すずき と さとう が消えた。
「お目覚めの時間だぜ」
「......これが美女なら話は別だったんだがな」
「おいおい、それがわざわざ起こしてやったやつへの態度か?」
「はいはい、どうもね」
「しかしよく寝てたな、いくら先生がユルいっつても。終わっても寝こけるやつがあるか?」
「退屈なんだ。眠くもなる。」
「まぁいいか、それよりも田代、飯だ!飯」
「いいな、楽しみがあって」
「お前の寝顔もまぁまぁ面白かったぞ」
こいつ。
「......なぁ今井、俺の前って誰かいなかったか?」
「ん?前から、そこは誰もいなかっただろ?」
誰も、いなかった。誰も?
そんなことがあるのか?
だってあい えお順の6×5のど真ん中だぞ?
じゃぁ、前からっていつからだ。いつ、空になったんだ。
何か──おかしい。それに苦しい。
「おい今井、前からっていつの──」
「あぇ!!」
「なんだ?」
「このあんぱんぜんぜん甘くねぇんだ」
「へぇー」
「こんなあんぱんを置いておくたぁ、ゆるせねぇ。売店のおばちゃんに文句言ってくる」市販品のあんぱんについての文句を、売店のおばちゃんに言っても仕方ないんじゃないかい。
「っていないし、はぁ......」
「今、いいかな?」
「ん??」
「えっと、何かな小鳥遊」
(なんで高嶺の花である小鳥遊が俺に?な、なんだ。まさか、小鳥遊もこの違和感を感じて)
「えっとね。わざわざ心配する問題でもないかなって。でも、もやもやしちゃって」
今井、お前はマブだし無二だ。それはこれからも変わりない。しかし俺は新たな青春、男女の春なるものを手に入れたいんだ。お前なら背中を押してくれるだろ?
「別に遠慮する間柄でもないだろ?」
ここから始まるんだ。
「確かに!えっと」
灰色から青へと──
「バッテリーがレッドで──。心配してたんだ」
「......あ」
ヘッドパーツ側面には生命維持バッテリーの明示があり、小鳥遊はそれを心配してくれていたのだ。機械の
「徹夜したんだった」
「なるほど、それで。あんまり無理しないでね。じゃ、それだけ」
「あぁ──」なんだか、力が抜けた。
「何残念がってんだ」
「わ!」
「小鳥遊だろあれ?お前、何話してたんだよ。」
「......」
「いや、別に......」
「......」
「言え!吐け!!」
「いやだ!」
「このぽんこつジャンク!!どんな手ぇ使った。ファイルか!マクロか!それともワームか。まさか直接メモリをつないで──」
「ぶん殴るぞ」
「じゃあ吐きやがれ、さもないとお前の頭の中、直で覗くぞ!」
「ふ、ふざけんな」
「なら吐け!」
「い、いやだ!!」
「吐けぇ!!」
べつに何も甘い展開はなかったのだが、今井にこの思い出だけは。
二人でだけの思い出は──
俺はマブで無二からの尋問に黙秘を貫いた。




