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魔法の呪文で

作者:

私は知っている。


貴方が如何に素敵な女性かを。


ボロボロの布切れを縫い合わせただけの不恰好な服を身に纏う貴方の本当の姿を。


本当の貴方は国中の誰よりも美しい容姿を持っている。それこそシンデレラ(灰かぶり姫)なんて呼び名からは想像も出来ない程に。


当然私は、外見だけじゃない貴方の内なる魅力だって知っているわ。


毎日毎日、義母や義姉たちから酷い虐めを受けて、召使の様に雑用を押し付けられて、屋根裏部屋に追いやられても、文句一つも言わずに夢はいつか叶うと信じ、過ごしてきた。


貴方は素敵な女性よ、エラ。


貴方程美しい女性は他に居ないわ。


貴方程心優しい女性は他に居ないわ。


貴方程夢を信じ続ける誠実な女性は他に居ないわ。


だから私が貴方の夢を、叶えてあげる。


嗚呼、お城の舞踏会に行きたいのね。それなのにあの義母と義姉たちは貴方を置いて行ってしまった。


なんて酷い人達なの?貴方を1人置いて行くだなんて。


嗚呼、泣かないでエラ(私のお姫様)


大丈夫、私が貴方の願いを叶えてあげる。


まずはドレスが無いとよね。


他のどんなドレスよりも貴方に似合う最高のドレスを作ってあげる。


ドレスの色は貴方のその美しい瞳と同じ、青色にしましょう。


ねぇ、知っているかしら?青色はね、聖母マリアのシンボルカラーとも言われているの。


優しさに満ちた貴方とピッタリでしょう?


ほら、やっぱり似合っているわ。つい見惚れてしまう程にね。


ドレスが出来たら、髪も結って、ドレスに合わせた装飾品も付けてあげる。


貴方のその美しさを魅せるにはあんまり着飾らない方が良いと思うの。


だから、あんまり派手な装飾品をいくつも付けたりしないわ。


青く煌めく小さな宝石の付いたイヤリング、貴方にとっても似合っているわ。


ドレスは気に入ったかしら?それなら次はお城に向かう馬車を用意しましょう。


かぼちゃに杖を一振り、ネズミに、馬に、犬に杖を一振り。


そうすれば、かぼちゃは豪華な馬車に、ネズミは馬に、馬は御者、犬は従者へと変わるの。


最後に私のとっておき。馬車にも、ドレスにも、貴方自身にも似合うとっておきのガラスの靴をあげる。


この靴は貴方だけにしかピッタリと入らないの。


貴方の足に合わせて作った、特別な靴。


嗚呼、私も貴方がこの靴を履いて、このドレスを着て、優雅に舞踏会で踊る姿を見てみたい。


誰よりも近くで、貴方の隣で。


そういえば、一つ言い忘れていたわ。


魔法で作ったものは鐘が鳴る時間、12時までしか姿を保てないの。


だから絶対に、12時までにはお城を出て頂戴ね。


、、、もうそろそろ時間ね。じゃあ馬車に乗って頂戴。舞踏会、楽しんでくるのよ。









嗚呼、行ってしまった。


エラ(私だけのお姫様)が、本当の姿のままで、王子様のいる舞踏会へ。


ちゃんと、約束を守ってくれるかしら?12時までには城を出る約束。


きっと守ってくれるわよね、だってそんな誠実なエラの姿をずっと見てきたのだから、間違いはないわ。


問題は、王子様の方。


あの美しいエラの姿を見れば、王子だけじゃなく、この国の全ての男が見惚れること間違い無いもの。


もしも、王子がエラに一目惚れして、エラも王子を選んだら?


もしも、エラがそのまま王子と結婚してしまったら?


そうなったら私は、、、、


いいえ、そんなはず無いわ。


だって、魔法は12時には解けるのだから。


仮にそうなったとしても、王子はエラの着飾った状態しか知らない。


エラの全てを知っている私とは違ってね。


だから平気よ、エラが王子に選ばれるわけがない。


それにエラだって、王子なんて選ばないはずよ。


王子を選ぶくらいなら、きっと私を選んでくれる。


ずっと昔から見て来たのだから。


当然、見て来ただけでは無いわ。エラに対する義母と義姉たちの虐めが酷い時には、こっそり治癒の魔法をかけてあげたりもしたわ。


心優しいエラだもの、たとえ私の存在に気が付いていなくとも、今まで幾度も無くその身を救って来た私を捨てて王子を選ぶだなんて、するはずがないわ。


大丈夫、大丈夫。









12時を知らせる鐘の音が聞こえる。


魔法が解ける時間だわ。


エラは間に合ったかしら。


あの家に私が居続ける訳にはいけないと、家に戻って来たけれど、やっぱり待っていたほうが良かったのかしら。


嗚呼、考えれば考える程に頭の中がエラの事で埋め尽くされていく。


エラは無事に家に辿り着けたのかしら?


