表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢はおねぇ執事の溺愛に気付かない  作者: As-me・com


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/72

32:悪役令嬢の真実①

 ローゼお姉様は王子に塩を投げつけるのをやめて(たぶん塩がなくなった)手についた塩の欠片を払いながらため息を吐いた。


「確かにセリィナが産まれた時に、赤ん坊を連れ去ろうとした不届き者はいましたわ。でも犯人はすぐに捕まったと聞いていましてよ」


「あの侍女は何をどう勘違いしたらあんなことをしでかしておいてお父様の寵愛を得られるなんて思ったのかしらね?まぁ、一時的にとはいえアバーライン公爵家の包囲網を潜り抜けた手腕だけはすごいですけれど」


 マリーお姉様も同調して頷くと、人差し指を頬にあてながら首を傾げた。


「本当に。それにしてもあの愚かな侍女……生きていましたのね?あの時わたくしたちはまだ子供でしたけれど、お父様の怒り具合を見て絶対に“掃除”されると思っていましたのに……その辺はどうなんですの?お父様」


 呆れたように話していた双子の姉たちが言葉を投げ掛けた先にいたのはアバーライン公爵とその妻であるアバーライン公爵夫人……お父様とお母様、その後ろには老執事のロナウドも揃っている。その三人の新たな登場に会場内にいるほとんどの人間がざわめいた。


「……まったく、とんだ茶番だな」


「ええ、本当に。あんな知らせが来た時はなんの冗談かと思いましたけれど、まさか本気だったなんて……」


「ちなみに馬鹿げたことを言って公爵家に恩を売ろうとしてきた男爵家は後程きっちりと訴えさせて頂きますので、あしからずに」


 ロナウドがペコリと頭を下げると、お父様とお母様がまっすぐに私とライルの前まで歩いてくる。お姉様たちの時と同じくガン無視された塩まみれの王子とヒロインがポカンとした顔をしていた。


「セリィナ、大丈夫かい?」


「セリィナちゃん、怖かったでしょうに……よく頑張ったわね」


 優しい眼差しがさらに増え、それまであんなに怖かったはずのお父様とお母様の手が温かいと感じられた。ヒロインの存在が発覚すれば必ず酷い目に合うと……家族から蔑まされると本当に信じていたからなんだか不思議だったが、今なら血の繋がりなど関係なく“私”を受け入れてくれているんだと素直に思えたのだ。


 しかし私が安心しそうになった時、ピリッと張りつめたような声が耳に届いた。


「ライ……ラインハルト殿、なんと情けない姿をしているのですか。後でじっくりお話があります。わかってますね?」


「……はぁい」


 あれ?なんでロナウドはライルに詰め寄ってるの?それに笑顔だけどなんか怖い……。ライルも冷汗をかいて目を反らしてるし……もしかしてライルがロナウドに責められてる?!


「ま、待ってロナウド!ライ……ラインハルトは何も悪くないの!私を……私を守ってくれただけで……だから、私が悪いの!」


 私は思わずライルの前に飛び出して詰め寄るロナウドに抗議してしまった。少し前だったらこんな偽物の言葉なんか信じてもらえないだろうと諦めていたかもしれないが、今なら言える。全部言ってちゃんと謝れば、“私の言葉”を聞いてくれる。そう思った。それに、私を守ってくれたライルが責められるのだけは我慢できなかった。



「ごめんなさい!ずっとみんなを騙してたの!私は平民の子供らしくて!あそこにいるヒロ……フィ、フィリアさんが本当のアバーライン家の娘で!だから、ライルは何も知らなかったの!……お父様、お母様も、私はどんな罰でも受けるし公爵家からも出ていきます!だから、この人を罰するのだけはやめてください……!お願いします……!」


「……セリィナ」


 こんなことになる前に、もっと早く打ち明けていればよかった。この人たちならきっとどんな言葉でも聞いてくれたはずなのに。そうすれば例えライルと離れ離れになっても、今よりずっといい方向に何とかなっていたのだ。


「ごめんなさい……!ごめんなさい!!」


 私は自分の保身ばっかりを考えて逃げていただけだ。全ては私がみんなを信じきれなかったせいなのに、今まで私の支えになってくれていたライルが責められたり罰せられるのだけは絶対に嫌だった。


「セリィナ、よく聞きなさい」


「は、はい……」


 お父様の両手が私の肩をつかむ。さっきは優し気に見えたが今の厳しい表情を見て背筋に冷たい汗が流れた。やっぱり怒っているのだろうか……本物の娘を目の前にしたら私への憎しみが出てきたのかもしれない。



「確かにセリィナが産まれた時、赤ん坊が連れ去られる事件があった。だが……」


「ほら、やっぱり!!」


 お父様がさらに言葉を続ける前に、ヒロインが塩を払いのけながら私を指差した。


「あんたは薄汚い平民の子供で、わたしが本物の公爵令嬢なのよ!!さぁ、お父様!わたしを見て!わたしこそがお父様の娘よ!!」


 ヒロインが両手を広げて一歩前に出る。しかし、お父様は自分の娘であるはずのヒロインに氷のように冷たい視線を向けこう言ったのだ。




「……その日、赤ん坊はふたりいた。ひとりはセリィナ。そしてもうひとりは同じ日に産まれたセリィナの乳母になる予定だった者の子供だ。


  しかしふたりが乳姉妹として対面する前に乳母の子供が拐われたのだ。たまたま先にセリィナの部屋に寝かされていた乳母の子供がな」と。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