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ちび神様の楽園ダンジョン  作者: もちもち物質
第三章:ダンジョンは世界を飛び越えた!
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ダンジョンからは逃げられない*3

「ワァオー」

 なにこの世紀末村。俺はこんな村を育てた覚えはありません。

 でも俺の目の前にあるものは現実。これが現実。どう見ても世紀末。皆さん肩パッドと武装チャリがよくお似合いですね。というか肩パッドはどこから出てきたのよ。異世界でもイカれた奴らのファッションとして肩パッドが定着してるってこと?

「あっ!アスマ様ー!そろそろ持ちこたえられなくなるかもって話してたんだぜ!来てくれてよかったぜ!」

「おかえりアスマ様!そろそろ堀の魔物を片付けてね!すぐでいいよ!」

 まあ、そんなイカれたメンバーであるが、流石に疲弊の色が見えている。疲れてぜえぜえしてるヒャッハー軍団って、なんかこう……なんかすげえな!

「うん!皆ありがとう!さあ城壁の中へ戻るんだ!」

「こんな村の外に居られるか!俺は村の中へ戻らせてもらう!」

「戻るぜ戻るぜ俺は戻るぜ!」

 彼らもそろそろ限界だろうし、さっさと城壁の中へ入ってもらう。これでよし。俺達も魔物を数匹轢殺しつつ、城壁の中へ入って、跳ね橋を上げてもらって……さて。

「多分、そろそろ来ると思うんだよなー……」

 ……俺は、嫌な予感でいっぱいである。


 とりあえず、堀の中で焦げてる魔物の死体を分解吸収して片付けていくが……何せ、一区画分、片付けられねえところがあったからな。

「よし来てる」

 やっぱりね!来てると思ったよね!

 ……方角は、北東。そっちの一角だけ、魔物の死体を片付けられない。

 つまり、相手の認識範囲内に入ってる、ってことである。目がいい奴がいるってことか、或いは……エルフ達の妨害の魔法みたいなのを使ってるのか。

 ……これで怖いところがさあ……その、北東方向に、人影が見えないことなんだよね。

 そう。見えないの。人影。

 相手の姿は見えないのに、相手は、こっちが見えてるっぽい。或いは、見えていなくても近くに居て、魔法を使っているっぽい。そういうことなのである。




 俺は迷った。一瞬、迷った。

『姿を消す魔法』みたいなものの可能性も、考えた。だがそれは流石になあ、ってことで……可能性を絞って、結論を出す。

「ま、知ってるよ。俺達もさっきやった技だしな……」

 この、ファンタジーな世の中ならあり得る話だ。地上を見て、空中も見て、それでも相手が見当たらねえ、ってことなら……。

「あいつら、どっかから地面掘って来てるんだろ?」

 ……大方、そういうことになるだろうなあ、と。


「ねえミシシアさん、リーザスさん。地面に穴を掘る魔法みたいなのってあるの?」

「俺は聞いたことが無いが……ミシシアさんはどうだ?」

「え?穴を掘る魔法?うーん、そんな、専門の魔法は聞いたことが無いけれど……でも、魔法で穴を掘るだけなら、いくらでも、どうとでもできるんじゃないかなあ」

「だよねー」

 はい。まあ、相手はファンタジー力いっぱいの連中だからな。色々とあり得ねえことをやってくれちゃうわけよ。全身鎧を着た状態でハイジャンプしてくれるし、二酸化炭素いっぱいの部屋にお連れしてもしばらく意識があるし……。

 なら、穴掘りくらい、余裕のはずである。

「となると……あの、魔物を消し損なったあたりのところから、堀の下を通って城壁の内側に出よう、ってことかな?」

「だろうな。流石に、どこをどう通っているか分からないダンジョンに直接穴を掘り抜いて侵入しようとは考えないだろう」

 ね。まあ、いくらファンタジーといえども、穴掘りだからね。現実的に考えるなら、やっぱり相手は『とりあえず堀と城壁を抜けられる程度に穴を掘って、パニス村内部に出よう』ってかんじなんじゃないかな。


「えっ、えっ、アスマ様ぁ、それ、大丈夫なの?」

「まあ……実は、穴を塞ぐ、ってことはできない。ダンジョンパワーは敵が近くに居ると発動しないので」

 さて。現状が分かったところで、対策だ。だが、直接の対策をするのは中々どうして難しい。

 相手がどこから穴掘ってきたんだか知らんが、その穴の中に色々流し込んで一網打尽、ってことは考えられる。が、そうなると……こう、村への影響が、怖い。

 特に、被害が拡大しそうな派手なやつは、絶対に使いたくない。シアン化水素がパニス村内部でガス漏れしたら俺は発狂する。間違いなく。同じ理由でガソリンとかも使いたくねえ。地盤が崩落とか絶対に嫌だ!

「あ、あの、穴なら塞げます!さっきのダンジョンに連れていかれて、壁、出したから……」

 が、ここで聖女サティが元気にやってきた。

 そう!この聖女サティ、既に金鉱ダンジョンの入り口を塞ぐ障壁を出させられていたことで実績を証明済み!やったね!聖女サティが居れば穴は塞げちまうのだ!