エラは義母や義姉たちに正体をバレずに居られたのかしら?


エラは舞踏会を楽しめたのかしら?


エラはどうして舞踏会に行くことを望んだのかしら?


エラは王子に見惚れられたりしなかったかしら?


エラの方も王子に惚れたりしていないかしら?


エラは私のことをどう思っているのかしら?


エラは私を選んでくれるかしら?


エラへの心配、疑問、王子への嫉妬、そんな美しさの欠片も無い感情で頭の中が埋め尽くされていっても、私はそれすらも喜ばしく感じてしまう。


嗚呼、エラ。私だけのお姫様。誰よりも貴方のことを愛しているわ。


貴方を手に入れる為なら、私はなんだってするわ。


この特別な力(魔法)を何の躊躇いも無く悪用だって出来る。


私から貴方を取ろうとするのであれば、たとえこの国の王子であろうと殺してやる。


嗚呼、今頃エラは何をしているかしら。何を考えているのかしら。


愛しているわ、エラ。


だから王子様のことなんて忘れて仕舞えばいい。どうせ今日の舞踏会限りでもう二度と会う事なんて無いのだから。









どうして?なんで?


どうしてなの、エラ?


この記事は一体何なの?


ただのデマよね?


貴方が王子に選ばれて結婚するっていうのは。


そう、嘘よ!私はこんなもの絶対に信じないわ!


だって、可笑しいでしょう!?


心優しく誠実な貴方が!昔から見守って来た私よりも!ポッと出の王子なんかに!貴方の着飾った姿に惚れた王子なんかに奪われたなんて!


嗚呼、わかった。


わかったわ、エラ。そうよね?それしかあり得ないもの。


貴方は王子に脅されたのでしょう?結婚しなければ周囲の人達諸共処罰する、と!


心優しい貴方はそうさせない為に嫌々嫁いだのでしょう?


嗚呼、エラ。貴方はなんて優しい人なの。


大丈夫よ、安心して。私が貴方を助けてあげる。


王子を殺して、貴方をあの城から連れ出してあげる。


そうしたら、二人でこの家に住んで永遠に共に暮らしましょう!


そうと決まれば早く準備をしなくてはね!王子が早々に結婚式をするとでも言い出したら大変だもの!


待っていて頂戴ね、エラ。


私が貴方を救け出してあげる。









「ひっ!何なんだお前は!国の最高峰を誇る我が第一騎士団を一瞬で倒すなど、、、」


「おいそこの下っ端!早く上に報告を!ローブを纏い、顔を隠した何者かが城に侵入したと!」


報告、上への報告、、、


報告が行けば、王子の耳にも入るかしら?そうすれば、私の前に現れていただけるかしら?


あの下っ端と呼ばれていた者は見逃してあげましょう。


ただし、余計な邪魔を入れた指示役の恐らく騎士団長と思しき人はさっさと退けた方がいいわね。


口も態度も悪いけれど、頭がきれるようだもの。下手に動かれて強力な魔法を使うことになるのはごめんだもの。


出来る限り魔力は溜め込んで、王子を殺すときに盛大な魔法を使いましょう!そうして王子の元から救け出したエラにもう一度あの魔法をかけてあげましょう。今度は二度と解けない魔法で永遠に、私だけの美しいエラに変えてあげるのよ。


嗚呼、いけないわ。戦いの最中で考え事だなんて。


エラを早く救け出す為にも、まずは邪魔な奴らを排除しなくちゃよね。


「ぐっ、、お前まさかその力、、、魔法か?」


どうして私がこんな問いに答えて差し上げなければいけないのかしら?


「何故、魔法使い様が、、このような事を、、、、、」


やぁっと意識を失ったわね。本当にしぶとい男だったわ、第一騎士団団長の名は伊達じゃ無いってことかしら?


、、、「どうして」ね。


そんなこと決まっているじゃない。全ては愛するエラの為よ。


煩わしい。こんな事考えている場合じゃ無いのよ。早く王子の元に行かなくてはいけないのだから。









この城、、、衛兵()があまりにも多すぎるわ!


