表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/14

小早川君ファンクラブ

————断髪式後、唯は貰った慰謝料で空手部関係者や小早川君ファンクラブやサッカー部関係者に差し入れしたりお菓子を配って小夜や夏輝とお礼と挨拶回りして懐柔し、その甲斐あって噂はわりと早く収まった。


「私は最初からちょっと…って思ったけどもっとはっきり言えなくてごめんなさい」

「私もおかしいと思ったけど言えなかった。ごめんね」


唯の施設を尋ねた音々とアメリは悲しそうに項垂れた。


「あ、あやまらないで!ちゃんと忠告してくれたし、助けてくれて本当にありがとう!」


唯の表情はもう、以前の元気で屈託無いものに戻っていた。


「そう言えば青田君と田中君はどうなったの?良かったらバイト先紹介しようか?」


アメリの質問に唯はニコッと笑った。


「心配してくれてたんだね!二人とも小早川先輩ファンクラブ初代会長の田中先輩が面倒見てくれてるよ」


田中先輩の家は超お金持ちで、彼らが住み込みで働く代わりに学費等援助を始めたという。


「蒼君には格闘と着ぐるみのセンスに関心して、田中君にはヒモのセンスを感じて心配したんだって」

「ヒモのセンスって何」

「家事が上手くて母性本能をくすぐるらしいよ」

「あの子ただ泣いてただけじゃん…」


呆れる音々に唯は苦笑いした。


「でもずっと家事やってたらしいし、私が目眩だとうそついたら心配してくれたし速く帰るよう忠告してくれて悪い子じゃないよ。蒼君もね」

「話変わるけど、あのさあ、私さ、イケメンの大学生の遠い親戚いるんだ。今フリーって聞いて、唯の話しをしたら面白そうだから会ってみたいって。変わってるけど頭が良くて優しい人だよ。失礼だったらごめん…」


ちょっと差し出がましいかな、と目をキョロキョロさせる音々に、唯は優しく遠い目をした。


「私には失礼じゃないよ。ありがとう。でも、もうイケメンは当分いいかな…もう…気持ちだけで充分だよ。紹介は遠慮するよ…」


「まあ今はゆっくりしよ。小早川ファンクラブはどうなったのかな」


アメリの問いに唯は気遣わしげで悲しい顔をした。


「結構皆さん落ち込んでたみたい…今回お世話になったしお礼に行ったんだけど元気がなさそうで、でも真田さん元気出してくださいって励ましてくれたよ。で、【心理学研究会】になるんだって。小早川先輩みたいな人に騙されないように」


唯はその時見た光景を話した。


———それは木枯らしが吹く中庭

であった。


『ギャァァァ!』

『スゲー美女の!』

『生首!』


小早川ファンクラブに挨拶に行っていた唯は、ファンクラブの皆に手を引かれて中庭に行き。

目をひん剥いた。周りの人集りを汐里と紫達が交通整理し、唯と佳凜は穴に近付いて手を伸ばした。


『田中先輩何してんですか!』

『早く手を掴んでください!』

『皆様大変申し訳無いです!私が小早川如きのファンクラブを作ったせいで後輩達に悲しい思いをさせ、真田さんにも失礼な態度をしてしまいました!どう償って良いかわからないのです!踏みつけて頂いて構いません!』


楓は中庭の端に深い穴を掘り、首だけ出して泣いていた。

黒黒と輝くブラックダイヤの様な瞳に涙が溢れ。普段は赤い唇は少し白っぽかった。


『私は小早川ファンクラブのおかげで、親友もかわいい後輩達も出来て嬉しいです。ずっと引っ込み思案だった私が、人と話すのが嫌いじゃなくなったのも先輩や汐里や紫や礼儀正しく素直な優しい後輩達のおかげです!』


透き通った灰色の目に涙を溜める佳凜に、交通整理をしている汐里と紫も頷いた。


『私も入って良かったと思ってます!後でみんなでご飯食べましょう!』

『みんなも先輩も大好きです!フリスビー教えてくれてありがとうございました!』


後輩達も泣きながら叫んだ。

『先輩Forever!春翔氏死すとも!ファンクラブは死せず!』

『待って先輩生きてる!』


その後、無事救出された楓とファンクラブの皆は中庭で仲良くご飯を食べた。


———唯の回想を聞いた音々は呆れて肩をすくめた。


「最後までとんでもない団体…あっまだ名前変えて続いてるのか」

「ある意味元気になってよかったね」


苦笑いするアメリに頷くと、唯はいつもの、屈託ない笑顔で笑った。






———それから9年後。


(音々ちゃん、大丈夫?)


教会の長椅子。小声で話しかけるアメリ。良かった良かったとハンカチで声を押し殺しながら号泣する音々は無言で頷いた。


(小夜さんも泣いてる…唯ちゃん大好きだからね。あ、佐久間澪さん来てるね、やっぱり綺麗。清楚で素敵)


唯が悪の集積所と呼んだ施設で一緒だった澪はすっかり人気女優になっていた。今日の彼女は割と地味目なナチュラルメイクや服装で来たのだが。やはり美しく華やかなオーラを放っていた。泣いていた音々も顔をあげて、まぶしい、テレビで見るより美人、とつぶやいた。他の唯側の参列者は唯のドレスを作った陽菜夫婦と一人娘、施設で一緒だった蓮達、高校の友人、空手部同学年と後輩、大学の友人達、心優と莉子、唯の勤務する法律事務所の人々、さらに。小早川ファンクラブ四天王であった。


(やっぱり先輩達も綺麗)

(確かに綺麗。威圧感あるけどね…うぉ!)


ドアが開き、光が指し、唯が里見先生と入って来た。音々はまた号泣した。


(よがったよがったゆいきれいだよがんばっだね)

(本当に唯ちゃん綺麗)


アメリは、唯の傍らの里見先生の表情を見て、心からほっとして思わずガッツポーズをした。ハロウィンの時の不安そうな表情とは違って、唯の幸せを確信したような安堵と嬉しさが込み上げて来るような表情だったからである。


(里見先生はカンが鋭いから今回は大丈夫そうだね)

(ほぼおんなじ顔だけど)


唯と里見先生の先には、小早川とそっくりでスリムになった笑顔の夏輝がいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