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夕凪と朝顔が咲くのを待つ日々  作者: 尾仲庵次
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婚活

『誰かいい人はいないの?』

 実家に帰ってきてからというもの母親からは何かのタイミングごとにそんな話をされる。

 何かのタイミングごとに話をされてもいないものは『いない』としか答えようがないし、現実的にあたしが結婚するのはちょっと無理なのかなと思う。

 そもそもあたしはそんな出会いとは無縁な生活をしている。

 仕事を終えれば自宅に帰って家事、そして勉強。やることがたくさんあって1日24時間でも足りないぐらいなのだ。

 これ以上、何かする余裕は、今のあたしにはない。


 それに……

 出会いがあったとしても夕凪(ゆうな)のこともある。


『いや、母さんさ。なんでそんなにあたしに結婚してほしいの?』

 思い余ってあたしは聞いてみた。

『そりゃだって……あたしたちだっていつまでも元気でいられるわけではないから……』

『なるほどね。そりゃそうかもね』

 母親の言うことは一理ある。

 確かに、親はいつまでも元気なわけではない。あまり考えたくないがそれでも毎日歳をとっていくのだ。自分たちがいなくなった後、シングルマザーの娘と孫娘が二人でずっと生きていけるのだろうかと母親は心配なのだろう。


 母子家庭がどれだけ大変なのかは、夕凪が6歳になるまでアパートで一人暮らししていたあたしは身に染みてよく分かっているつもりだ。あの時は両親に助けられて……アパートの大家さんや職場の上司にも……そして隣に住んでいる二階堂さんにもお世話になった。


 あたしたち親子は心ある人たちの支えの中でなんとか生活していたのである。


 だけどいつかはある程度、自立しなければならない。

 今度、実家を出るときはいつになるかは分からない。

 その時に両親があたしたちを援助できるとは限らないのだ。


 母親があたしに結婚してほしいと思う気持ちは少しだけど理解はできる。

 理解はできるけど、じゃあ結婚したいかと言われるとそれは微妙ではある。


『それにね……』

 母親は取り込んだ洗濯物をたたみながら続けて話す。


 夕方の時間。

 夕凪はまだ遊びに行って帰ってこない。

 時計は16時半を指している。

 

『あんただっていつまでも若いわけじゃないしね』

『はは……確かにそうだけど……』

『いくつになったんだっけ?』

『23歳』

『あと7年もしたら30じゃない』

『いや、あと7年もあるじゃん』

『そんなこと言ってるとあっという間に30歳よ』


 これに関しても母親の言いたいことは分かる。

 でもね。

 結婚って相手のある問題なんだよね。

 いくら若くても子連れのシングルマザーを嫁にもらいたいという男がいるのだろうか。

 それだけではない。

 夕凪(ゆうな)にしたって、いきなり他人が父親になるのだ。逆に相手の男にとってはいきなり他人の娘が自分の娘になる。

 やっぱり少しハードルが高い。


 無理して結婚するぐらいなら親子二人でなんとか生きていった方が良いような気がする……。

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