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マグス・マグヌス  作者: 蒼崎 れい
第二章:汝が力は誰が為に……
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Act26:その姿を焼き付けて

 ついに、この瞬間がきてしまった。

 殺気立った上級生達の後ろで、レナは自分の両肩を抱いて震えていた。回りにいるのは同じ学院の先輩達。それも特に魔法戦の技能に優れた人達だ。本番がすぐ目の前まで迫っているのもあり、その気配は抜き身の剣のようで話しかけたら最後ひと睨みされただけで心臓が止まってしまいそうである。

 いつもはお姉さんぶっているレナであるが、この日ばかりはシェリーの影に隠れて可能な限り気配を押し殺している。そして普段は強気なシェリーも、周りが上級生ばかりとあってはいつものようにいかない。あまり話したことのない同級生も何人かいるが、上級生は応援のために補欠の選手も全員この場所に来ているため圧力は凄まじいのひと言である。

 怯え気味のレナの前もあって強がって見せているものの、シェリーも不安でいっぱいだ。

「レナ、大丈夫?」

「あんまり大丈夫じゃないかも。……なんか、お腹痛くなってきた」

 少しでも気分を紛らわすためレナに話しかける。あまりにギスギスした雰囲気に体調不良まで起こしそうなレナの背中をそっとさすってやった。

「そういうあんたこそ、顔色悪いわよ。変なものでも食べたんじゃない?」

「逆よ、逆。緊張しすぎて朝食どころか水も飲めてない」

 しかしシェリーと違い朝食をかきこんでいたレナの状態を見ていると、喉を通らないほうがよかったかもしれないと思えてきた。いや、今日に限ってはこの雰囲気以外にも原因はあったっけと、シェリーはため息をつく。

 この大事な時に顔も出さないなんて。自分にはともかくレナにはひと言声をかけてやってもよかっただろうに。その内心は悟られないよう、シェリーは表情に出ないよう努めた。

 昶の姿を見たのは昨日の試合が最後だろうか。昨晩は試合の疲れもあって早々に床についてしまっていたので、今日こそはと期待していたレナの落胆ぶりは酷いものだった。『頑張れよ』のたったひと言が欲しいだけなのに、今朝はいくら待っても昶が食堂に現れることはなかった。

 今日も昶は試合があるはずなので、会場には来ているはずなのだが……。

「シェリー」

「ん?」

「……その、気にしなくていいから」

「まぁ、レナがそう言うなら、私は別にいいけど」

 でも、納得はしない。今まで見たことないくらい健気なレナに、シェリーの心も激しく痛む。こんなにあんたのこと思ってる子がいるってのに、ちょっとは応えてやりなさいよ。そもそも大会前まではつきっきりで指導してくれたのに、始まった途端にこれだなんて私だって納得いくか。レナみたいなのは望んじゃいないけど軽口の一つくらいはかけていきなさい。

 まるでレナの代わりと言わんばかりに、シェリーは怒りの矛先を昶へと向ける。なんか思い出すだけで腹が立ってきた。ほんのちょこっとだけ自分勝手で理不尽だなーとも思わなくはないがこれは無責任な気がする。コーチをしてくれたのならきっちり最後まで果たしてほしいものである。

 しかし、こんな気分を引きずったまま試合に行くわけには行かないので、別の話にして気分を切り替えよう。

「まずは相手と先輩達の出方を見てから、ってことでよかったわよね?」

「えぇ。でも、あたしは後方支援担当だから、危ないのはシェリーの方なんだけどね」

「私だって最初から突っ込んだりしないわよ。それに精霊の防具があるからって、先輩達が所構わずこっちに撃ってくるかもだってあるわけだしね」

「後ろも気をつけなきゃいけないって……。こればっかりは、アイナの飛行術チームが羨ましいわ」

 と、レナはこっそりと先輩達への不満を口にした。

 昨晩聞いた話であるが、飛行術のチームはそもそも模擬戦組ほど突出した生徒がいないのでいつも他校に勝つのはギリギリのところなのだとか。そんな状態なので当然内輪もめなんてしている余裕はなく、反りが合わない相手だろうと折り合いをつけチーム一丸となって優勝を目指しているのだそう。

