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ちび神様の楽園ダンジョン  作者: もちもち物質
第一章:ダンジョンは村に進化した!
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衣食足りてダンジョンを知る*2

 ということで、俺はちょっと考えた後、自分のTシャツを一回分解して、それで衣類を一式作ることにした。

 ぶっかぶかの超オーバーサイズだったTシャツは、ジャストサイズのタンクトップになった。袖は諦めた。布が足りねえ。

 それに、半ズボンと、下着。パンツ。パンツがようやく手に入ったのである!

 Tシャツが綿とポリエステルの混紡生地だったから、半ズボンはポリエステル製、パンツは綿メイン、という風にしてある。やっぱりね、パンツがポリエステルってのはね、ちょっとね。よろしくないからね。

「はあ落ち着いた」

 ひとまず、これで衣類はなんとかなった。露出狂少年になることは避けられたというわけである。めでたしめでたし。

 ……できることなら長袖長ズボンがいいんだけど、布がTシャツ1枚と鞄しか無かった以上、どうしようもなかった。鞄の方は鞄の方で、そのまま鞄として使いたかったし。


 さて。

「じゃあ、次は食料の確保ということで……」

 ということで、次に俺がいそいそ始めるのは食料調達である。そりゃあね。食べないと死ぬからね。今、俺が持ってるのって昼食用のBLTサンド(Bがこれでもかと言うほどケチられている)と、ペットボトルに入ってる麦茶だけだからね。半日で尽きる。

 ……が、石を分解して元素レベルにまで細かくして、それを再構築することができるんだったら、話は変わってくる。

 当然、石の中には多少は水が含まれてるんだろうし、炭素も多少は入ってるだろ。それらをくっつければ、最低でも炭水化物までは作れるっていう計算な訳だ。

 で、炭水化物の材料はともかく、作り方については……一度分解吸収した物質については、情報がものすごく細かく分かる。俺が知らない仕組みの物体だったとしても、ダンジョンのアシストで再構築できるようになるようだ。

 例えば、今の俺はガソリンエンジンの仕組みなんざすぐさま図解できないが、一度ガソリンエンジンを分解吸収しちまえば、多分、材料さえ揃えばガソリンエンジン作り放題になる。まあ、設計図が手に入る、ってことかな。そういうかんじ。

 逆に、『物体を再構築したい時には、俺の知識が及ぶものか、はたまた一度分解吸収したものしか作れない』とも言える。多分ね。まあ、検証はおいおいやっていくとして……。

 ……情報、つまり設計図の確保のため、BLTサンドのパン部分をちょこっと分解吸収して……いざ!




「コスパが悪いどころじゃねえ!」

 ……はい。結論から言えば、『実験レベルでは可能だが、実用は不可能』という具合だった。

 というのも、まあ、コスパが悪すぎた。具体的には、石からパンを生み出そうとすると、とんでもなく魔力を消費するのである。あと、俺が疲れる。なんとこのダンジョンパワー、俺にも負荷が掛かることがあるっぽい。

 まあ要は、石からパンを作るのはコスパが悪すぎて実用が現実的じゃないんだよな……。


「これ、せめて炭水化物の状態から始められればコスパいいんじゃないかな」

 が、俺は諦めない。

 流石に、石からパンを作るのは無理が過ぎた。

 だが……例えば、草からパンを作るのは、どうだ?

 植物の細胞壁および植物繊維の主成分たる、セルロース!あれは炭素と水素と酸素でできてるんだから、石なんかよりよっぽど簡単にでんぷん質が作れそうじゃないか!?

 いや、いっそのこと、木の根っことか、木の実とか、そういうのが見つかればそれでいいんだ。植物が蓄えているでんぷんを分解吸収から抽出すれば……行ける!俺の食糧が、手に入る!


