家事
目覚ましのアラームをつけなくても自然と朝は早い時間に目が覚める。
起きたらすぐに着替えて、洗濯機を回す。
その後、朝ごはんの準備。
時計はまだ6時前。
ラジオを聞く習慣は実家に帰ってきたあとも変わらない。
朝のラジオからは耳に心地いいDJがニュースの話題をテーマに何かを話している。
しばらくすると母親が起きてくる。
あたしは先日、実家に帰ってきた。
一人で育てるつもりで子供を産んで……だけども一人では生きていけないことに気づいて……
無我夢中で娘の夕凪を育て、気が付けば彼女も今年の春から小学生。
『夕凪ちゃんも小学生になるし、家に帰ってきたらどうかしら?』
母は少し前からそんなことを話してくれていた。
父もそれには賛成だったようだった。
それでもあたしがすぐに実家に帰ってこなかったのは、夕凪が生まれてから6年間過ごしたアパートに思い出があり、感傷的になってなかなか決断できなかったからだった。
ただやはり夕凪が小学生になると保育園に行っている時よりも手がかかるようになる。
何かの行事で学校に行くことも多くなるだろうし、勉強だってわかる範囲で教えてあげたい。
多分、今のままの生活ではなくなる。
生活パターンも変わっていくだろう。
だけど……実家だと両親もいろいろ助けてくれる。
あたしたちは人生における次のステージに行こうとしているのかもしれない……。
そんなことを思いながらぼんやりと家事をしたのを鮮明に覚えている。
そんなわけで……
いろいろ考えたのだけど、あたしは実家に帰ることにした。
味噌汁を作って、簡単なサラダを作っておく。
実家に帰っても今までやってきた家事はやることにしている。
そうしないと生活リズムが狂ってしまいそうだから。
朝食に関しては起きてくる母に後は任せて、あたしは洗濯機から洗濯物を取り出して庭に出た。
朝日が眩しい。
あたしは目を細めて空を見た。
青い空には雲一つない。
まさに夏の空だ。
梅雨も明けて、これからは本格的に暑くなる。
洗濯物を回したら、朝食を作る……
朝食を作ったら、洗濯物を干す……
気が付けば言われなくても身体が動くようになっている。
夕凪を産む前には考えられなかった。
理屈では母親が家事をやってくれていることは分かっていたけど、実際には分かっていなかった。
こうやって洗濯物を洗濯機から出して干しているとそんなことがふと頭の中を駆け巡る。
よし!
やるぞ!!
朝の陽ざしを浴びると不思議と気持ちが前向きになる。
ああ。
今日もいい天気だ。