 どこぞの頭はいいのに自己中心的で脳筋な人々にも見習ってほしいところである。

 さて、多少ぎこちないながらも雑談でわずかながら肩の力が抜けたところで、アナウンスが入った。それと同時に正面の扉が開き、身を守るために渡されている風精霊(シフル)の鎧を展開する。

 レナとシェリーの最初の試合が今幕を上げた。




「あ、いよいよ始まりましたね。レナ様の試合」

「そうだな」

 ドーム型競技場の最上段の更に後方に相当する立ち見エリアから、昶とキャシーラはいよいよ始まったレイゼルピナ魔法学院の試合を見ていた。

 競技場内にいる生徒はなんと二四人にもなり、正直こんな広さでは足りない気がしてならない。それだけチーム全体としての動きが大切になってくるのだが、遠目にもレイゼルピナ側がぎこちない。というか、二つの集団がバラバラに動いているのがわかる。

「あぁ、後ろに集まっているのは一年生ですね。どうしたんでしょうか?」

「先輩方からの、お前らは大人しくしてろって圧力がすごいからな。後ろから撃たれるのが怖くて様子を見てるんだろう」

「え? そんなひどいんですか? 同じ学校なのに?」

「そっちだって人のこと言えないだろ」

「そこを言われると、ちょっと反論できませんねぇ……」

「まあ、もうちょっとなんとかならねぇのかとは思うけどさ」

 苦笑いを浮かべるキャシーラを横目に見ながら、昶は試合の方へ集中する。

 学院長から聞いた話によると、二年生の方は特に何もなかったので成績上位の者から適当に選んだらしい。そして一年生の選定基準はと言うと、なんとあの年末の反乱事件の折、不運にも実戦に参加してしまった者達だそうだ。

 シェリーと同様、帰省中に事件に遭遇。蒼銀鎧のエリート魔法兵もいないまま防衛戦をしている兵士達を見ておけずそのまま参加してしまったようである。

 国全体で見た場合の魔法戦力はレイゼルピナが群を抜いているとは言え、その限られた魔法戦力は多くを重要区に配置しなければならず、端々まで手が届くはずもない。

 各地の反乱行動に対して最初に行動に当たっていたのは魔法の使えない灰色の鎧を着た兵士と、ちょっとした銃程度の魔法しか使えない赤銀鎧の兵士達だ。場合にもよるが、レイゼルピナ魔法学院の生徒一人でも彼ら十数人分かそれ以上の戦力となっただろう。

ミシェルとミゲルが補欠に選ばれていたりしているのも、それ以前の別の実戦に参加しているのが理由だったりしている。

 そんな不運に見舞われた同級生の六人があの場所にいる。せめて怪我だけはしないでくれよと、昶は祈るような気持ちで試合を見つめていた。




 試合が始まってすぐ、レナの周りには同級生達が集まってきていた。

「こうして話すのは初めてかな。しばらくの間よろしく頼むぞ」

 顔は知っているけど直接話したことのないクラスメイト達だ。とはいえ初対面というわけではないので、お互いの実力についてはそれなりに知っている。

「同じ宿だったら、いきなりこんなことせずに済んだのになぁ」

「せめてさっきの待機中にでも、話せてたら……」

「仕方ないよ、先輩達怖かったし」

 宿が一緒にならなかったのは、先輩方の都合と昶の関係者を一箇所に集めておきたかったせいだろう。それについては、本当に申し訳ない気持ちになる。

「辛気臭いのはその辺にして、こっちも迎え撃つわよ!」

 シェリーの喝が入ると、六人は一斉に相手校の方に向き直った。即座に障害物となる岩の陰に隠れ、魔法による攻撃を開始する。個人戦とは違い、団体戦は最初に魔法弾による応酬が行われる。

