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1 始まりは悲しみから

 僕は、紀野綾香さんが友達と話しているのを見つけました。綾香さんは、机の上に体を乗せて片足をあげています。いわゆるヤンキーです。彼女は黒い髪をボブにし、うすいオレンジの目は目つきが厳しくて星立港高校の一年生のみんな恐れている人ばかりです。ヤンキー仲間と一緒にいて先生の注意すら聞いていません。

 

 そんな彼女ですが、いいところもあります。まず、自分を持っているということです。よく友達と「かわいい」と言い合っていて自分がかわいいことをよくしっています。次に、ほかのヤンキーと違って横暴ではないということです。誰とでも話せる彼女はよく言いたいことを言ってくれます。帰りの会でずっと後ろで話している男子達やいちゃついているカップルなどに「はやく席付けよ」とみんなの代わりにいってくれるのです。

 

 まだまだ。言い足りないですが一言で言うと好きなのでしょう。はい、好きです。綾香さんのことが。星立港学園に入学してまだ数日ですが告白してもいいものでしょうか。僕はあなた、そう僕の良心に聞いているのです。

 

 綾香さんの足が上がります。いけません、下着が見えてしまいます。僕は急いで下を向きました。綾香さんの弱点は自分のことをもっと大事にしてほしいということです。もし付き合えたら最初にいう言葉は下着の話ですね。

 それで、どうすべきですか?告白すべきでしょうか?


 まだ、早いですか?もっと仲良くなってから?当たって砕けろ?


 そうですね、砕けましょう。僕は自分が男子の中で優れているとは思えません。勉強だけはできますが運動はできないし、面白いことをいえない。そんな僕が他の男子と差をつけるには行動するしかありません。僕は立ち上がり、綾香さんのもとに行きました。


 綾香さんに近づくほど、僕の心臓は暴れます。暴走族です。


「ふー」


 僕は息を一度吸って、肺に空気を押し込み脳に栄養を送ります。

 綾香さんにもう少しって時、綾香さんは僕に気付きます。たしか隣の方は、まぁ、いいでしょう。


「あの、綾香さん」


「なに、急に」


 綾香さんのオレンジの目が僕を捉えます。肉食動物のように力強いです。

 僕はまた大きく息を吸い込み、


「綾香さん、僕はあなたを愛しているにちがいありません!僕と一緒になってください!」


 クラス中に僕の声が響き渡る。まだ、お昼休みということもあって、クラスのみんな騒がしかったのに急に静かになりました。でも、僕には彼女しか見えていませんでした。


「え、はああああああああああ?」


 綾香さんは目を限界まで見開き僕を捉えます。


「ちょっと、こんなところでいきなり綾香になんてこと言うのよ。迷惑でしょ?」


 となりの方がいいます。そうそう、新津さんです。ですが、


「黙りなさい。あなたには関係ありません」


 僕が言うと新津さんはびくっとして黙りました。その光景を綾香さんは黙ってみています。あぁ、胸が苦しいです。ですが、急いで答えてほしいわけではありません。ただ、本心を聞かせてほしいのです。


「いや、急に言われても無理……」


「わかりました。失礼します」


 僕はもう綾香さんを直視できません。急いで部屋をでて、屋上に向かいました。

 太陽はまだ、僕の真上にあって僕の瞳を刺します。痛いです。目から冷たいものが流れてきました。これは太陽のせいに違いありません。

 やはりだめでした。もう、綾香さんと関わることはできないでしょう。涙と一緒に彼女の記憶が失われていきます。彼女と話したことはありませんけど、確かに幸せなじかんでした。ありがとう。


 クラスに戻るとみんなが僕を見ている気がします。いえ、きっと見ているのでしょう。ほかの人から見ればこんなところで告白する、自信過剰で自語りが大好きなはた迷惑な人にちがいありません。とくに、綾香さんのヤンキー仲間の女子はにらんでいる気がします。

 これからいじめられるのかもしれませんね。誰かを好きになるとこうも周りが見えていなかったのですね。僕は次第に頭が冷めていくのを感じました。

 このクラスにいられないかもしれない。僕はそんな嫌な予感がしました。

 たった一度の失敗で人はその人を決めつけます。そこには、決めつけなければ安心できない人の性格がのぞいているようです。


 授業が始まっても全く集中できませんでした。放課後まで、ぼーっとしていました。

 気が付くともう、帰りの時間で窓の外を見ると夕焼けが僕を照らしていました。


 僕は一度ため息をついて部活に向かいました。星部です。部員は三人ですが。ただ、星を眺めるだけだそうです。ドアをノックして入ります。


「遅くなりましたー」


 中には一人の小柄な先輩がいた、半袖の制服の上に上着を着ている。黄色い目をしていて。じとーっとした目だ。じとーっとした先輩は粟野あわの先輩だ。一つ上の。


「遅いぞー、宇野くん。みんな待っている」


「あれ、まだ部長来てないっすよね」


 部長は三年生だがら、結構来ないことが多い。


「火蓮先輩は休みだよ。塾行くんだって」


「みんなって粟野先輩だけじゃないっすか」


「細かいことは良いの。ほらー今日は何して遊ぼうか?」


「夏休みに行く予定のキャンプ場の話っすよね。部長もそれは行きたいって」


「そうだねー。っというわけで頼んだ」


「えー、わかりましたよー」


 僕はさっそく、パソコンでいいところを探すことにした。先輩はずっとうろちょろしていた。トイレだろうか。


「ねー宇野くん。下着みたい?」


 粟野先輩の方を見ると、スカートのすそをもって持ち上げる動作をする。


「暇なのはわかりますけど、もう少し落ち着いてください」


「はぁ、つれないなー。もっとかわいげのある反応してよー」


「先輩は好きな人いるでしょう。そういうことはしないでください」


「興味ない?」


「ないですね」

 

 第一今日は、振られたばかりだそんな浮ついた気持ちは持てないし、綾香さん以外の女性に興味などわかない。


「別にかわいい後輩になら見られてもいいよ?真面目に」


「そういうのは好きな人としてください。僕今調べてるんで、邪魔しないでください」


 どうして女子たちは、下着が見えることを気にしないでいられるのでしょうか。僕は普通に男子に下着を見られるのでも恥ずかしい。


「宇野くん、なんかあった?」


「はい?なんかって?」


「嫌なこと。今日はなんだか暗いよ」


「それで、そういうこと言ってたんですね。ちょっとだけ嫌なことありましたけど、もう大丈夫です。ありがとうございます」


「そう?あと、好きな人の話ほかの人に言ったらしめるからね」


 怖いな、いわないでおこう。ある意味粟野先輩のやさしさだったらしい。貞操感はもっと持ってほしいけど。僕はうなずいておきました。


「あと、つらいことがあったら私に言うこと。わかった?」


「わかりました」


 僕はそういうだけで吐き気がする。まだ、引きずっているのかもしれない。

 なんとかその日は平静を保って部活を終えました。


「キーンコーンカーンコーン」


「ありゃ、もうこんな時間だ。宇野くん、かえらなきゃ。今日は塾なんだにゃー」


「おつかれさまでした。粟野先輩」


 黄色い目が僕を見つめる。見透かされているのかもしれません。でも、人に言えるような悩みじゃないので。


「また、明日ねー。気を付けてね」


 そう言って粟野先輩は走って行ってしまった。危ないですよという言葉は空を舞った。

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