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夕凪と朝顔が咲くのを待つ日々  作者: 尾仲庵次
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がっこう

 あたしの通っている通信制の高校は、自宅から電車で数駅の場所に校舎がある。

 通信制と言っても、1ヶ月に数回は授業を受けなければいけないシステムになっており、入学の日から数えて数回、授業を受けに学校に行っている。


 夕凪(ゆうな)が小学校に入学し、あたしも同じように高校を入学しなおした。

 実家に戻って……あらためて卒業できなかった高校をきちんと卒業しようと思ったのだ。

 だから彼女とあたしは同じ『1年生』


『お母さんも1年生なんだよ。がんばろうね』

『うん!!』


 学校を入学する前にそんな話を夕凪(ゆうな)にした。

 彼女は『学校』という新しい場所に行けるのが楽しみで仕方ないようだ。

 そしてそこで何が起きるのか……未知の世界に希望を見出して期待に胸を膨らませている。


 夕凪(ゆうな)にはどんな学生生活が待ち受けているのだろうか。

 そしてあたしも卒業できなかった高校でどんなことを学ぶことができるのだろうか。


 仕事をしながら勉強をすることの楽しみは介護福祉士の資格を取得した時に存分に感じることができたので、また高校に行けるというのは本当に楽しみだ。もしかしたら学生だった頃よりも今の方が勉強が好きなのかもしれない。


『あの……おはよう……ございます……』


 通信制の高校の登校日。

 朝、校舎に向かって歩いているあたしに声をかけてきたのは島田天(しまだあま)ちゃん。

 背の低い彼女はいつも猫背でそれが余計に彼女を小さく見せている。

 自信なさげな表情で、いつもなにかにおびえている。

 彼女は中学の時、不登校だったらしい。

 詳しい事情は聴いていない。

 たまたま彼女の席の隣だったあたしが、消しゴムを忘れて困っていた彼女に貸してあげたのがきっかけで仲良くなった。

 いや……仲良くなったというより、あたしが図々しくその後もいろいろ話しかけて、スマホの番号まで教えてもらったのだ。


 昔なら知らない子にずけずけと声をかけたりなんかしなかった。

 たぶん……夕凪(ゆうな)を産んで仕事をしなかったら、今とは違う引っ込み思案の別のあたしが、別のところで何かをしていたのかもしれないと思うと、人生とはなんだかおもしろいものだと思う。


 いろんな話を聞いてしまったのは、天ちゃんにとっては少し迷惑だったかもしれないな……とちょっと反省している。

 でも……

 なんとなくだけど、彼女はあたしから話を聞かれるのは嫌ではないような気がする。


 その証拠に、今日は向こうから声をかけてくれた。


 それに、あたしと話しているうちに彼女はいろんなことを話してくれた。

 中学はなんだか馴染めなくて不登校になってしまったこと。

 同年代の友達が興味を持っているような話には興味がなく、いつも本ばかり読んでいて気味悪がられていたこと。


『あたし……なんか不安になると独り言、言っちゃうんですよ……』

 自虐的に言う彼女を見てあたしは以前に住んでいたアパートの隣人を思い出した。

『大丈夫よ。あたしの友達なんか考え事をすると壁を叩き出すんだよ。そんなの人それぞれ、個性だから』

 あたしがそう言うと『え……』と呟いて、目を見開いて意外な顔をした(あま)ちゃん。

 なにか言いたげだったけど何も言わなかった。


 だからあたしも深くは聞かない。

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