 遠いとは言え相手は目に見える位置で、人数も自分達と同じとわかっている。そして近接戦闘で真価を発揮する肉体強化系の秘術を持つ術者は希少で、なおかつこれだけの人数になると一人で突出しては袋叩きになるのが落ちだ。まずは自分達の大勢を固めつつ相手の動きを阻害するために、こうして魔法による遠距離攻撃が行われるのだ。

 そして先に準備ができたほうが仕掛けあるいは誘い込み、先に防御を乱したほうが負ける。今回もその例に漏れず、最初に魔法の応酬から始まった。

 いくらシェリーといえども、この濃厚な弾幕の中に飛び込んで相手を殴り倒してくるだけの技術も度胸もない。だが、この時間もそう長くは続かない。

 両者の間には出れば蜂の巣になれるほど濃密な弾幕が展開されている。だがこれだけの弾幕、魔力消費だって馬鹿にならない。こちらかあちらか、数分と経たないうちに動きがあるはず。

「みんな! 大丈夫!!」

 炸裂音が場を支配する中、レナは声を張り上げた。あちこちから、大丈夫、なんとか、全然平気だぜ、と勇ましい声が上がってくる。とりあえず、最初の難所である開幕はしのぎきったらしい。

 弾幕の方は他の人に任せつつ、レナは魔法の攻撃頻度を下げながら魔力の気配に気を配る。日頃の練習のおかげで、今日は明確に魔力の流れがわかる。普段垂れ流してあるだけの魔力が攻撃的な意思を核にしている分、密度のようなものが違っている。しかも魔法戦のさなかとあって溢れ出ている魔力も普段とは段違いだ。

 誰がどのへんにいるとかそういうことは大まかにしか分からないが、両陣営の増減くらいならあまり意識せずとも感じ取ることができた。それとは別に、もう一つ感じ取れるものがある。

 魔力の核となっている意思そのものだ。非常にざっくりとしたものだが、全部で三種類。とにかく攻撃的で怒り一辺倒なのは恐らく先輩達、攻撃的な色なのは同じだが焦りが混じっているのは多分相手校。そして攻撃よりもどうすればいいかわからず戸惑っているのは自分達一年生だろう。

 相手校の方が統制は取れているとは言っても、やはり個人の技量ではこちらに軍配が上がる。弾幕の密度で見ても、一年生が様子見で控えているにも関わらず二年生だけで補って余りあるほど。そしてそんな中、レナは魔力の流れが変わったことを察知した。

「これは……攻撃じゃない。防御?」

 攻撃的なものに混じって防御の意思が膨れ上がる。だが、単に魔法で盾を張るだけとは到底思えない。しかし、過去の試合に該当するものがあった。いや、少し考えればわかったはずだ。

 団体戦に勝つ秘訣は、いかに相手の防御をかき乱すかにかかっているのだから。

「気をつけて! 突っ込んでくるつもりよ!」

 相手校が行動に出る前に、レナは力いっぱい叫んだ。

 先輩達も驚いていたが、それ以上に驚いていたのは相手校の選手達だ。どうしてこっちの作戦がわかったのだ、と口端を引きつらせていた。しかし、今更止められるわけもない。叫び声にやや遅れて準備を終えた四人の生徒は身体の前面に分厚い盾を張り、飛行術も併用してレイゼルピナ側に向かって突っ込んできた。

 だが、わかっている奇襲ほど対処しやすいものはない。奇襲とは相手の意表を突くからこそ効果がある。前線で戦う先輩達は、わずか数秒の差で魔法弾の性質をばらまくものから一点集中へと切り替えていた。

 あとはこちらに向かってくる相手にこの魔法弾を撃ち込むだけである。十二人に対して行われていた弾幕が前方の四人に集約される。しかも距離が縮まるにつれて魔法弾の数は加速度的に増えてゆく。