 ということで。

「しょうがない。探検に行こう」

 ……俺は食料、つまりは植物を探しに、この洞窟の外に出てみることにしたのだった。




 持ち物は、お茶とBLTサンドだけ入れた鞄。あと、花崗岩を分解して作った磁鉄鉱から作った小さな鉄のナイフ。これ作るのにかなり体力使った気がする。慣れればもうちょっと変わってくんのかね。まあ、今後に期待。

 それから、外を歩き回るんだったら靴が欲しいな、と思ったので……TOEICの参考書1冊を分解して得た紙で、草鞋めいたサンダルを作って履くことにした。耐久性が低いことは間違いないので、もし外に出て植物繊維が手に入ったらそれに履き替え、ってことで……。

「……ん?あれ?」

 と思ったら、参考書を分解した瞬間、なんか、俺の中で力がみなぎるような、そんな感覚があった。

 なんか……石を分解してそのまま吸収した時も、なんか力が湧いてくるようなかんじはあるんだけど……参考書は、石の比じゃなかった。

 あと、参考書の内容、全部頭の中に入った。

 ……いや、これはどうなんだ!?え!?今の俺はTOEICで満点狙えちまうのか!?怖い!これは怖いよ!やだあー!


 怖いのはさておき。

「分解する物質によって、得られる魔力が違う、ってことか……?」

 どうも、参考書を分解した時に得られる魔力は花崗岩やティッシュと比べてとんでもなく多いらしい、ということは分かった。

 ついでに、参考書を分解して、その後、特に文字が書いてあるでもない草鞋を作る分には、魔力消費がそんなに必要なかった。

 ただ石ころを分解してブロックとして出すと、魔力は差し引きほぼゼロになるんだが……今、参考書を分解して紙の草鞋を出したら、差し引きが大幅プラスになっている。

 ……ちょっと、気になるな、これ。




 まあ、気になるがそれは置いておくとして、まずは洞窟の外に出てみることにする。元気な内に食料を確保しておきたいからね。

 ……が、洞窟の外に出るまでが、とんでもなく大変だった。

 というのも、この洞窟……めっちゃ、深いのである!

 そりゃそうだね!あの天井の高さがある洞窟だったもんね!当然、深いわ!

 まあ、不幸中の幸いというか、俺はダンジョンの中の様子は把握できるっぽいので……疲れるけど、まあ、一応、正確な地図を見ながら移動する、みたいなことはできるわけだ。

「……ここ、道作っとこ」

 途中、ショートカットしたい時には壁を分解して吸収して魔力にした。まあ、こうでもしないと、小学生の体で探検は、無理よ。




 そうして俺はなんとかかんとか、洞窟の外に出た。

 ……そこは、概ね、森だった。草木が生い茂り、木漏れ日が優しい。

「ここもダンジョンの中ではあるんだな……」

 洞窟の外に出てみても、なんとなく『ここもダンジョンらしいぞ』という気分である。まあ多分、ここもダンジョンなんだろう。ダンジョンの敷地がどういう風に決まっているのかは分からんが……まあ、なんとなく『俺のテリトリー』ではあるようだな、と分かる。

「えーと、何か食糧……と、木材とか植物繊維とか、なんかそういう……」

 さて。折角の森なので、ありがたく恵みを頂いていくことにしよう。

 俺は早速、落ちている枯れ枝を片っ端から拾って、鞄に……。

「いやめんどくせ。全部分解して魔力として貯蔵しよう」

 ……わざわざ荷物を増やす必要は無いな。そのままの形で持ち帰りたいものでもない限りは、分解吸収して、魔力の形で貯えておいた方がいい。俺の小学生ボディの体力は有限なんだし。

「幸い、分解吸収だけならそんなに体力が必要ないみたいだし……あ、分解しすぎると訳分かんなくなるな。あーあーあーちょっとちょっとちょっと、木の枝の情報そんなに要らない要らない、樫の遺伝子情報とか要らないからあーあーあーあー!」