一体全体、この王城だけで何人の兵を雇っているのかしら。


まぁ魔法の使えない貴族連中なんて、こうでもしないと自分の身の安全を守れないのだから仕方が無いわよね。


本当、これだから魔法も使えない癖に権力ばかり振りかざす奴らは哀れよねw


、、、また援軍が来たのね。大勢の足音がするわ。


けれど、何かがおかしい?


先程までと足音が違う。衛兵達の重苦しい足音では無くて何かこう、まるで貴族や王族の履くヒールの様な、、、


「捕らえたぞ!」


!?


正面の足音に気を取られて気がつかなかった、、、まさか先程倒した奴らが起き上がってくるだなんて。


これでは逃げることも魔法を使うこともできない。折角王城まで侵入できたのに!エラを助け出す計画が!


「その者が、侵入者とやらか」


王だ。この国の最高権力者、国王陛下だ。


私を捕らえた衛兵共に頭を抑え付けられている所為で顔を拝見する事は出来ないけれど、その重圧的な声で分かる。


ここに国王陛下がいらっしゃるという事は先程の足音は陛下と護衛、そして恐らく私の最も恨む男、この国の第一王子、チャーミング殿下もいるだろう。


「面を上げよ」


顔を上げさせる為にと衛兵に無理やり掴まれた頭が痛む。絶対に後で呪いの魔法でもかけてやる、このクソ衛兵。


、、、今私の眼前に迫って来ているものは何?


衛兵の、手?


まさかこの衛兵、私のローブのフードを退けようとしているの!?


ダメ!止めなさい!!


、、、嗚呼、最悪よ。


あの憎らしい王子の顔が見える。


まだマシだと思えるのはその憎らしい顔が、驚いた様な間抜けズラになっていることくらいね。


折角ここまで来たのに衛兵に捕まって、殺したい相手は周囲に護衛を連れていて、しかも国王陛下まで御一緒だなんて。


嗚呼、王子が恨めしい。


もし私が両手を塞がれていても魔法を使うことが出来れば、今すぐに魔法を使って衛兵の拘束を解いて、私を乱雑に扱った衛兵に攻撃魔法を飛ばして、直ぐにでも王子を殺してエラの元に行くのに、、、


そんな実力の足りない自分が恨めしい。


もういっそこのまま舌を噛み切って自害でもしてしまおうかしら。


いいえ、そんな事は絶対にしないわ。敵の前で自害だなんて、そんな恥知らずの真似なんて絶対にしない。


けれど、もう、どうしようもないのは事実よね。


エラの元にも行けない。ここから逃げる事も出来ない。もう終わりよ。


「もしかして、あの時の魔法使いさん?」


エラの声、、、?


「その方の拘束を解いてください!その方は私の恩人です」


「王子妃様!しかし、、、」


エラ?本当にエラなの?


今、私のことを恩人と言ったのも幻聴では無いの?


私のこの瞳に映る貴方は、やっぱり私の魔法をかけた時の様に美しい。


嗚呼、エラ。私が貴方を救け出そうと思っていたのに、貴方に私が救けられてしまうだなんて。


やっぱり貴方は心優しいままなのね。


「魔法使いさん、どうしてここに?」


嗚呼、愛しのエラ。その透き通る美しい声が聞けるなんて、私はなんて恵まれているのかしら。


「魔法使いさん?」


ごめんなさいエラ、貴方の質問を無視するだなんて私はなんて愚かなのかしら。


貴方を救けに来たのよ、エラ。


「私を、救けに?一体なぜ?」


嗚呼なんて可哀想なエラ。すぐ近くに敵がいるのにも関わらず何も知らずにいるだなんて。


大丈夫、何も心配しなくていいわ。直ぐに私が敵を倒してあげる(王子を殺してあげる)


エラの心を弄んで、私からエラを奪って、エラの事なんて何も知らないくせに!


盛大な魔法で殺してあげるわ!まるで花火が打ち上げられた様に盛大にね!


「やめろ!」


五月蝿い!エラを奪ったクソ虫が!口を開くな!


死ね!









、、、最悪。


最悪よ、嗚呼もう本当に最悪!


どうして魔法が打てないのよ!


チャーミングを殺す為に魔力も節約して、盛大に殺してやろうと思ったのに!


こんな、無様な事なんて無いわ!折角エラを救けに来たのに!