 限界は遠くない内に訪れ、岩や氷と物理的にも堅固な盾は次々と撃ち抜かれる。風精霊(シルフ)の鎧の上からだろうとお構いなしに、魔法弾が襲いかかってきた。鎧越しとはいえその衝撃を完全に打ち消すことはできず、全身を殴られたような痛みが走る。無論、鎧が規定の耐久力を下回ったために四人は脱落、一気に戦力の均衡が崩れた。

 相手校は早急に大勢を整えるために一時後退し、先輩達も瞬間的に膨大な魔力を消費したために休息に入る。

 が、これが絶好のチャンスでもあった。

「シェリー、行くわよ! みんなも続いて!」

「やっと出番が回ってきたわね!」

 双方の攻撃の手が緩んだ瞬間、レイゼルピナ魔法学院の一年生が一斉に動き出したのだ。

 肉体強化を施したシェリーは大剣を構え先の相手校の倍以上の速度で地面を駆け、他の面々も飛行術で追随しながらシェリーを援護するように弾幕を張る。

 レイゼルピナ側が小休止すると思っていた相手校は完全に不意を突かれ、反撃することができない。しかも先の一幕で魔法弾を使いすぎたため、一時的な魔力切れも起こしているのだ。

 盾を張りつつ物影に隠れて移動しているはずなのに、なぜかレイゼルピナ側はこちらの居場所を察知して弾幕を浴びせてくる。まるでこっちの姿が見えているようで気味が悪い。

 それに加え、

「み~つけたッ!」

 今年のレイゼルピナの生徒には肉体強化を使うマグスが複数いる。そんな情報がどこからかもたらされていたが、いざ目の前にするとこれだけ厄介なものはない。特に今回のように人数と場所が制限された試合なんかでは。

 どうにか迎え撃とうと呪文を口にする前に、大剣の横腹で思いっきりぶん殴られた。馬にでもぶつかられたらこんな風になるのではなかろうか。頭までくらくらして思考をまとめることができない。そのまま場内の壁まで押しやられたところで、相手校の選手は意識を手放した。




 終わってみれば、あっけないものだった。試合結果は十二対〇でレイゼルピナ魔法学院の完勝。一年生が切り込んで更に人数を減らしたところで、二年生達も負けてられないと個人技に物を言わせて急接近し一人また一人となぎ倒していったのであった。

 二年生達はさも当たり前そうにしているがやはり嬉しいのか鼻息が少しばかり荒く、一年生達は一回戦を無事に突破できたとあって安堵している。そんな一年生達を見て二年生も、少しはやるみたいだなと評価を改めていた。

「レナ、地味に大活躍だったわね。直前で相手の作戦を見抜いたり、反撃の指示出したり」

「そんなことないわよ。それに、いちばん大事な魔法戦はダメダメだし」

「でも、試合を決定づけたのはやっぱレナだったと思うわ」 

 シェリーの両手を上げた賞賛に、レナはいつにないほど恥ずかしくなった。レナとしては昶に恥ずかしくない姿を見せるために頑張っただけであって、ここまでうまくいくとは思っていなかったのである。

 魔法戦はやはりみんなには何歩も遅れを取っているので、他でカバーしなければならない。他でカバーしようとすれば、それは魔力察知の能力を活かすしかない。とはいえ、まさかここまでうまくいくとも思っていなかったわけであるが。

 またそう思ったのはシェリーだけではないようで、他のクラスメイト達もレナの周囲にやってきて喜びと共に賞賛の言葉をかけてくれる。

「いやほんとすごかったって!」

「指示通りの場所にいたし」

「指示も的確だったしね」

「おかげで気持ちよく勝てたぜ。サンキューな」

 やばい、嬉しすぎてどうにかなっちゃいそう。レナは熱くなった頬を両手で包み込み、うーっと小さくなってしまう。シェリーほどではないにしても、四人もレナの今までの魔法の成績を知っているだけに驚きつつもこうなっても仕方ないと苦笑していた。

 こんなに褒めてもらえたのって、いつぶりだろうか。学院に入ってからは全く覚えがない。それだけに嬉しさも格別である。でもシェリー達でこんなに嬉しいなら、昶に褒めてもらったらどうなっちゃうんだろう。想像するだけで怖いものがある。きっと、昨日のアイナもこんな気持だったに違いない。

