天才音楽家
才能と美貌を兼ね備えた天才音楽家のショートショート小説
「えっ!ミス日本。」
「ミス日本になったんだって!」と妻が言う。
芸大(東京芸術大学)を卒業してから、ドイツ留学、そして首席卒業、今ではヨーロッパ公演をソロでこなすようになったニューヨーク在住の音楽家。
まさに順風満帆とはこのことか。羨ましいくらいの経歴、これからどこまで上りつめていくのだろう。
音楽家としての才能ばかりではなく、美貌まで手に入れた才女。
誰からも信頼され、彼女がそこにいるだけで周りに心地よい緊張と和やかなムードが広がる。
これも彼女の人並みはずれた才能とその美貌のなすところなのか。
そんな彼女もゴシップ好きの日本のメディアにとっては、いい飯の種。
最近では、若手のホープ超有名俳優とのゴシップ。
その若手俳優が旧財閥出身ときたら、まさに玉の輿。
何か、これはあまりにも上手すぎる話だけれど、世の中にはこんな人もいるもんだ。
こんなおいしい話メディアが放っておくわけはない。
そんな女性が、今、オレの前に三つ指ついて、丁寧に・・・。
「な、なんだ!!」
「お父さん、今まで、ありがとうございました。」
「だ、誰のことだ!!」
「お、お父さんとは!も、も、・・・もしかしてオレのこと。」
「お父さん、今まで大変お世話になりました。これからは、彼と二人で力を合わせてお父さんとお母さん
のような幸せな家庭を築いていきます。」
「本当にありがとう、お父さん、お母さん。」
「お母さんといつまでも元気でいて、私たちを支えてください。」
「・・・・」
涙で彼女の顔がかすんでいく・・・。
「はっ!」夢か。
隣には、大の字で寝ている”はるちゃん”。
よかったのか、わるかったのか、あんなに有名にならなくても良いよ。
自分のやりたいことを好きなようにやってみなさい。
平凡で良いよ。平凡っていうのが一番難しいけどね。
いつまでもお父さん、お母さんは、あなたの味方だからね。
と夜中に言いながら娘の顔を眺めている親バカが一人ここにいました。