嗚呼、きっと私は殺されるわね。


たとえ魔法使いがこの国で重宝される存在だからといって、王族に杖を向けて、しかも殺害を企てただなんて許されることでは無いわ。


、、、エラは幻滅したかしら。


長年思い続けてやっとその相手と結ばれることができたのに、その為の手助けをした者が想い人を殺して自分を救け出そうとしたなんて。







わかっていたわ。最初から。


エラ、貴方は昔からずっとチャーミングに恋をしていた。


いつか結ばれたいと思い続けて、ついにチャンスが舞い降りてきた。


それがこの前の舞踏会。


家に舞踏会の招待状が届き、義母や義姉たちは着飾って準備を始めた。


なのに一番この時を夢見ていた貴方は留守番を言い付けられてしまった。


けれどそんな時、私が現れた。


魔法を使って貴方を舞踏会に行かせてあげると言って。


貴方は私の魔法で本来の美しさを取り戻し、城へ向かった。


城に入り、しばらくするとチャーミングが現れ、貴方の手を取りダンスの相手を願った。


とびきりのチャンスに貴方はもちろん承諾し、一時の幸せな時間を過ごした。


けれど12時の鐘が鳴ってしまった。


私の魔法は12時の鐘と共に効果が消える。


その言葉を思い出した貴方は止めるチャーミングの声を聞かずに城を飛び出した。


貴方はなんとか家まで辿り着くことができたけれど、ガラスの靴の片方を城の階段に落としてしまっていた。


貴方にかけた魔法の中で、ガラスの靴だけは唯一特別なもの。


他のものは12時に魔法が解けてしまう不完全なものだったけれど、ガラスの靴は違う。


魔法はあらゆる可能性を持っているけれど、無から何かを生み出すことは出来ない。


けれど、この国1番の魔法使い()()はそれが可能だった。


私の作ったガラスの靴は、私が無から生み出したもの。


だからこの魔法が解けることは無い。


貴方に惚れたチャーミングは城に残された片方のガラスの靴を持って国中を周った。


この靴が履ける者こそが自身の運命の相手だと言ってね。


そしてその内、貴方の家にもチャーミングは訪れた。


義姉たちが無理にでもガラスの靴を履こうとしている中、試しにと言われて靴を履いた貴方はまさにピッタリだった。


王子は舞踏会で出会った時とは違うボロ着を纏った貴方に驚きながらも、自身の伴侶として貴方に結婚を申し入れた。


そして貴方の長年の願いは叶った。


恋焦がれた相手、チャーミング王子と結ばれる夢がね。


この物語に、私の感情は要らない。


私は貴方が舞踏会に行ける様、魔法さえかければ後は黙って幸せになった貴方を見送るだけ。


でも、嫌だった。


ずっと昔から2人のことは見てきた。


私の住んでいた森の近くに住み、遊び相手になってくれた心優しいエラ。


王命によって度々訪れた王宮で共に精進し合った聡明なチャーミング。


昔は二人が結ばれればきっと幸せだと思った。


賢いチャーミングを民衆に寄り添えるエラが支えれば、きっとこの国も安泰だと思った。


けれど、王宮に行けば行くほど国の暗い部分は見えてきて、エラを見守り続けていればいるほど何も知らずにただ安全に過ごしていて欲しいと思う様になった。


王命による登城が徐々に少なくなり、森にいる時間が増えた頃、街に出て買い物に行った時。


普段は使わない道を進んだせいで帰り道がわからなくなってしまったことがある。


そんな時、エラは優しく私に声をかけてくれた。


今まではずっと見守るだけで話しかけたことなんて一度も無かったから、エラは私のことを知らなかったみたいだけれど、その時はエラの存在がとても暖かった。


それからしばらく、エラとは何度か遊ぶことがあった。


その時のエラはまだ母親が存命で、よく母親と一緒に作ったというお菓子を持ってきてくれた。


でも、それから半年程経った頃、エラの母が亡くなって、父親が新しい母親と二人の姉を連れてきた。


それからはエラが外出できる機会が減っていき、ついにエラはもう私と遊べないかもしれないと言い始めた。


私は半年間、ほとんど毎日エラと過ごす様になって、エラの事がより大切になっていった。


どうすればエラを楽にさせられるか、どうすれば前の様に戻してあげられるか。


けれど、私が必死に考えるほど、エラが大切な存在になるほど、状況は悪化していった。


私の元に、もう一度王命が届いた。


私は前の様に頻繁に登城することなってしまった。


王命に逆らうことはできない。けれど今私がエラから離れればエラは壊れてしまう。


私は決心した。エラと遊ぶ最後の日、私はエラに魔法をかけた。


一部の記憶を消す魔法だった。


私という存在をエラの記憶から消し去れば、エラは余計なことを考えずに済む。


エラの記憶を消した後、私はエラを家まで送り、昔の様な日々に戻った。


毎日王城に通い、仕事をして、チャーミングと語り合い、家路に着く。


しかし、昔と変わったのは、チャーミングに対する感情だった。


エラはチャーミングを好いている。


どうしてこの男なんだ。


ただ王族というだけで、私の様に魔法だって使えないくせに。


そんなことを考えているうちに、月日は流れ、王命は再度解かれ、今に至る。






嗚呼、ごめんなさい。エラ。


全部知っていたのに、全部見てきたのに、貴方を巻き込んで、友人を殺そうとして。


私の醜い感情で二人の幸せを邪魔して、本当にごめんなさい。


極刑でもなんでも受け入れるわ。これが私の業だもの。


「なら、私もその業を背負うわ」


、、え?何を言っているの?エラ?