「それじゃ、みんなでお昼でも食べに行きましょ。こうして集まるのなんて、初めてなんだし」

 シェリーに誘われて、六人は競技会場の外にある外食店へと足を運ぶ。昨日から何も口にしていないシェリーは、緊張から開放されてようやく食欲がわいてきた。それどころか、お腹が減りすぎて背中とくっついてしまいそうである。

 一試合を乗り越えたことにより、六人の仲は一気に仲が深まった。次以降の試合では、もっとうまく連携して動けると思う。

 この後の試合も頑張って、いいところをいっぱい見せないと。そういえば、アイナはもう決勝レースの最中だっただろうか。予選レースとは比較にならないほど長距離になっているが、きっとどうにかして一位をもぎ取ってくるに違いない。アイナにばかりでかい顔をさせないためにも、しっかり頑張らなければ。

 シェリーの隣を歩きながらレナは、よしっと気合を入れ直すのであった。




 レイゼルピナの試合が終わったのと時を同じくして、誰にも察知されることなく会場を離れる二つの人影があった。

「この後もレナ様達の試合があるのですが、よろしいんでしょうか?」

「あぁ、期待してた以上だった」

 これより先は、もう自分で考えて自分で訓練を積んで成長していけるだろう。先程の試合でその確信が持てた。まだまだ教えたいことは色々あったが、いちばん大事な部分は伝えることができたと思う。

 特に驚いたのは中盤で相手校が盾を張って突っ込もうとした時である。魔力の中に含まれる意思を感じ取れなければ、あのような指示はできなかったはず。しかもその後にも後退しようとする相手校の選手の位置をちゃんと魔力の気配で察知できていた。

 魔力の気配だけで相手の位置まではわからなかったと思っていたが、知らない相手との手合わせとあっていつもと違った緊張感を持って(のぞ)めたからなのかもしれない。この感覚は、修練を積む上でもいい転換点になるはずだ。

「そういえば、レナ様が魔力察知の訓練を始めたのって、すごく最近ですよね?」

「あぁ、年明けくらいから」

「すごくないですか? あれって自分でも覚えてないくらいの頃から練習して身につくものだと思うんですけど」

「意識しなくてもできるようになろうとすれば、確かに年単位で訓練しないといけないけどな。そうじゃないなら、コツを掴めば多少はどうにかなる。実際、あいつも意識の大半を魔力察知に向けてただろうしな」

「さすが、源流使い(オリジネイト)の指導を受けておられるだけありますね。羨ましい限りです」

 長く魔術の習得を禁止されていたキャシーラは、自分にもご指導願いしますとしなを作って見せる。今でこそアマネと共に学んでいるが、それでもボロボロの文献や読めない記述がある。しかもそれを加味したところで、源流使い(オリジネイト)である昶の方がより進んだ魔術を習得しているはずなので、やっぱり直々に手ほどきをしてもらいたいところ。

 しかしそんなキャシーラのお願いは軽く流して、早く案内してくれと促す。

「もぉぉ、アキラ様ったら。昨日だって、本当に何してくださらないんですから」

「何かって、何だよ……」

「アキラ様……ほんとに付いてらっしゃるんですか?」

「いきなり何言い出してんだ本当に……」

「知りません。では、街の北側に参りましょう。馬を用意しておりますので。距離がそれなりにありますから、魔法だけで運ぶには少し難がありますので」

 少し不機嫌そうに鼻を鳴らしながら、キャシーラは競技場を後にする。その後ろについて歩く昶は、フードを深々とかぶって続いた。これでレナ達の姿も見納めだ。誰にも知られることなく、ただ消えるのみ。

 後ろ髪惹かれる思いを振り切って、昶は真・域外なる盟約ヴェルム・プロスペリスへと赴く。しかしその姿を、遥か遠方から見つめている者に気付くことはなかった。

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