調査報告・弐
先日、王立レイゼルピナ魔法学院への潜入、観察対象であるクサカベアキラ様との接触に成功いたしました。
初めてお顔を拝見したが、確かにレイゼルピナの民とは人種そのものが違うようでございます。
肌の色は濃く、瞳の色や頭髪の色もこの周辺地域では珍しい黒。ただし、近隣地域に見られる黒い目や黒髪をした人間の黒とも、また質が違いました。
また、腰に携帯する武器は、レイゼルピナを含んだローレンシナ大陸西側地域には見られない形状をしておいでです。
あえて言うならば、我々の使用する武器と酷似していると言えましょうか。
学院内では全く術を使おうとしないので、どのような術式を保有しているのかは未だ不明で、誠に残念です。
特定の友人がいるようだが、契約主の関係から女性が多いようにございます。
やはり、強い殿方に女性は惹かれるというコトなのでしょうか、どうなのですかミカド様。ミカド様がスメロギ様をお慕いしているのも、そういうコトなのでしょうか、どうか教えてくださいませ!
自分にはそのような経験がないのでわからないのです!
あのお方を見るだけで胸が高鳴って…………。
「まったくあの子は…………。クサカベアキラを、きちんと観察できているのでしょうかねぇ。今更ながら、人選を誤ったような気がして参りました」
報告書に目を通しながら、女は──アマネ=ミカドは嘆息する。報告書と言うには、あまりにもお粗末で内容がない。
確かに定期的に連絡をよこすようには言っておいたが、こんな半分手紙のようなものをよこせとは一言も言っていない。もっとも、気づかれていないならば、それはそれでよしとすべきではあるが。
だが、最後の一文にアマネ=ミカドは目を止める。
「これは…………。彼の力を試す、絶好の機会かもしれませんね」
早くスメロギ様に報告しなければと、アマネ=ミカドは席を立った。