、アキラ=クサカベの出現と同時期(約一ヶ月半前)であった。
他にも、見慣れない衣服、戦闘力の高さ、人種的な違い等、二人にはいくつかの共通点が見られる。二者の共通点から探っていけば、もしかすればエザリア=S=ミズーリーの情報をつかめるかもしれない。
なおこれは未確認情報であるが、同様の現象が隣国のメレティス王国でも確認されたとの報告が入った。約一ヶ月半前、メレティス王国が運営している孤児院で、突如として爆発が起きたようである。現れたのは一人の女性だったそうだ。こちらも謎の魔法を使うらしく、その威力は既存の魔法を大きく逸脱したものらしい。現在はなにかしらの交換条件によって、王宮にとどまっているようだ。
現在、確認のため諜報部のメンバーが確認に向かっている。元機動隊のメンバーなので、数日中により詳しい情報が届くだろう。
ただ一つ言える事は、我々の感知していない所で、なにかが行われている事は明白である。