「魔法使いさん、私思い出したわ。昔よく一緒に遊んだお友達、その子も貴方と同じ魔法を使っていたわ。」


「お洋服を綺麗なドレスに変える魔法、どこかで見覚えがあったのにすっかり忘れていたわ。」


「貴方は私のことを思って私の記憶を消してくれた、私を思って王城(ここ)まで来てくれた。」


「貴方は私の事をこんなに思ってくれているのに、私は気づくことができなかった。」


「だからこれは私の責任でもあるのよ、魔法使いさん今まで本当にごめんなさい。」


どうして、、エラがそんな顔をするの?


やめて、謝らないで頂戴。貴方は何も悪く無いのに。だって、これはただ私が!


「そうだね、なら僕も同じだ。」


「長年君と共に過ごしてきたのに今思えば、いつも不満や愚痴を溢していたのは僕の方ばかりで、君の不満は一度も聞いたことが無かった。」


「それを勝手に勘違いしてここまで君を追い詰めてしまったのは僕の責任だ。」


「申し訳ない。謝罪一つで君の心が晴れるとは思わないが、今まですまなかった。」


何で?どうして二人してそう頭を下げるの?


二人は何も悪く無いのに、私の嫉妬で巻き込んでしまっただけなのに。


私、そんなつもりじゃ、、、、


いいえ、きっとそんなつもりだったのね。


そうでなければこんな手段は選ばない。


「魔法使い殿」


、、国王陛下。私の処罰のことかしらねw。


「王城への不法侵入、王族への不敬、極め付けに王子の殺害未遂。貴女の今までの功績を持ってしても極刑は免れぬ行いである」


それが当たり前だもの。もはや反論の意思も湧かないわ。


「しかし、儂は貴女を極刑にするには惜しいと思う。貴女ほどの魔法の腕を持つ魔法使いはこの国のどこにも居らぬからな。」


「シンデレラ嬢もチャーミングも貴女の罪を許し、共に背負うことを願っておる。しかし、王族に危害を加えようとした者に何の咎めも無しとするのは王として臣下に顔向けできん。」


「故に、貴女の極刑を取り下げ、その処罰を魔女の森への流刑とする!」


「無論、流刑といえど魔女の森は貴女の庭ゆえ、監視の目が付く他には多少行動の自由が失われる程度だがな。」







、、、この国の人たちは本当に考えが甘い。


もしも私が何の反省もせずに森を出てもう一度襲い掛かろうとしていたら一体どうするつもりなのかしら。


魔力封じの腕輪も渡さずに森に帰すだなんて、呆れて声も出ないわw。


ま、今まで通り仕事を続けろという意味なのかもしれないけどね。


今日は二人の物語が終章を迎える日。


教会の鐘が煩いくらいに国中に響き渡る。


今頃王城は臣下や民衆の祝福に囲まれている頃かしら?


嫉妬に狂った私はチャーミングを殺し、エラを私の元に永遠に縛り付けて置こうとした。


我ながら馬鹿みたいな話ね。


なんだかもう、どうでも良いわ。


二人が結ばれて幸せになりたいなら好きにすればいいわ。


私は応援なんてしないんだから!


応援なんてしない。二人を支えることも影から見守ることももうしない!


王家の監視を掻い潜ってまた魔力を貯めて今度こそ盛大な魔法を打ってやるのよ!


だから、、、


エラ、チャーミング、よく覚えておいて。


「私は知っているのよ」


「チャーミングが如何に誠実で、優しくて、聡明な人であるか」


「エラが如何に心優しく、魅力的で、美しい人であるか」


「だから私がそんな貴方達に魔法をかけてあげる」


『Bibbidi - Bobbidi - Boo』

長すぎる短編(?)に最後までお付き合い頂きありがとうございます〜!

最後の魔法でエラとチャーミングのウェディングドレスとスーツのデザインに変化があったとか無かったとか?

読者の皆様も幸せの魔法のお裾分けが届きます様に♪

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