 ……意識して、俺のボディに流れてくる情報を絞っておかないと、とんでもない量の情報が流れ込んでくる。

 なんだ?石よりも木の方が情報が多い?得られる魔力量も多い気がする。これは……まあ、ありがたいんだけど……。

 ……しかも。

「うぇっ……!?」

 うっかり、木の枝についてた蟻の死体を分解してしまったらしい。その瞬間、とんでもない量の情報が流れ込んできた。

 それこそ、俺がたっぷり5分ぐらいフリーズする程度の情報が脳内を巡っていったので……。

「……つかれた」

 ……気力が消えそうである。




 少し反省しつつ休憩したら、少し気力も戻ってきた。なので改めて、慎重に事を進めることとする。

「情報が俺の脳味噌を経由しないように意識しないとなあ……」

 ……さっきから分かってきたのは、木だの蟻だの、そういうものを分解吸収するにあたってそれらの情報が得られる訳なんだが……それは意識してシャットアウトすることができそうだ、ということである。

 というか、意識してシャットアウトしないと、本当にとんでもない量の情報が来ちゃう。遺伝子情報とか。そういうレベルのが。

 さっきは蟻の人生……いや、蟻生?の情報が流れ込んできたし……いや、これが役立つ時もあるのかもしれないけれど……少なくとも、必要な時に引き出せればそれでいいんだ。

 得られた情報はダンジョンの中にアーカイブされるらしいから、一々俺が情報を読みながら分解吸収を進める必要は無い。なので俺はひとまず、意識して情報を体に入れずにダンジョンへ直にぶっこむやり方を身に付けることにした。

 まあ、少し練習したらなんとかできるようになってきた。なのでまた遠慮なく、ガンガン物資を分解吸収していくことにする。


 ……そうして俺は一通り、ダンジョン前の除草作業か何かの如く、草とか枝とかを分解吸収しまくったし、水場を見つけて水も分解吸収しまくった。し、それらの情報を収集しまくった。

 なので、いよいよ作れる訳だ。

「出でよ……セルロース繊維!」

 植物の中には必ずあるそれを、植物を組み替えて抽出する。花崗岩から磁鉄鉱だけ取り出すのと大して変わらんね。

「そしてセルロース繊維をセルロース布に変換!」

 更に、セルロース繊維を撚り合わせて糸にして、織りあげて布にしたものを生み出す。これも、花崗岩をブロック状にしたのと変わらんといえば変わらん。アレよりは疲れるけど。

 ……だが、これで俺の苦労も報われる!

「セルロース布をリリースして……パンツ召喚!」


 ぽん。

 ……俺の目の前には、パンツが生まれていた。

 やったぜ!これで2着目のパンツ!着替えができるね!ついでにパンツ以外も作っとくか!




「よく考えたら衣類に付いた垢とかだけ分解吸収すれば、着替えとか無くても良かった気がする」

 早速、特に意味もなくパンツを履き替えた俺だが、よくよく考えたら無駄なことをしたような気もしないでもない。

 だがまあ……ひとまず、ダンジョンの力を使う練習としては良かった気がするな。練習のおまけに着替えとパンツ、あと、布でできた靴と、植物繊維を編んで作ったようなサンダルも試しに作ってみた。

 流石に紙の草鞋は頼りないんで、ひとまずサンダルに履き替えておいた。よし。


 ……さて。

 衣類の材料になったり燃料になったり、色々と便利な植物素材が手に入ったのはとても嬉しい。

 が、俺の本来の目的は、食料を見つけることなのだ!BLTサンドBほぼ抜き1つじゃこの先生きのこれない!

 ということで、一応、木の実とか、芋とか、食えそうな草とか……そういうものを探してみたんだが、見つからない。

 ……というか、一応、分解吸収の段階で、胡桃の木とかブラックベリーの茂みとかは見つかってるんだが……そこに、実が無いんだよな。

 季節じゃない、ってことなのか、既に動物とかに食われた後なのか。まあ、いずれにせよ、食べ物が無い。運が悪いね。まあしょうがないね。

「まあ、当初の予定通りいくか」

 ……ということで、俺は早速、分解吸収した植物からパンの再構築を試みる!

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― 新着の感想 ―
やっぱ石をパンにできなきゃ神は名乗れないね
サンドイッチを作るのに必要な材料って本当にたくさんあるの。パンだけでも塩、バター、卵などたくさんの材料が入っているのよ。
石パン水ワインだけ最高効率でできる男がいてな…
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