「やったね!だったら、奴らの侵入を防げるね!」

「いや、ミシシアさん。それは違うんだな」

 ……が、今回の俺は、『侵入を防ぐ』なんてことは、しない。

「ちょっとダンジョンを作り替えて、奴らが城壁の下を掘り抜いたらすぐ、ダンジョンの通路に入るようにしようと思う」

「えっ!?わざわざダンジョンに入れちゃうの!?」

「うん!ここで逃がすと後に尾を引くから!」

 敢えて、誘い込んで、閉じ込めて、そして俺の最大の能力を発揮できるこのバトルフィールド……パニス村ダンジョン内で、決着をつけてやる。

 これ以上、あれこれやられたらたまったもんじゃねえからなあ!絶対に逃がさねえーッ!




「……なので、聖女サティには、やっぱり壁を出してもらいますね」

「あの、お役に立てる……?」

「立てる立てる。聖女サティが出す障壁で、穴を塞いで……奴らを逃がさないようにしてもらいますんで」

 ということで、聖女サティにはやっぱり働いてもらう。敵のすぐ近くでも、何の準備も無くても、いきなり障壁を出せる能力だからね。それって、ダンジョンには無い特殊能力だからね。俺にも欲しい、その能力。

「そういう訳で、リーザスさんとミシシアさんはエデレさん達に状況を説明してきてほしい!その間に連中を誘い込んで全員ダンジョンに入れておくから!」

「分かった!行ってくるねー!」

「なら、俺は冒険者の方に……あいつら、話を聞くだろうか……」

 ……ということで、準備万端。ここからは俺のターンだ。下手にダンジョンに侵入しようとしたらどうなるかってことを、アイツらに教えてやらなきゃならねえよな。

 それで、『知らなかったのか?ダンジョンからは逃げられない……!』とか言ってやるのだ。アイツらダンジョンを舐め腐りすぎだからな!ダンジョンの恐ろしさをとくと思い知らせてやる!




 そうして俺は、パニス村地下にダンジョンの通路を伸ばした。今、穴掘りしてる連中の穴がダンジョン通路にぶつかるように調整して、そこの様子を見ていたところ……。

「おっ!来た!よし!全員入った!これで入り口はノーマーク!」

 ようやく、穴掘り班の作業が終了!奴らは無事、ダンジョン通路に穴を掘り抜き、ダンジョン通路内へと足を踏み入れたのだ!

 よーしよしよし!今の俺のテンションはアレだ!某ホイホイに害虫が引っかかる瞬間を目撃した時のアレだ!嫌悪と憎悪とやる気と好奇心に満ち溢れた、まるで小学生が如き残忍さが混ざった楽しいテンションだぜ!

「聖女サティ!出番だぜ!」

「はい!」

 ということで、ホイホイされた教会関係者っぽい連中を閉じ込めるべく、聖女サティに働いていただく。

 聖女サティに『じゃあ、この城壁を地下に伸ばすようなかんじに障壁を出してね』とお願いすると、聖女サティはプルプルしながら何やら念じ始め……そして、『ふぃーん』みたいな音と共に、光の障壁が出来上がった。でかした!

 これで連中は袋のネズミ!後は囲んで叩くだけだぜ!




 そうこうしている間に、ミシシアさんとリーザスさんが戻ってきた。エデレさんと、冒険者数名が一緒である。

「アスマ様!ここのダンジョンに敵を誘い込んで叩く、と聞いたけれど……」

 エデレさんは非常に心配そうな顔である。そりゃそうだよね。自分の村の地下でこれからドンパチ始まるわけだからね……。

「あ、うん。そういう訳でこれからパニス村ダンジョンは戦場になりますが地上への被害が出ないように極力気を付けますので、ご容赦頂きたく……」

「そんなのはいいのよ。気にしないでアスマ様の好きなようにやっちゃってくださいな」

 が、エデレさん、俺が想像していたのとは逆のことを言い出した。

 ……いいんですか?それ、本当にいいんですか?

 いや、これはエデレさんとしては『ダンジョンの神』である俺に遠慮しているやつだな、と思って、ちらっ、とエデレさんを見てみたところ……。

「それで……ぶっ潰してやって!」

 ……エデレさん、大層勇ましい顔をしていらっしゃった。

 うむ。

「うん!分かった!必ずやぶっ潰す!」

「ありがとう、アスマ様!よろしくね!」

 ……うむ。

 こういう時は、まあ……お互いに振り切れちまうのが一番いいな!下手な良識はかなぐり捨てる!遠慮は無し!もうそれでいこう!うわあああああああ!


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― 新着の感想 ―
慌ただしくなってまいりましたね!今回スライム全く出てませんでしたよ?壁はスライムで代用しましょうよ!
エデレさん、流石! よそのダンジョンにちょっかい出してくる不届き者は消毒しないとね!
アスマ様、やーっておしまい!アラホラサッサー!
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