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「――よーし、できた」


 俺の声ではない。女の子の声だ。


「動け。”ゴーレム”」


 ゴーレムとやらは動かない。女の子は不思議そうな顔をする。


「あれ、おかしいな。魔法陣は間違ってないし……。こら、動け。ご主人様の命令だぞ。……こんのっ!」


 一発殴られる。ガゴンという固い音が、部屋中に響く。女の子は痛くて悶絶する。


 ――だが、俺はこれで目が覚めた。目の前にいたのは、銀髪美少女だ。

 ここはこの美少女の部屋だろうか。汚い。本も出っぱなしだし、服も脱ぎっぱなし。ブラジャーが目に入る。ベッドも綺麗に整えず、めちゃくちゃな状況である。女の子の闇を見てしまった気分だ。


「おい、初対面で殴るなよ」


 美少女は驚いた顔をして、俺と目が合う。


「……えっ? 喋るの?」

「喋るよ。人間なんだもん」


 さらに驚いた顔をする美少女。俺もなにがなんだか分からない。


「えっ?」

「えっ?」


 ついさっきまで教室で授業を受けていた。――ああ、そうか。魔法陣が現れて倒れたんだっけか。あの状況はなんだったのだろうか。俺が知るに、クラス転移、というものだ。異世界漫画のド定番のやつ。現実に起きるものだったとは。

 ――じゃあ、みんなは? て思っただろう。俺も思う。今はまだ分からないな。ここが異世界という証拠もないし、夢の中かもしれない。それにしてもリアルである。


「お、お前は誰なんだ?」


 疑ったような声で、美少女が言う。


「俺は鈴木理玖だけど……。お前こそ誰なんだ? いきなり殴りやがって。痛くなかったけど」

「スズキ……リク……? 本当に人間なのか?」

「だから、人間だって」

「何を言う。お前は私が作ったゴーレムだ。ゴーレムが自我を持つなんて聞いたことがないぞ」


 俺がゴーレム? 何を言ってんだこの美少女は。


「だから人間だって言ってんじゃん。ほら、手も足もある。顔だって」

「そりゃそうだ。人型に作ったのだからな」


 美少女が拳でノックするように、俺の体を叩く。叩くたびにコンコンという音が鳴る。


「しかも鉄で作ったんだ。相当硬いぞこりゃ」

「えぇ……マジで?」


 俺も自分の体を触る。ガチじゃん。全身鉄で出来てんのか。俺の体重どうなってんだろ。


「俺……ゴーレムになっちゃったのか」

「なっちゃった? 本当に人間だったのか?」


 どうせ夢だろうが本当に異世界だろうがなんだっていいや。


「そうだよ。俺は人間だったし、他の世界から来たみたいだ」

「他の世界? 何を言っているんだ?」


 そりゃそうなるだろうな。


「とりあえず、この部屋から出ないか? 後から話す」

「なぜだ」

「部屋が汚いんだよ。落ち着かん」

「ご主人様に何を言うんだ! 我慢しろ!」

「そんな契約を交わした覚えはない。ほら行くぞ」


 美少女の手を取ると、彼女の顔は赤く染まる。――可愛い。腕を払われると、彼女は守るように腕を引っ込めた。


「さ、触るな!」


 美少女は下を向く。ボソッと何かを言う。


「……恥ずかしい」


 ん? なんつった? 俺は何も聞えなかった。彼女はまだ下を向いている。


 俺は首を傾げ、もう一度手を取ろうとする。


「や、やめろ! 分かったから! 外に出るから、ついてこい!」


 そう言うと、美少女はバンッと扉を開け、部屋を出る。俺もついていこうと、部屋を出ようとする。

 ふと、鏡が目に入った。俺は自分の顔をマジマジと見る。――はっはーん。こりゃイケメンだな。黒髪に、イギリス人のような綺麗な青い目。身長も高い。高スペックだ。美少女め、自分の好きなタイプをモデルにして作ったな。そりゃ照れるわけだ。可愛いやつめ。


「お、おい! 何をしている! 早くしろ!」

「はいはい。今行きますよー」


 部屋を出る。美少女についていき、外へ出る。外はヨーロッパのような外観の街が広がっていた。いわゆる、ナーロッパってやつだ。

 そこにはいろいろな種族、と言えばいいだろうか、犬耳や猫耳、トカゲの顔をした人がいた。もちろん人間もだ。――本物⁉ 本物なのか? ケモミミだ! うっひょおおおおっ!


 俺は興奮していると、美少女に突っつかれる。


「おい、興奮するな」

「仕方ないだろ。初めて見る光景なんだからさ。異世界って本当に存在してたんだなー。――って、お前の屋敷デカくね? そういえば、家の中は誰もいなかったし、まさか、一人で住んでんのか?」

「そうだが」

「マジか。家賃やばそうだな」

「いや、私はSランク冒険者だから、この屋敷は無償だぞ」


 え、マジで? Sランク冒険者? こんな美少女が? 俺は驚きを隠せない。


 美少女はフッと鼻で笑うと、俺を見下すような顔で見てくる。俺よりも身長が低いんですけど。可愛い。


「そうだな。下僕。近くのカフェにでも行くか」

「下僕言うな。俺にはちゃんと名前がある。それにお前の名前をまだ聞いてない」

「下僕は下僕だ。私の名はリディア=ベルンハルト、お前のご主人様だ――」

 応援よろしくお願いしまああああああああああす。

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